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シリコンバレーで10月開催のRobo Business、ロボット向け「フィジカルAI」でもプラットフォーマー狙うNVIDIA

AI (人工知能) の急速な発展に伴って、ロボットの世界が大きく変わろうとしている。現実世界の物理法則をロボットが学習しながらセンサーを通して周囲の環境を認識し、自律的に動作する「フィジカルAI」や「エンボディドAI」と呼ばれるカテゴリーの技術開発が進んできているためだ。12月初めに東京ビッグサイトで開催された「2025国際ロボット展 (iRex2025)」でも、ファナックや安川電機といった日本の産業用ロボット大手が米NVIDIAと協業してフィジカルAIの展示やデモを行い、来場者の人気を集めていた。それに先立って10月に米シリコンバレーで開かれたロボットカンファレンスの「Robo Business」(米WTWH Media主催)。ここでも、フィジカルAI関連の展示や講演が目立ち、その分野でのプラットフォーマーを目指すNVIDIAの存在がクローズアップされていた。

「ロボットの黄金時代到来、数兆ドル産業に」

「今年 (2025年) の初めにロボット工学は黄金時代に突入した。生成AI、AIエージェントの次の大きな波はフィジカルAIであり、数兆ドル規模の新しい産業が生み出される。これからの10年は非常にエキサイティングな時代になるだろう」

10月15-16日にサンタクララ・コンベンションセンターで開催されたRobo Businessの基調講演で、NVIDIAのロボティクス・エッジAI担当副社長、Deepu Talla (ディープゥ・タッラ) 氏はこうした未来予測を披露した。

基調講演でパートナーのヒューマノイド企業について説明するNVIDIA副社長のTalla氏

サンタクララに本社を置くNVIDIAは、AIの学習および推論処理に欠かせない高性能半導体チップで市場の約8割のシェアを占めると言われ、今後のAI時代には不可欠の存在。そんな同社がAI向けチップに続いてプラットフォーマーとして君臨すべく、新たなターゲットと見据えるのが、ロボットを中心とするフィジカルAIだ。AIのトレーニング、シミュレーション、実行用のコンピューター環境だけでなく、「NVIDIA Isaac (アイザック)」と名付けたロボット開発用の統合プラットフォームまで提供する。

「ただ、NVIDIAはロボット自体を製造しているわけではない」とTalla氏は言う。「我々が提供しているのはコア技術のみで、現在、世界中のあらゆるロボット企業と協力し、各社の目標達成を支援している」。その上で協業先の例として、ヒューマノイドでは、Agility Robotics (米国) やBoston Dynamics (米国)、Dexmate (米国)、Figure (米国)、Franka Robotics (ドイツ)、Mentee Robotics (イスラエル) の名前を挙げた。

世界のロボット企業と協業

さらに、移動ロボットではAmazon Robotics (米国)、Diligent Robotics (米国)、RGo Robotics (米国)、Serve Robotics (米国)、アーム型ロボットが、Franka Robotics (ドイツ)、KUKA (ドイツ)、Solomon AI (台湾)、Universal Robots (デンマーク)、さらにロボット制御システムや基盤モデルでは、Field AI (米国)、Robotics and AI Institute (RAI Institute、米国)、Skild AI (米国)、北京人形机器人創新中心 (X-Humanoid、中国) などと協力しているという。

Frankaの協働ロボットもNVIDIAの技術を利用。周囲の環境を認識し障害物を回避して動作する

うちRAIはBoston Dynamics創業者のMarc Raibert氏が2022年に立ち上げたロボットとAIに関する研究企業。「同社は強化学習の分野におけるパイオニア。汎用AIの問題を解決するには強化学習が必要になるが、当社のIsaac LabとIsaac Simを使えば、何千もの実験を並列で実行できる」(Talla氏) とNVIDIAのロボット開発環境の利点を強調した。

Talla氏に続いて登壇したのはAgility RoboticsのCTO (最高技術責任者)、Pras Velagapudi (プラス・ヴェラガプディ) 氏。ヒューマノイドの初の導入事例から得られる教訓が講演のテーマだ。同社は2024年、米物流大手GXOの倉庫向けに米国初の商用ヒューマノイドとして「Digit (ディジット)」を初導入している。

