ひとり社長のお金の年間カレンダー|資金が薄くなる月は、毎年同じ
納付書が届く。封を開ける。そこで初めて、金額を知る。
フリーランス・ひとり社長のお金と経営を整える仕事を、これまで1,000件以上やってきました。その中でいちばん多く立ち会ってきたのが、この場面です。
来ることは知っていた。知らなかったのは、金額のほう。怖いのは、知識がないからではありません。書いていないからです。
この記事を読むと、1年のお金の出入りが1枚になります。来月と再来月に何がいくら出ていくのか、月初に自分の口で言える状態です。
1年で現金がいちばん少なくなる月を、いま言えますか
即答できなかった方へ、よくある3つを挙げます。
毎年、同じ月に、同じ驚き方をしている。
通帳は毎日見ている。でも見ているのは残高=過ぎたことだけで、予定=これから出ていくものは持っていない。
積み立てようとは思った。ただ月にいくら積めばいいのか分からなくて、「残ったら貯める」のまま一年が終わった。
3つとも、僕が相談の場でそのまま聞いてきた言葉です。いまも毎月、クライアントの資金繰りを一緒に見ています。AIも毎日使っています。
その中で気づいたことがあります。資金繰りの相談の多くは「儲かっていない」ではありません。「出ていく順番を持っていない」です。売上の話ではないんです。
変わるのは、金額ではなく順番のほう
Before:◯月に◯円出ていくことを、届いた納付書で知る。そこから残高を見て、入金予定を数えて、間に合うかを確かめる。
After:◯月と◯月が谷だと年の初めに分かっている。だから毎月◯円を先に分けてある。届いた納付書は、金額の確認をするだけの紙になる。
谷は消せません。売上が伸びても、出ていくものが消えるわけではないので。でも、来ると分かっている谷は、事故になりません。
以前、相談に来られたひとり社長の方がいました。夏に納付書が届いて、封を開けたところで手が止まった。金額そのものは、事業の規模から見ておかしな額ではありません。ただその月は、保険の年払いと外注のまとめ払いが同じ月に重なっていて、口座の残りでは足りなかった。
その方が最初に言ったのは「払えない」ではありませんでした。
「なんで今月なんですか」
お金がなかったわけではないんです。出ていく順番を、持っていなかっただけで。
僕自身も、1年の出入りは1枚にしています。年の初めに去年の通帳から書き出して、机の前に貼る。谷の月に向けて、毎月いくらを別の口座に分けるかを、そこで決めてしまう。
持つ前は、支払いの通知が届くたびに残高を見に行っていました。持ったあとは、通知が来ても見るのはシートの1行だけです。見直すのは年に1回。あとは通知が届いた日に、その1行だけ直します。
変わったのは金額ではありません。確認にかかる時間と、そのときの気持ちのほうでした。
なぜ、毎年同じ月に薄くなるのか
理由は2つです。
ひとつ目。事業の1年と、お金が実際に出ていく1年は、ずれています。忙しかった年の分は、その年に出ていかない。落ち着いた次の年に出ていきます。だから、いちばん現金が減るのは「稼いだ年」ではなく、その次の年になりやすい。景気がよかった実感と、通帳が薄い月は、同じ年に来ません。
ふたつ目。年に1回、あるいは数回しか出ない支出が、特定の月に固まります。更新料、保険、車検、機材の買い替え、外注のまとめ払い、年会費。ひとつずつは大きくなくても、同じ月に3つ重なると、その月だけ景色が変わります。
どちらも「時間差」の話です。時間差は、今月がんばっても縮みません。先に1枚に書き出しておくしかない。
なお、この記事では制度の中身(何がいつ、どういう決まりで、いくらになるのか)は扱いません。ここで扱うのは、あなた自身の金額と時期だけです。確かめ先は最後にまとめます。
年間カレンダーの全体像
■ お金の年間カレンダーの6項目
①出ていく月 ②何が ③いくら ④毎年/今年だけ ⑤金額が分かる月 ⑥毎月いくら積む
この6つを把握することが大事です。
では各欄の内容ですが。
①出ていく月:谷がどこかが目で分かる。並べて初めて「この月とこの月が重い」が見える。
②何が(名前):正体が付く。名前のない不安が、名前のある支払いに変わる。
③いくら:去年の実額でかまいません。当てにいかない。桁が合っていれば十分です。
④毎年来るか、今年だけか:来年も同じ形かどうかが分かる。ここが空だと、毎年ゼロから作り直すことになります。
⑤金額が"分かる"のはいつか:通知や請求が届く月。出ていく月より前に来ます。この欄がこのシートの心臓です(理由は有料側で書きます)。
⑥そのために毎月いくら積むか:①〜⑤を踏まえて、いつまでに資金を確保するか?を決めておきます。
この6項目で支払いの”不安”はなくなります。
いちばん多い誤解
「税金や制度の知識がないから、お金が怖い」
これが、いちばん多い誤解です。
