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「ペットボトルのお兄ちゃん」と呼ばれて考えた、フェスという社会の縮図

「あ、ペットボトルのお兄ちゃん!」

アラバキロックフェスの2日目。
休憩中に、ボランティアスタッフの後輩と僕が「みちのく」から「エレアコ」の方へ歩いていた時のことです。

4人家族でアラバキに来ていた小さな女の子が、僕たちに気づいて声をかけてくれました。

その子は、後で聞いたところ4歳の小さな女の子。
ここではAちゃんと呼びます。

その時、僕たちはスタッフTシャツを着ていませんでした。
完全に私服の状態。

それなのに、Aちゃんにはバレてしまいました。

子どもの記憶力って、本当にすごいですね。

僕はアラバキで、NPO法人 iPledge のボランティアスタッフとして、ゴミゼロステーションナビゲーターを担当していました。

主な仕事は、ゴミの分別案内、出展ブースの紹介や呼び込み、お客様の案内、救護対応などです。

ペットボトル、缶、紙、お箸、燃えるゴミ。
お客様に声をかけながら、分別をお願いする。

一見すると、とても地味な仕事かもしれません。

でも、その声かけから挨拶が生まれ、感謝が生まれ、笑顔が生まれ、少しずつ人とのつながりが生まれていきました。

Aちゃんのお父様は10-FEETが好きということで、少しだけお話ししました。

するとAちゃんが、

「一緒になちちゃん見ようよー」

と言ってくれました。

サバシスターの「なち」さんのことです。

その言葉が、なんだかすごく嬉しかったんです。

フェスに家族で来る。
子どもが音楽に触れる。
知らない大人とも自然に会話する。
ゴミの分別を通して、スタッフのことを覚えてくれる。
そして、また会った時に声をかけてくれる。

僕はその瞬間、「家族っていいな」と思いました。

同時に、フェスって単なる音楽イベントじゃないんだな、とも思いました。

人に挨拶すること。
知らない人とも自然に話すこと。
みんなで場所をきれいに使うこと。
音楽や文化を、家族や周りの人と一緒に楽しむこと。

Aちゃんは、子どもの頃からそういう経験をしている。
きっと、こういう時間は子どもの中に「素敵な記憶」として残ると思います。

少なくとも僕は、Aちゃんを見ていて、フェスは子どもの人格形成にも良い場所なのかもしれないと感じました。

アラバキとミリオンロック、2つのフェスを運営側から見た違い

前回の記事で、次は海外フェスについて書くと予告しました。

ただ、その前にどうしても書いておきたいことがあります。

それが、今年運営側として関わったアラバキロックフェスとミリオンロックについてです。

僕はこれまで、海外生活や留学を通して、音楽やイベントが人と人をつなぐ瞬間を何度も見てきました。

言葉が完璧に通じなくても、同じ音楽で盛り上がる。
国籍も年齢も違う人たちが、同じ空間に集まる。
知らない土地で、知らない人と、同じ文化を共有する。

だから僕にとって、フェスやライブイベントは単なる娯楽ではありません。

文化を通して人が交わる場所。
異なる価値観が同じ空間に集まる場所。
そして、社会のあり方が少し見える場所。

そんなふうに感じています。

今年、僕はアラバキとミリオンロックという2つの音楽フェスに、スタッフ側として関わりました。

アラバキでは、ゴミゼロステーションナビゲーター。
ミリオンロックでは、主に場外の保全業務。

ミリオンロックで担当したのは、リストバンド引き換えの呼び込み、プラ柵を使った導線づくり、芝生を傷つけないためのお客様への声かけ、安全管理、そして解体作業アルバイトの管理などです。

