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受任基準がない人ほど、目の前の売上に判断を奪われる

「今月の売上」と「3年後の損失」を、同時に見るために


今月は、売上が目標に届いていない。
そんなときに、大きな相談が来る。
少し気になる点はある。

でも、契約できれば数字は整う。
しかも、紹介者は有力な人。
ここで断れば、次の紹介がなくなるかもしれない。

そう思うと、
「まず受けてから考えよう」
という気持ちになります。

経営者なら、一度くらいは経験があるのではないでしょうか。

売上が欲しいときほど、契約前の違和感は小さく見えます。
普段なら確認するはずのことも、
「まあ大丈夫だろう」
で流してしまう。

紹介案件なら、
「せっかく紹介してもらったから」
という気持ちも加わります。

その結果、
受任してから、
「やっぱり確認しておけばよかった」
となる。

私は、これは営業力の問題というより、
受任判断の仕組みがないこと
の方が大きいと思っています。

案件が来るたびに、その場の感情で判断している。
だから、売上が足りないときには判断基準がゆるくなる。
反対に、忙しいときには厳しくなる。

これでは、同じ相手でも、その月の売上状況によって判断が変わってしまいます。

私は、受任判断を売上の波から守るには、
案件が来る前に基準を決めておくこと
が必要だと考えています。

基準は三段階です。
必須条件
要確認条件
受任しない条件

この三つです。

人物の印象ではなく、
確認できる行動と、仕事の条件で決めます。


受任基準は、人を排除するためのものではない

「受任基準」と聞くと、
冷たい印象を持つ人がいます。

人を選別するようで嫌だ。
困っている人を助けるのが専門家ではないのか。
紹介された相手を断るのは失礼ではないか。

そう感じる人もいるでしょう。
しかし、私は逆だと思っています。

基準がないまま無理な案件を受ければ、
必要な品質を守れない。
納期を守れない。
確認や催促が増える。
スタッフへ負担が偏る。
ほかの顧客へ使う時間も減る。
あなたの時間を守れなくなります。

結果として、
受けた相手にも、良いサービスを提供できなくなります。

だから、受任基準は、
人を断るための基準ではなく、良い仕事を守る基準
です。


受任基準で見るのは「人柄」ではない

例えば、
「誠実な人」
「感じのいい人」
「常識のある人」
これを受任条件にすると、担当者によって判断が変わります。

人によって、
誠実の定義が違うからです。

また、第一印象がよくても、
仕事が始まると合わないこともあります。

逆に、少し無口でも、
期限は守る。
資料は出す。
判断も早い。
契約範囲も理解している。

そういう人は、仕事相手として非常に付き合いやすいことがあります。

だから、受任基準は、
印象ではなく、確認できる行動
にします。


まず「必須条件」を決める

必須条件とは、
これがなければ安定して仕事を進められない条件です。

例えば、次のようなものです。

1.連絡方法と期限を共有できる

どの手段で連絡するのか。
通常は、いつまでに返事をするのか。
資料提出が遅れる場合、いつ知らせるのか。

ここを合意できること。

2.必要資料を提出できる

業務に必要な資料を、
決めた期限までに用意できること。

資料がそろわなければ着手できない仕事なら、
その条件も理解してもらう。

3.本人が必要な判断をする

専門家が助言しても、
最終判断は本人にしかできないことがあります。

誰が決めるのか。
いつまでに決めるのか。

ここを明確にできること。

4.業務範囲と料金に合意できる

どこまでが契約内か。
何が追加対応になるか。
料金はいくらか。
支払条件はどうするか。

ここを曖昧にしないこと。

業種によっては、
本人確認。
着手金。
担当者の決定。
守秘義務や法令上の条件。

こうしたものも入るでしょう。


必須条件は、抽象語にしない

ここで重要なのは、
「ちゃんとした人」
ではなく、
具体的に書くことです。

例えば、
「指定の連絡手段を使える」
「原則2営業日以内に返答できる」
「必要資料を着手日までに提出できる」
「最終決定者が面談に参加できる」
このようにします。