違います。制度を覚えても、あなたの金額は出てきません。制度は全員に共通するものなので、そこから自分の1年は出てこない。出てくるのは、去年のあなたの通帳からだけです。
去年の通帳が、いちばん正確な材料です。覚えなくていいんです。先ほどの6項目を整理して把握しておけばそれでOK。
そして、これは知識のある人だけができる作業ではありません。やることは、出ていったものを写すだけなので、数字が苦手でも作れます。
今日から効くコツ
今日やることは1つです。
通帳を見て、"毎月は出ていない出金"に丸をつけてください。
家賃、通信費、毎月のサブスク。同じ日に同じ額で出ているものは、全部飛ばします。それは谷を作らないので。
丸がつくのは、一時的にだけ出ていったものです。それが谷の正体です。
やってみると、1年で20から30明細ほどになると思います。1年の不安の中身が、それだけの数だったと分かる。この時点で少し軽くなるはずです。
そして、その丸の数だけが、この1枚の材料になります。
AIに、自分の谷を出させるプロンプト
出金の内容を自分で把握するのも良いですが、せっかくなのでAIを活用しましょう。
去年の出金一覧をコピーして、この文と一緒に貼ってください。
【ここからプロンプト】
これから、去年1年分の出金明細を貼ります。次の作業をしてください。
【やること】
1)毎月ほぼ同じ額で出ている支出(家賃・通信費・サブスク・リース・毎月の返済など)を除外する
2)残ったもの=年に1回、または数回だけ出ている支出を、月別に並べる
3)各行に「支出の名前」「月」「金額」を書く
4)最後に、金額の合計が大きい月を上位2つ挙げる
【守ってほしいこと】
・金額は絶対に書き換えない。四捨五入も丸めもしない
・何の支出か判断できないものは「不明」と書いて、そのまま残す
・私が貼っていない支出を、推測で足さない
・節約の提案や感想は要らない
【出力の形式】
月 | 支出の名前 | 金額
の表で、1月から12月の順に。最後に「合計が大きい月:◯月/◯月」と書いてください。
【ここまで】
貼る前と、返ってきた後に、それぞれ確認することがあります。
貼る前:口座番号、取引先の会社名、個人名は消してから貼ってください。日付と金額と、支出のざっくりした種類(保険、車検、更新料)だけで、この作業は成立します。
返ってきた後:合計だけは、自分の電卓で足し直してください。AIは並べ替えと分類が得意で、計算はときどき間違えます。作業は渡していい。これは連載を通してずっとお伝えしていることですが、判断と検算は自分で責任を取ることは忘れないでください。
つまずき所5つと対策
①去年の資料が手元にない
通帳とカード明細だけで足ります。ネットバンクなら過去分がだいたい取れますし、取れなくても記帳しに行けば残っています。会計ソフトの数字が必要だと思って止まる方が多いのですが、要りません。
②税理士に任せていて、自分では金額が分からない
そのまま送れる質問文を書きます。
「今年、私に来る支払いを、月と金額の見込みで教えてください。正確な金額でなくて構いません。時期だけでも分かると助かります。」
金額の内訳や計算根拠を聞くと、返事が重くなって時間がかかります。聞くのは「月と、だいたいの金額」の2つだけにすると、たいてい早く返ってきます。
③金額が去年と変わるから、書けない
去年の実額をそのまま書いてください。このシートは、当てるためのものではありません。桁と時期が分かればいい。10万円か100万円かが分かっていれば、動き方は決まります。1円まで合わせようとした瞬間、この作業は終わらなくなります。
④積立額を出したら、とても払えない金額になった
全部を積もうとしています。積むのは谷の月の分だけです。それでも払えないなら、積む対象を谷のうち大きい1件だけに絞ってください。1件でも先に分かれていれば、その月の景色は変わります。ゼロか全部か、にしないことです。
⑤作ったけれど、見なくなった
これがいちばん多い。対処は2つ。
貼る場所を先に決めること。引き出しの中ではなく、目に入るところ。
そして、更新は年1回でいい。あとは、通知や請求が届いた日に、その1行だけ直す。全体を作り直そうとすると、二度とやらなくなります。届いた紙を見て、シートの1行を書き換えて終わり。それだけで、この1枚は1年もちます。
書いている人
今井英貴|経営の家庭教師
フリーランス・ひとり社長のお金と経営を、これまで1,000件以上整えてきました。いまは自分の会社の経営管理——経理・資金繰り・議事録・数字の判断——をAIと一緒に回しながら、その実務をこのノートに書いています。
AIに"作業"を任せて、社長は"判断"と"自分らしさ"に集中する。それがこの連載の芯です。
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