小説すばるのHiGH&LOW特集
今度のハイローは、小説だ!!
小説すばる10月号を読みました。あを井です。
まず私の「なんで雨宮尊龍はアロワナを飼育していたのか?」論をお聞きください。
ある日、兄弟と共に仕事を終えた雨宮尊龍はなにも言わず、かなしげな眼差しだけを向け弟たちの前を去りました。クレストアベニューにもう帰らない尊龍は屋根裏部屋のような部屋を新たな拠点とし、両親の敵である上園会に潜入します。その時共に暮らした存在、それが一匹のアロワナです。
前の住人が置いていった(緑色の濁った水のなかにアロワナがいてビビる尊龍)とか、上園会で汚れ仕事をした時や後始末の仕事をした時にその空間にアロワナがいたとか(「コイツを殺す仕事は命令されてねえ」と持ち出す尊龍)とか、そういうのを想像していました。これからどう足掻いても破滅に進む自分自身に道連れを選ぶ男とはあんまり思えないからです。
でも、もし、もしですよ、このアロワナは尊龍が選んだ「道連れ」だとしたら?
やべーーーーーーーに決まってんだろ。
リトリアジア地区の熱帯魚ショップで色とりどりの魚たちに囲まれながら、どこか虚ろな男がアロワナの水槽の前で立ちすくんでいる。
「かうんだね」
と店主らしきジジイに声をかけられ、「え?」と言ったか言わないかそんなことは関係なくお買い上げの流れに。別に「嫌だ」と言って断ることだって出来たし、力ずくで逃げることだって出来たのに、しなかった。本当かどうかも怪しい血統書まで押し付けられて拠点に帰る。
律儀にアロワナを世話をしながら「どうせ死ぬのになんで魚なんか飼ってんだ」と思いながらコオロギをつまんで食べさせる。
自分が死ぬことで、このアロワナも死ぬ。ひとつだけ決まっている未来みたいなものが事実として尊龍の中にする、と落ちていく。早いうちにやって来る「死」の手前に自分はいて、アロワナは「死」と「生」の間をゆらゆら泳いでいる。きっと自分は天国に行けない。地獄にも行けないかもしれない。
「おれみたいな奴にかわれて、運が悪いよな、お前」
……………………………………………
リトルアジア地区の熱帯魚ショップの店主は、「アロワナを押し売りした男がエサを買いに来ないな」と思う。街は変わらず喧騒の中にある。
「すいませーん、アロワナのエサってありますか?」
「ここで合ってんのかよ」
「いやここだって書いてるじゃん、ホラ!」
「見てねえ」
水槽の迷宮の中で黒いライダースの2人組の男が立っている。
「アンタら、うちの客じゃないね?」
もう、そういうことです。
そういうことになりました。私の中で。
雅貴と広斗だって、本当は「兄貴なんでアロワナ飼ってんの?」とか、そういう他愛もない会話もしたかったよな。墓前に酒とタバコ供えながら話したっていいけど。でもさ、「アロワナちゃん」って特定の名前をつけないで、自分が知らない兄貴の人生と時間にあえて触れず臆病で優しい雅貴のこともすきだ。
三浦しをん様、広斗くんのでっけー愛を見せてくれてありがとうございます。
I'm a chain breaker . そういうやつだよ広斗くんは。広斗くんは鎖なんかぶっ壊しゃあいいし、雅貴も鎖をぶっ壊せると思ってるし、2人で生きていくから、それでいいんだよな。
余談になりますが、今回の読みきり短編はほとんどアクションシーンが描写されており、「それでこそハイローよな」と脳を焼かれたあの時の自分もニッコニコして満足しています。
頼む、書籍化してくれ……!!!!と乞い願う私はなんとかして小説すばるにこの声を届けようと思います。