誰が見ても、同じ判断ができる形にします。

そうすると、
スタッフでも初回対応がしやすくなります。

経営者も、
毎回ゼロから考えなくて済みます。


必須条件が足りないなら、すぐ断る必要はない

必須条件が一つ足りない。
だから即NG。

そうする必要はありません。

まず、
整えられるかを見ます。

例えば、
決定者が面談にいない。
では、次回は決定者にも参加してもらう。

資料がそろっていない。
では、資料がそろってから着手する。

業務範囲が広すぎる。
では、範囲を小さくする。

支払条件が曖昧。
では、契約前に書面で確認する。

条件を整えられるなら、受任できる可能性があります。

重要なのは、
無理な状態のまま契約しないこと
です。


次に「要確認条件」を決める

要確認条件は、
注意が必要だけれど、
それだけで断定してはいけない項目です。

例えば、
契約前から返信が遅い。
決定者が不明確。
要望がどんどん増える。
過去の取引先への批判が多い。
話が毎回変わる。

こうしたことです。

これらは、気になる材料です。

しかし、
一つ見つかったからといって、
「この人はダメだ」
と決めつけてはいけません。


要確認条件は、質問をつくるために使う

例えば、
返信が遅い。

でも、
こちらが期限を伝えていなかったかもしれません。

決定者が不明確。
でも、
社内ルールが整理されていないだけかもしれません。

だから、質問します。
「普段、仕事の連絡で確認しやすい方法は何ですか」
「最終的な決定は、どなたが行いますか」
「追加で必要になりそうな支援はありますか」
「以前の取引で問題が起きたとき、どのように対応されましたか」

そして、
答えだけではなく、その後の行動を見ます。

決めた期限に返事が来るか。
決定者が次回面談へ参加するか。
追加範囲を見積もりとして合意できるか。
ここを見ます。


違和感を、思い込みにも無視にも使わない

要確認条件は、
二つの使い方を間違えやすいです。

一つは、
「なんとなく嫌な感じがする」
という思い込みだけで断ること。

もう一つは、
売上が欲しいから、
見ないふりをすること。

どちらも違います。

違和感があるなら、
確認する
のです。

私は、
契約前の違和感は、
「断る理由」ではなく、
確認するための経営データ
だと考えています。


三つ目が「受任しない条件」

受任しない条件は、
調整しても解決できず、
専門家として責任を持てない条件です。

例えば、
虚偽の説明を求める。
違法または不適切な対応を求める。
合意した条件を繰り返し否定する。
専門家やスタッフへの侮辱や威圧が続く。
料金や支払条件に合意しない。

