作らないと、年を越せない
日本の家庭の食卓を長年研究してきた
大先輩の岩村暢子さんに、こんなことを聞かれたことがあります。
「タカコさん、家族も喜ばないのに
なんで毎年お節料理を作っているの?」
確かになぁ……と思いながら、私は答えました。
「お節料理を作らないと気が済まないんです。
作らないと、年が越せない。」
自分でも、おかしな答えだなと思いました。
家族が特別楽しみにしているわけでもない。
豪華なお節料理でもない。
それでも、年の終わりになると
台所に立ち、だしを取り、
ひとつひとつ料理を作ってしまう。
たぶん、これは理屈ではないのだと思います。
私にとって料理は
「やらなければならないこと」ではなく
「やらないと落ち着かないこと」。
味噌汁を作る。
ごはんを炊く。
出汁の香り。
台所で包丁の音がする。
そんな当たり前の時間があるだけで、
暮らしは少し整う気がします。
今どき、包丁やまな板すら
持っていない人も多いそうです。
つまり、料理は
しなくても生きていける時代です。
コンビニもあるし、
デリバリーもある。
それでも私は、
台所に立つことをやめられません。
なぜでしょう。
誰かに食べさせたい。
誰かと一緒に食べたい。
そんな気持ちが、
人の中にきっとあるからだと思います。
ちなみに私は、
ひとり飯も多い。
誰かのためではなく、
自分のカラダとココロを整えるために
料理を作ります。
台所は我が家のファーマシー。
料理は特別なことではありません。
でも、台所がある家は
どこか強い。
いざというとき、
パワーが生まれる場所。
味噌汁と炊き立てのごはん。
それだけで、人は少し元気になる。
今日もまた、
台所で一日が始まります。
