MulmoClaude活用 前編 記録をまとめる
前回の記事では、家の中で動いているアプリを3本紹介しました。子供のお小遣い台帳、中学英単語の学習アプリ、図書館で借りた本の管理アプリ。3本とも、私が欲しいものを言ってClaudeが作ったものです。
今回は逆で、他人が作ったソフトを使っています。MulmoClaudeというソフトを7月の終わりに家へ入れて、それから毎日使っています。
作ったのは中島聡氏です。マイクロソフトでWindows 95の基本設計を手がけ、右クリックやダブルクリックを世界に広めたエンジニアとして紹介される人です。MulmoClaudeはMITライセンスのオープンソースで、自分のパソコンの上で動きます。開発はいまも速く、我が家に入れた7月末の版はv1.6、この記事を書いている8月下旬にはv1.13まで上がっています。
作者の説明では、これは自分だけのAIアシスタントを手元で育てるための環境だそうです。記憶も、データも、自分専用の小さなアプリも置けて、そのすべてがワークスペースと呼ばれるフォルダの中に、ただのファイルとして残ります。
前提はNode.jsと認証済みのClaude Codeで、どちらも手元に揃っていました。道具代も前回書いたClaudeのMaxプランのままで、新しく払ったものはありません。インストールした直後のワークスペースは空っぽで、そこから1ヶ月かけて、我が家の台帳は13本まで増えました。
待っているうちに、終わっていた
GitHubのページを開いてURLをAIに渡し、「これを入れて、動くところまでやってほしい」と頼みました。
入れ方が2通りあることを、私は知りませんでした。コマンドを1行打つだけで試せる方(npx mulmoclaude@latest)と、ソースを丸ごと持ってきて自分のMacで組み立てる方があって、我が家に入っているのは手数の多い後者です。どちらにするかを決めたのも私ではありません。
7月26日に本体が入りました。Node.jsの用意、依存の取得、全体のビルド、Claude Codeの認証、ブラウザで開いて正常に応答が返るところまで、その日のうちに終わっています。
翌日は任意の追加分でした。この環境にはDocker、ffmpeg、whisperという無くても動く依存が3つあって、順にサンドボックス、動画の書き出し、音声入力を受け持ちます。3つとも入れてあります。その途中、Homebrewという、Macにアプリを入れるための仕組みを入れるところで一度だけ、管理者パスワードを求められました。
あとから記録を読み返すと、同じものが場面ごとに違う名前で呼ばれていたり、入れたはずのものが再起動するまで認識されなかったりと引っかかりどころは多く、私のような素人がひとりでインストールするのは難しいと思いました。
入れていないものもひとつあります。画像の生成で、これにはGoogleのGemini APIのキーが別に要ります。手持ちの無料のキーで試したところ、文章の生成は通るのに、画像は初回から回数の上限に当たって1枚も作れませんでした。課金すれば使えるはずですが、このアプリで画像を作る予定がいまのところ無いので、そこは未検証のままキーを外してあります。画像が欲しいときは、ChatGPTのほうで作っています。
AIは、入れて終わりにしませんでした。macOSに元から入っている読み上げ機能でテスト用の音声ファイルを作り、それを文字起こしにかけて、元の文が正しく戻ってくるところまで確認してから「できた」と報告してきました。音声モデルの容量は1.5ギガバイトあります。
私がしたのはURLを渡したことと、パスワードを一度打ったことだけで、それで動くものが立ち上がっていました。自分が何もしていないことに、自分で驚きました。 何が入っているのかも、あとから聞いて知りました。
領収書を打ち込まなくなった
最初に入れたのは子供の学費の台帳で、それまではApple Numbersのファイルで管理していました。入学金、制服、教科書、部活、学校集金。子供3人分を、領収書が出るたびに手で打ち込んでいました。
いまはLINEで済ませています。「マルモ受付」という名前で友だちに入れてあって、領収書を撮ったら、そこへ送ります。このLINEは、普段使っているアカウントとは別物です。店や企業が使うLINE公式アカウントを作って、外部連携の機能を有効にしてあります。個人でも作れますが、そのぶん手順は増えます。料金も使い方によって変わるので、登録する前に自分の用途で調べておいたほうがいいと思います。
届くと、AIが写真を読んで、指示書に書いてある雛形どおりに返してきます。
この内容で登録します。よろしいですか?
・日付: 2026-05-19
・カテゴリ: 学校集金
・内容: 探究学習合宿費
・金額: ◯◯◯円
「はい」と返すと台帳に入ります。金額の誤読は後から気づける種類の間違いではないので、この承認のステップは指示書で省略を禁じてあります。どの子の分か写真から判別できないときも、推測させずに聞き返させています。
現在の登録は17件で、今年の1月から8月までの合計は80万円を超えています。カテゴリ別でいちばん大きいのは制服で、入学金と施設費の合計より多くなりました。

金額の偏りが大きすぎて、月ごとの平均を出しても何も表しません。上位3件だけで総額の6割を超えます。だから画面には平均を出させず、「入学のときだけかかるもの」と「在学中は毎年かかるもの」の2本立てで並べています。
もう1枚、立て替えの精算表という画面があります。学費はいったん親の口座やカードから払い、あとで子供名義の口座から親へ移します。この「移したかどうか」を、Numbersでは別の表で管理していました。それを引き継いで、明細ごとに済んだ印を付けられるようにしました。まとめて何件も押すことがあるので、印を付けるボタンだけはAIを通さず直接書き換わる作りです。