こうしたものです。

ここでは、
「売上が大きいから」
「有力な人からの紹介だから」
という理由で線を動かさないことが大切です。


売上が欲しいときほど「受任しない条件」が必要になる

経営が順調なときには、
「これは受けない方がいい」
と冷静に言えます。

しかし、
売上が足りないとき。
資金繰りが気になるとき。
大きな契約が欲しいとき。

ここで判断が揺れます。

「今回だけなら」
「まず契約してから」
「あとで何とかしよう」
そう思う。

だからこそ、
受任しない条件は、
経営が苦しいときほど必要です。

その場の売上のために線を動かせば、
将来、
信用。
時間。
利益。
スタッフ。
ほかの顧客。
こうしたものを失うかもしれません。

つまり、
今日の売上と引き換えに、未来の損失を抱える
ことになります。


一度のミスだけで、受任しないと決めない

ただし、
受任しない条件も、
一度の認識違いや言い間違いで判断してはいけません。

事実を確認します。
こちらの条件を伝えます。
修正できるかを見る。

それでも、
同じ要求。
同じ行動。
同じ問題。

これが繰り返されるなら、
受任しない。

この順番です。

相手を決めつけるのではなく、
行動を確認する
ことが大切です。


例外を認めること自体は悪くない

現実の仕事は、
基準表だけですべて決められるわけではありません。

社会的意義が大きい。
長年の顧客が一時的に困っている。
新しい分野へ挑戦したい。
将来の可能性がある。

条件が一部足りなくても、
あえて受ける判断はあります。

例外そのものは問題ではありません。

問題は、
なぜ例外にしたかが残っていないこと
です。


例外には「理由」と「見直し時期」を残す

例えば、
「経営者が決定」
「新しい分野の経験を得るために受任」
「業務範囲は初期調査のみ」
「1か月後に継続を判断」
このように残します。

さらに、
スタッフへ負担が出るなら、
受任前に説明する。
必要な時間も確保する。

例外を記録しておけば、
後から振り返れます。

良い例外だったのか。
標準サービスにできるのか。
次回からは受けない方がよいのか。

基準を更新する材料になります。


基準は固定するものではない

受任基準は、
一度作って終わりではありません。

実際の案件から学び、
更新していきます。

例えば、
毎回、資料提出で苦労する。
なら、
資料提出条件を必須条件へ加える。

決定者不在で手戻りが多い。
なら、
決定者参加を条件にする。

追加依頼で利益が薄くなる。
なら、
追加対応の条件を明確にする。

つまり、
受任基準は、
経営経験を蓄積した判断データ
でもあります。


紹介者にも基準を共有する

経営者だけが受任基準を持っていても、
紹介者が知らなければ、
合わない案件が入ってきます。

だから、
紹介者にも、
どんな人なら力になれるか。
どんな課題なら対応できるか。
必要な準備は何か。
受けられない案件は何か。

これを伝えます。

「何でも紹介してください」
ではなく、
「こういう方なら力になれます」
と伝える。

その方が、良い紹介が増えます。


スタッフにも基準を共有する

受任基準は、
経営者だけの頭の中に置かないことです。
スタッフにも共有します。

例えば、
必須条件がそろっている。
→通常手順で進める。

要確認条件がある。
→事実を記録して経営者へ上げる。

受任しない条件に該当する可能性がある。
→その場で約束しない。

この流れを決めます。

これだけで、
スタッフは相手の印象だけで判断しなくて済みます。

経営者も、
毎回すべての案件を自分で判断する必要がなくなります。


受任基準は、社長ボトルネックも減らす

受任判断が経営者の頭の中にしかない会社では、
新しい問い合わせが来るたびに、
「社長、この案件どうしますか」
となります。

経営者が一件ずつ見る。
一件ずつ考える。
一件ずつ決める。

これは、
判断集中です。

受任基準があれば、
ある程度まではスタッフが確認できます。

経営者が判断するのは、
例外案件。
要確認案件。
大きな契約。

こうしたものだけになります。

受任基準は、
営業判断だけでなく、
社長の判断時間を守る仕組み
でもあります。


大きな契約ほど、基準をゆるめない

売上が大きい案件ほど、
判断は甘くなります。

「これを取れたら今月は楽になる」
「この契約が決まれば安心できる」
そう思うからです。

しかし、
大きな案件ほど、
合わなかったときの損失も大きくなります。

月額が高い。
その代わり、
問い合わせが多い。
経営者の確認が多い。
追加対応が多い。
スタッフの時間を使う。

契約金額だけ見れば大きい。
しかし、
時間収支で見ると利益が残らない。
こういうことがあります。


売上を見るなら、未来の時間も一緒に見る

私は、
売上が欲しいときに契約を取ること自体を否定していません。

経営者なら、
売上をつくる必要があります。

ただし、
その契約によって、
毎月どれだけ確認が増えるのか。
経営者の判断時間がどれだけ使われるのか。
スタッフへどれだけ負担がかかるのか。
ほかの顧客へどんな影響が出るのか。

ここまで見る必要があります。

だから、
今日の売上だけではなく、
未来の時間損失
も見る。

この視点が必要です。


「今のまま3年続いたら、何を失うか」

一件の契約なら、
「少しくらい大丈夫」
と思うかもしれません。

しかし、その判断を3年間繰り返したらどうでしょうか。

売上が足りないたびに、
条件の悪い案件を受ける。
紹介だから断れない。
大きな契約だから例外にする。

その結果、
経営者の時間が埋まる。
スタッフが疲れる。
利益が残らない。
本当にやりたい仕事へ使う時間がなくなる。
新しいサービスを考える時間もなくなる。

私は、
受任判断では、
「この案件はいくら売上になるか」
だけでなく、

「この判断を3年続けたら、何を失うか」
まで考える必要があると思っています。


受任基準は、目の前の売上から判断を守る

あなたの事業には、
受任基準がありますか。

「なんとなく」
ではなく、
言葉になっているでしょうか。

必須条件。
要確認条件。
受任しない条件。

大きな契約でも。
信頼する人からの紹介でも。
売上が足りない月でも。
同じ基準で確認できるでしょうか。

もし、
案件が来るたびに、
「受けようかな」
「やめようかな」
と迷っているなら、
判断基準をつくる余地があります。


良い売上は、良い契約から生まれる

私は、
案件そのものが悪いとは思いません。

むしろ、
経営を続けるには必要です。

しかし、
売上なら何でもいいわけではありません。

その契約によって、
利益が残るか。
時間が守られるか。
スタッフが無理をしなくて済むか。
顧客へ良いサービスを続けられるか。

ここまで含めて、
良い案件です。

そのために必要なのが、
受任基準です。

目の前の売上に判断を奪われない。
未来の損失まで見て契約を選ぶ。
これが、長く続く経営につながります。

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相手を決めつけず、
事実と行動から受任条件を確認する方法。
受ける。
条件を整える。
断る。
この判断基準。

そして、受けられない場合の伝え方まで扱います。

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