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キャンディ暗闇魔女

夕陽が早帰りするようになり、早出勤するようになった夜。
母さんと父さんは仕事で帰りが遅くなると連絡が来て、今家には俺一人だ。
少し前までは暑かったのに、外だけでなく家の中も寒い。
出したばかりのコタツに逃げ込み、暖まっていると、チャイムが鳴った。
「せっかく暖まろうと思ってたのに……」
愚痴をこぼしながら玄関へ向かい、ドアを開ける。
夜の暗闇の中に居たのは……大きい帽子を被った小さな魔女。
「ト、トリック・オア・トリート!おかしをくれなきゃ……ま、まほうで……い、いたずらしちゃうぞ!」
小さな魔女は、帽子と持っていたカボチャのバケツをぷるぷると震わせながら言った。
今日は10月31日、ハロウィンか。
縁のないイベントだから、すっかり忘れていた。
帽子で小さな魔女の顔は見えないが、震えているところを見ると、緊張しているのだろう。
「わぁ!魔女だ!いたずらされたくないからお菓子探してくる!」
我ながら三流の棒演技。
俺の棒演技を聞いて、小さな魔女は顔を上げた。
期待に満ちた目で、俺を見ている。
「ちょっと待ってて」
改めて小さな魔女に言ってから、台所へ向かう。
お菓子なんてあったかな……。
我が家では、普段あまりお菓子を食べないから置いてなかったような気がする。
「おっ?」
上の戸棚を開けると、色とりどりの宝石のようなキャンディ包みが沢山入った大きな袋を発見。
そういえば……スーパーへ行った時、飴が欲しいなぁと思って、沢山入ってるお得なやつを買ったんだっけ。
結局、一つも舐めてないけど……。
でも、ちょうどいい。
袋ごと取り、小さな魔女の元へ戻った。
「お待たせ。飴しかなかったけどいいかな?」
ぎっしり飴が入った袋をカボチャのバケツに入れるが、入りきれず少しはみ出てしまう。
「わあ……こんなにいいの?」
小さな魔女は、カボチャのバケツに入った宝石を見て、嬉しそうに言った。
「買ったまま置きっぱなしだったし、食べる予定ないから全部持っていっていいよ」
「ありがとう!おじさん!」
「お、おじさん……」
これでもまだ二十代なんだが……まぁ、この子から見たら俺はおじさんか。
でも、少しショック……シクシク。
「本当は弟達といっしょにおかしをもらいに回る予定だったけど、かぜをひいたから私一人で回ることになって……弟達の分もほしかったから、たくさんもらえてうれしい!」
小さな魔女は、パァっと花が咲いたような笑顔になる。
つられて俺も、口角が上がってしまう。
「そっか、それはよかった。弟達にも沢山分けてあげてね」
「うんっ!ありがとうおじさん!」
小さな魔女は俺にお礼を言うと、くるっと回れ右をし、大きい帽子を揺らしながら去っていく。
おじさんと呼ばれるのは気になるが、まっいっか。
喜んでくれたし、笑顔が見れたから。
さっきまで寒かったけど、小さな魔女のおかげで、心がぽかぽかになった。


はらとけいさんの企画に参加させていただきました。
以下の記事に詳細あります。


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