年度の扱いにも癖があります。学費の年度は4月から翌年3月なので、1月から3月に払う入学準備の費用は、前の年度に入ります。4月入学ぶんをまとめて見たいときは「全期間」に切り替えます。画面にもその注記を出させています。元のNumbersのファイルと領収書は別のフォルダにそのまま置いてあって、5月までの分がそこで止まっています。
移した直後には、しくじりもありました。LINEから画像だけを送ると、ブリッジは Describe / analyze this file. という英語の定型文を添えて渡してきます。本文が無いことを示す印で、依頼ではありません。ところがAIはこれを真に受けて、領収書の写真を丁寧に説明して返してきました。「LINEで画像だけが送られてきたら、それは領収書である」と指示書に書き足して直しました。
NotebookLMから引っ越した
家電の取説と保証書の台帳もあります。作ったのは8月の頭で13本のなかではいちばん新しく、まだ6台しか入っていません。複合機、玄関のスマートロック、ミラーレスカメラ、電動シェーバー、腕時計、それにワイヤレスイヤホンを着けたまま通話を録音できるボイスレコーダー。ジャンルはばらばらで、家じゅうの家電を入れ終えるのはこれからです。
1台ごとに公式の取説PDFが紐づいていて、詳細画面の「取説に聞く」というボタンを押すと、AIがそのPDFを読んで質問に答えます。
同じことはもともとGoogleのNotebookLMでやっていたのですが、NotebookLMは一度アップロードしたファイルを落とせません。移そうにも元が取り出せませんでした。
そこで、NotebookLMに読み込ませた資料の一覧をスクリーンショットで1枚渡したら、それだけでAIがファイル名から製品を特定しました。保存されていた名前がメーカー公式のPDFと同じで、5台ぶんとも公式サイトで取り直せました。型番が分からなかった電動シェーバーだけは私が聞かれて答えて、シリーズ共通の取説が該当しました。
保証書のほうは、LINEに写真を送るとき「保証書」の一言を添えると、学費ではなくこちらに入ります。購入日と保証期間から期限を計算して、期限が近いものは画面で色が変わります。ただし実際に日付まで入っているのは、いまのところ腕時計の1台だけです。残りは取説だけ入れて、保証書は見つかったら送ることにしています。
LINE1本が、4つの棚に分かれる
窓口はひとつですが、送ったものを見て行き先が変わります。画像だけなら学費、「保証書」の一言が付いていれば取説台帳。InstagramのURLならリンク集、YouTubeのURLなら動画の棚に入ります。
この窓口は、作った当初は「学費メモ」という名前でした。学費のつもりで作ったのに、InstagramやYouTubeの保存にも使えると分かってきたので、8月2日に汎用の「マルモ受付」へ改めました。
このメッセンジャー連携は、本体に最初から入っている機能です。連携先はLINEのほかにSlackやDiscordなど20を超えていて、使うものを選んで繋ぎます。我が家で繋いだのはLINEだけです。
台帳のほうは、頼むたびに増えました。どれも「こういうものが欲しい」と話しただけで、AIが項目を決めて画面まで作ります。
いちばん件数が多いのはInstagramの棚で、67件あります。後で見たいと思った投稿のURLを送ると、表紙の画像とアカウント名を取ってきて、ジャンルを付けて並べます。おでかけが19件、グルメが11件、健康が10件、暮らしが8件、仕事術が7件。「この前のあの店」を探すのに使っています。動画の棚は8件とまだ少なく、こちらは題名とチャンネル名が入ります。

増やしていくうちに、指示書に同じ趣旨の1行を何度も書くことになりました。分からないものを、分かったふりで埋めさせない、という1行です。
動画の棚では、題名とチャンネル名を必ず公式の取得口から取らせています。自分で書かせません。中身の要約も禁じてあります。AIはその動画を再生できないので、内容を語らせれば必ず作り話になります。題名が取れなかったときは、URLをそのまま入れて「取得できなかった」と書き、それでも登録はさせます。
Instagramの棚も同じで、表紙の画像から判断できなければジャンルは「未分類」に落とします。実際、67件のうち4件が未分類のまま残っています。分からないまま置いておけば、あとから人が見て直せます。
学費の登録前に必ず確認を挟むのも、家電の保証期間が読み取れなければ空欄のままにするのも、根は同じでした。
子供の名前を、家の外に出さない
この環境は、全部が手元のパソコンで動きます。台帳も、AIが書き溜めた記憶も、ワークスペースというフォルダの中に、ただのテキストとJSONとして残っています。どこかのサービスにログインして預けているわけではありません。スマホからも使えますが、中継サーバーが運ぶのは転送中のメッセージだけで、データそのものは外に出ません。
これは私にとって条件のひとつでした。学費の台帳には子供の名前と学校名と支払額と領収書の写真が入っています。他所に預けて、何かあったときに取り返せる種類のものではありません。
うまくいっていないところもあります。母艦のMacがスリープに入っていると、LINEに送っても届きません。我が家ではMacを24時間つけたままにしているのでスリープには入りませんが、仕組みとしての穴はふさげていません。
おわりに
ここまでは、学費、取説、保存した動画や記事と、家の中のものを入れてきました。
13本の内訳を見ると、家のものは4本しかありません。5本は小説の設定、残る4本は、私が抱えているものを把握しておくための台帳になっていました。そしてその4本が、私の下手さを数字で出してきます。その話は後編に書きました。

13本のうち5本で設定を管理しているのは、娘のために書いた小説です。オオカミの群れの話で、いま3作目を準備しています。人物も、場所も、張ったままの伏線も、学費の領収書と同じ場所に入っています。
▼ 1作目『だれも呼ばない名前 アシエラⅠ』(250円・Kindle Unlimited 対象)
▼ 続篇『還る温もり アシエラⅡ』(450円・Kindle Unlimited 対象)
