全日本実業団陸上
先週末は、全日本実業団陸上へ。
実業団日本一を決める選手権大会。
大会としての格式があり、出場する選手たちの実力も高い。実際、全日本実業団陸上は日本陸連の公式大会として続いていて、観戦チケットの案内も整えられている。けれど、競技の価値の大きさほどには、観客の熱が広がり切っていないように見える。
誰が、どんな思いでここに立っているのか。
どんな遠回りをして、どんな仕事と両立しながら、この舞台まで来たのか。そうした背景が見えないままだと、記録には驚いても、心までは動きにくい気がする。
先日開催された超RIZIN.5を見ていて、あらためて感じたことがある。
自分は斎藤裕選手を応援していたし、純粋に試合として強く見たかったのは、ラジャブアリ・シェイドゥラエフ対AJ・マッキーだった。けれど、事前の煽り映像を見ているうちに、どこか青木真也選手にも感情移入している自分がいた。RIZINは大会前から関連動画を継続的に公開している。そうした積み重ねが、試合の意味を膨らませているのだと思う。
個人的に、青木真也選手を、もともと強く好んでいたわけではない。
それでも、紆余曲折を経ながら長く格闘技を続けてきた選手が、時代の中心にいる選手と向き合う構図には、こみ上げてくるものがあった。往年の格闘技ファンほど、なおさらそうだったのではないかと思う。
格闘技の煽りVが強いのは、勝敗の前に人物を見せるからだと思う。
過去や葛藤や因縁が少し見えるだけで、ただの対戦が、意味のある勝負に変わる。
実業団陸上にも、本当はそれに負けない物語があるはずだ。
働きながら競技を続けること。会社を背負うこと。結果を求められながら走ること。そこには、数字だけでは伝わらない重さがある。
観客が入らない理由は、陸上競技そのものが面白くないからではない。
感情を乗せる入口が、まだ少ないのだと思う。
記録の紹介だけでなく、選手の背景まで届くようになれば、レースの見え方はたぶん変わる。
全日本実業団陸上に必要なのは、競技の価値を足すことではなく、応援したくなる理由をもっと見える形にすることなのかもしれない。