物流現場に実導入された「Digit」について話すAgilityのVelagapudi氏㊨とNVIDIAのFan氏㊥ら

それ以降の1年間をVelagapudi氏は「複数の顧客と複数のユースケースを持ったことが大きな前進」と振り返りつつ、産業環境での安全性を課題に挙げる。今の段階では、作業現場でヒューマノイドと人間とを分離する必要があるためで、Boston Dynamicsなどヒューマノイド開発に取り組む他の企業とも協力し、工業安全基準を拡充するISO (国際標準化機構) 規格の策定に取り組んでいることを明らかにした。 (ISO 25785:ヒューマノイド、二足歩行、四足歩行、車輪型など自律的に安定性を制御する産業用モバイルロボットのための新しい国際安全規格)

また、別のポイントとして、「ロボットの動作の堅牢性が長時間稼働を可能にする重要な要素であることが分かった」とも話す。そこで自動充電や長時間使えるマニピュレーターを導入したほか、表面のカバー部分などについて物理的な摩耗や損傷に耐える構造とした。外乱については、ロボットの強化学習や模倣学習の開発を効率化するNVIDIAのIsaac Labのシミュレーション環境で学習を重ね、さまざまな外乱があっても周囲の環境と相互作用でき、高いバランス性能を保つ仕組みづくりに取り組んでいるという。

Boston Dynamicsの四足歩行ロボットSpotをベースに、Field AIではNVIDIAの技術を使い、地図やGPSなしで物理環境に適応できる機能を追加した

2040年までにヒューマノイド型が主流に?

一方で、NVIDIAのディレクター兼卓越リサーチサイエンティストのJim Fan (ジム・ファン) 氏は、生成AIの大規模言語モデル (LLM) に比べ、ロボットのAI開発でのデータ収集の難しさを課題として挙げる。ちなみに、同氏はNVIDIAにおけるロボット技術の中心人物であり、AIによってヒューマノイドの頭脳開発を目指す「Project GR00T (グルート)」を主導する。

対応策として、現場から収集したり、テレオペレーション (遠隔操作) で模倣学習させたりしたリアルなデータを最高品質のデータとして活用するのに加え、合成データの利点も強調する。当面はAIの画像生成でも使われる拡散(ディフュージョン)モデルにより、元のデータから合成データを生成するやり方を想定しつつも、将来的に期待するのは「挑戦にはなるが、ロボットのシミュレーション自体を (一つのニューラルネットワークでカバーし直接出力を行う) エンドツーエンド(E2E)のモデル」とする。

さらに、こうしたAIの指数関数的な進展により「2040年までにロボットをめぐるAIのさまざまな問題が解決され、多くのロボットが登場する中で、改造や変更なしにどこでも運用可能なヒューマノイド型が主流になるだろう」と展望した。

ソフトバンクGのABBロボティクス買収も話題

企業による技術セッションを覗いてみると、スイスのABB RoboticsがAIのロボットへの応用についての自然な言葉でロボットのプログラム作成を支援するAIアシスタントや、3Dカメラで周囲環境を認識し、他のロボットとも障害物などの情報を共有しながら迂回路を見つけて移動できるロボットアーム付きのAMR (自律移動ロボット) について説明していた。仮想トレーニング環境と実際に動作するロボットとの位置のズレを1mm以内に抑えることを保証する技術では、仮想環境でのトレーニング結果の信頼度が高いことから、合成データによる数千通りものシナリオを使った学習が可能になるという。

ABB Roboticsを巡っては、10月4日に発表された日本のソフトバンクグループによる総額53億7500万ドルでの買収合意が大きな話題となった。そのため会場からは「買収でどのような変化を期待しているか」との質問も飛んだ。とはいえ、ABBの発表者は経営層ではなくAIアプリケーションのリードエンジニア。「正直、私には答えられないし、私自身も (この先どうなるかを) 考えている」と苦笑いしながら、「これまで通り、顧客に何を提供していくかということと、現在進めている取り組みに力を注いでいく」と回答していた。¶

会場となったSanta Clara Convention Center


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