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「立場」というものを、「立場」を超えて考えてみる。

ある元政治家から11年ぶりに電話をもらいました。
なにか選挙の話かな?と思って折り返すと、
「ある映画を観て欲しい、そしてできれば山梨で上映して欲しい」
とお願いされました。
「だけど、笹本さんにもお立場があると思うから、映画を観てよく判断してね。その映画、オウム真理教の麻原彰晃の三女の映画なの」

その元政治家は、仁ノ平尚子さんです。11年前に山梨県議会議員を引退し、その後は母親の介護のため千葉県に移り住んでいました。
直近の上映会が渋谷であると聞き、私は早速その映画『それでも私は』を観に行きました。昨年はオウム真理教事件から30年。教団施設があった山梨では、TV各局が特集を組んで事件を振り返りました。しかし、私の頭の中では、いくつか教訓めいたことは残っていたとしても、もう首謀者たちた死刑されたんだし、それは既に終わったことになっていました。だから、いまさらオウム事件から何を考えろと言うんだ? くらいの偏見を持って、座席につきました。

するとそこには、30年前からずっと「事件後が」続いている三女・松本麗華さんの姿があり、私の知らなかった「加害者家族」という立場がありました。もちろん「被害者家族」の立場や「企業」の立場、「マスコミ」の立場や「国家」の立場、「弁護士」の立場、「NPO」の立場、「映画監督」の立場、立場、立場、立場。
松本麗華さんの「立場」が特殊だからこそ、彼女の前に現れる人々の「立場」が次々と浮き上がってくる、私にはそんな映画にみえました。

上映会が終わって、仁ノ平さんと軽く食事をしました。
政治家を辞めてから山梨を離れ、お母様の介護に専念されていたこと。その介護を通して感じた医療の意義と限界。そして1年半ほど前にお母様を送って、ようやく落ち着き、前を向き始めたこと。
私は「なぜ、山梨で上映?」「なぜ、私に相談?」「なぜ、この映画?」という疑問を口に出さないまま、相変わらず話が止まらない、その元政治家・仁ノ平さんを見ていました。

思えば、私と仁ノ平さんとの関係の始まりは、同じ選挙区の候補者としてライバル同士でした。しかし私が落選して政治家同士にはなれなかったのですが、それでも考え方が近かったので交流は続き、仁ノ平さんが政界引退を決めてからは政治家とその後継者のような関係にもなりました。ところが、私は次期選挙に立候補しないことを決めて、二人の関係は途切れました。私は政治家ではなく「地域の経営者」の立場をとり、仁ノ平さんは「政治家」の立場を貫きました。
そうだ。私のせいで、仁ノ平さんは山梨県の政治の世界に後継者を残さないまま、11年前に山梨を去ったんだ。無念だったろうな。本当に申し訳なかった。「政治家」という立場からしたら、何とか私以外の人を探そうとしただろうに。でも、それはしなかった。
そう思って目の前の仁ノ平さんの顔を見てみると、なんとも晴れ晴れとした、解き放たれた振る舞いで、「立場」なんてものがどこにもない女性がいました。

いま思うと、11年前までの私と仁ノ平さんは「立場」で付き合っていました。しかし、仁ノ平さんは、あの時以来「立場」を捨てて、いまここにいます。私もあれ以来、何度も振り出しに戻って経営してきて「立場」なんて忘れている。
もう一度、立場のないもの同士でお付き合いできたら嬉しいな、と思ったのでした。これが今回の企画のスタートになったわけです。

この映画をきっかけにして、改めて「立場」ってなんだろう? と考える機会をつくりたいと思いました。もちろん、「立場」が全て悪いわけではありません。人の成長には重要な要素で、「立場が人を育てる」のは真理です。
しかしながら、自分を守るために「立場でモノを言う」だったり、相手を打ち負かすために「立場を振りかざす」だったり、相手に萎縮して「立場をわきまえる」だったり、そんな経験はありませんか?

私にはあります。大切な人を傷つけてしまったり、他人から裏切られたと感じたり。そんな時はいつもこの「立場」が原因でした。
お互いが大切にしている「立場」を尊重しつつ、それでも「相手の立場になって」考えてみる。目的の達成のために「お互いの立場を乗り超えて」理解を深める。そうすると、大概のことはどうでもいいことに思えてきませんか? 立場なんてどっちでもいいから、本音で語ろうよ! ってなりませんか?
「多様性」とか「寛容」とか「尊重」とか、私たちが大切にしたいと思っている価値観ってものは、いつでも「立場」に邪魔されてませんか?
それは「あの人の立場」の場合もあれば、「あなたの立場」の場合もあると思います。

今回の上映会+トークイベントは、成年後見人制度に取り組む「ファボール山梨」さんと共同で企画しました。
彼らは「社会福祉」という立場の枠を超えて、さまざまな立場の人々の間に入り込んで、第一線で仕事をしています。私たち studio pellet も、このカフェ事業とペレットストーブ事業を通して、この地域のさまざまな立場を横断して、社会実験のような仕事をしています。

そんな私たちのささやかな問題提起【「立場」を超えて考える】に、どうぞお付き合いください。

studio pellet 代表 笹本 貴之


studio pellet × ファボール山梨 共同企画


映画『それでも私は』上映会+トークイベント

「立場」を超えて考える
〜加害者家族を知って見つめる立場の壁〜


2026.9.13(日) @ 甲府・桜座
【1部】上映のみ 開場9:00/開演10:00
【2部】 上映+トークイベント 開場13:00/開演14:00

※トークイベントに登壇するのは
松本麗華さん(映画主演/オウム真理教事件 三女)
長塚洋さん(映画監督)
西澤哲さん(山梨県立大学大学院特任教授)

予約はこちら↓(会員登録なしで予約可能)
https://tiget.net/events/494987

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