同じ「フェス運営」と言っても、やっていることはかなり違いました。

でも、その違いがあったからこそ、フェスという場所の奥深さが見えてきました。

フェスは、会社の縮図だった

お客さんとしてフェスに行くと、目に入るのはステージ、アーティスト、フード、グッズ、会場の雰囲気です。

でも、運営側に回ると、見えるものが変わります。

人の流れ。
導線。
案内。
安全管理。
ゴミの分別。
会場の保全。
出展ブースとの連携。
救護。
撤去作業。
スタッフ同士の情報共有。

フェスは、音楽だけで成立しているわけではありません。

お客さんが何も考えずに楽しめるように、見えないところでたくさんの人が動いています。

それはまるで、ひとつの小さな会社のようでした。

ステージ上のアーティストがいて、フードを提供する人がいて、物販を支える人がいて、清掃する人がいて、案内する人がいて、安全を見る人がいる。

どれかひとつが止まれば、全体の流れに影響が出ます。

会社も同じです。

営業だけで会社が動いているわけではありません。
企画、経理、人事、広報、総務、現場管理、教育、顧客対応、調整。

いろいろな仕事が重なって、ひとつの組織が動いています。

フェスも同じでした。

ミリオンロックでは、万歩計を見たら1日で3万歩超、距離にして23kmほど歩いていました。

体力的にはかなりハードでした。

でも、その23kmの中で見えてきたのは、フェスがただの音楽イベントではなく、多くの業務と人の連携によって成り立つ「社会の縮図」だということでした。

アラバキは「成熟した運動会」、ミリオンロックは「みんなで作る文化祭」

アラバキとミリオンロックを比べて、一番印象に残ったのは、フェス全体の空気感の違いです。

アラバキは、フェス熟練度が高い場所だと感じました。

お客様も、出展ブースの方々も、スタッフも、フェスという場に慣れている。
だからこそ、お客様とスタッフの距離感が近い。

ゴミゼロステーションで分別案内をしていても、自然に会話が生まれる。
出展ブースを紹介する時にも、ただ宣伝するというより、会場全体の雰囲気の中で自然につながっていく感覚がありました。

アラバキには、どこか「ファミリーで楽しむ運動会」のような雰囲気がありました。

一方で、ミリオンロックは少し違いました。

すべてがまだ発展途中で、いい意味で不慣れな部分もある。
でも、それが悪いわけではありません。

むしろ、会場にいるみんなでフェスを作り上げている感じがありました。

高校の文化祭のような熱量。
完璧ではないけれど、だからこそ一体感がある。
運営側も、お客さんも、出展者も、アーティストも、その日その場所でひとつの空間を作っている。

そんな感覚がありました。

そして、ミリオンロックは石川県という土地柄もあってか、アーティストに対するリスペクトの濃度が高いようにも感じました。

アラバキが、長く続いてきた地域の運動会のようなフェスだとしたら、ミリオンロックは、今まさにみんなで作っている文化祭のようなフェス。

どちらが上という話ではありません。

成熟したフェスには、成熟したフェスの安心感がある。
発展途中のフェスには、発展途中だからこその熱量がある。

その違いを感じられたことが、とても面白かったです。

屋外フェスと屋内フェス。でも、体感は逆だった

もうひとつ面白かったのは、会場の性質です。

アラバキは屋外フェスです。
一方で、ミリオンロックは屋内フェスです。

普通に考えれば、アラバキの方が「野外フェス」で、ミリオンロックの方が「都市型フェス」に近いように思えます。

でも、実際に運営側として関わってみると、僕の体感は少し違いました。

アラバキは屋外フェスだけど、都市型フェスに近い部分がある。
ミリオンロックは屋内フェスだけど、野外型フェスに近い部分がある。

アラバキは会場が広く、他会場への移動が簡単ではない場所もあります。
だからこそ、時間の使い方がとても重要になります。

どのステージを見るか。
どこで食べるか。
どのタイミングで移動するか。
無理に移動するより、その場の雰囲気を楽しむ選択もある。

つまり、アラバキは「雰囲気だけでも楽しめるフェス」だと思いました。

一方で、ミリオンロックは会場間の行き来が比較的しやすい。

だからこそ、身体を動かしてなんぼのフェスだと感じました。

見たいアーティストのために移動する。
別のエリアに行ってみる。
お客さんの流れも、会場の熱も、どんどん動いていく。

屋内か屋外か。
都市型か野外型か。

それは、会場の構造だけで決まるものではないのかもしれません。

お客さんがどう動くか。
スタッフがどう支えるか。
会場全体にどんな流れが生まれるか。

その体感まで含めて、フェスの個性なのだと思いました。

フェスは、文化を社会インフラにするハブになれる

今回、運営側としてフェスに関わって強く感じたのは、フェスは単なる音楽イベントではなく、文化を社会インフラにするハブになれるということです。

音楽という文化がある。
そこに人が集まる。
人が集まるから、移動、案内、飲食、トイレ、救護、清掃、安全管理が必要になる。
地域の人が関わる。
出展ブースが関わる。
ボランティアが関わる。
アルバイトが関わる。
企業が関わる。

音楽を中心に、さまざまな人と仕事が集まってくる。

つまりフェスは、文化を社会の中に流し込む装置でもあると思いました。

文化は、ただ作品として存在しているだけでは、多くの人に届きません。

誰かが場所を作り、誰かが案内し、誰かが安全を守り、誰かが片付ける。

そうやって初めて、文化は人に届く。

アラバキでゴミの分別を案内していた時も、ミリオンロックで芝生を守るために声をかけていた時も、やっていることは一見地味です。

でも、その地味な仕事があるから、文化を楽しむ場所が守られる。

ゴミが分別されるから、会場が気持ちよく使える。
芝生が守られるから、次のイベントや地域の人たちにも場所が残る。
導線が整うから、人が安全に動ける。
声かけがあるから、迷っている人が安心できる。

その一つひとつが積み重なって、フェスという空間は成立している。

海外生活や留学で学んだことは、日本のフェスにもつながっていた

海外生活や留学で身につくものは、英語力だけではないと思っています。

もちろん、英語は大事です。

英語ができれば、海外から来たお客様への案内ができる。
海外アーティストや海外スタッフとのやり取りにも関われる。
日本のフェスを、海外の人にも開いていく力になる。

でも、それ以上に大きいのは、異なる価値観の中で動く力です。

相手の言いたいことをくみ取る。
自分の常識だけで判断しない。
わからない状況でも落ち着いて対応する。
相手に伝わる言葉を選ぶ。
知らない環境でも、自分から動く。

これは、海外生活や留学で何度も求められる力です。

そして、この力はフェス運営の現場でも必要でした。

フェスに来るお客様は、一人ひとり違います。

フェスに慣れている人もいれば、初めて来た人もいる。
家族で来ている人もいれば、一人で来ている人もいる。
会場の雰囲気を楽しみに来ている人もいれば、特定のアーティストだけを目当てに来ている人もいる。

同じ日本語を話していても、見えている世界は少しずつ違います。

だから、マニュアル通りに話すだけでは足りません。

この人は何に困っているのか。
どの言葉なら伝わるのか。
どう案内すれば安心してもらえるのか。
今この場で、何を優先すべきなのか。

そう考えながら動く必要があります。

これは、海外で生活していた時の感覚にかなり近いものでした。

異文化理解とは、外国語を話すことだけではありません。

相手の背景を想像すること。
自分の当たり前を一度疑うこと。
相手に届く形で伝えること。

フェス運営は、それを日本国内で実践する場所でもありました。

Aちゃんのエピソードも、僕にとってはそのひとつでした。

4歳の子どもが、スタッフのことを覚えていてくれる。
私服になっても気づいてくれる。
そして、自然に声をかけてくれる。

そこには、言葉以前の安心感や信頼感があったのだと思います。

海外生活や留学で学ぶ異文化理解も、結局はそこに近いのかもしれません。

相手をよく見る。
相手の世界に少し入ってみる。
自分とは違う背景を持つ人と、同じ空間を共有する。

フェスには、それが自然に起きる力があります。

海外フェスを語る前に、日本のフェス運営を伝えたかった

海外フェスには、海外フェスならではの自由さや開放感があります。

一方で、日本のフェスには、日本のフェスならではの丁寧さや安心感があります。

案内の細かさ。
安全への意識。
会場を清潔に保とうとする姿勢。
スタッフ同士の連携。
お客様を迷わせないための配慮。

これは、日本の強みだと思います。

そして、この強みは、海外とつながる時にも価値になるはずです。

日本のフェスが、海外から来た人にとっても楽しみやすい場所になる。
日本の音楽や地域文化に触れる入口になる。
日本人にとっても、海外の文化や価値観に触れるきっかけになる。

そう考えると、フェスは単なる国内イベントではありません。

文化と観光をつなぐ場所。
地域と世界をつなぐ場所。
日本語と英語が交差する場所。
海外生活や留学で得た視点を、社会に還元できる場所。

そんな可能性があると思います。

アラバキには、成熟したフェス文化がありました。
ミリオンロックには、発展途中だからこその熱量がありました。

どちらも違って、どちらも面白い。

そして、その両方を運営側から見られたことで、フェスというものへの見方が大きく変わりました。

フェスは、ただ音楽を聴く場所ではない。

文化が社会とつながる場所であり、
異なる人たちが同じ空間を共有する場所であり、
数多くの仕事によって支えられている場所です。

ゴミの分別も、導線づくりも、芝生を守る声かけも、救護も、撤去作業も、出展ブースの呼び込みも、すべてフェスを形づくる大切な仕事でした。

そして、その小さな仕事の中から、挨拶が生まれ、感謝が生まれ、笑顔が生まれ、人とのつながりが生まれることもある。

Aちゃんが「ペットボトルのお兄ちゃん」と声をかけてくれたことは、きっと僕の中でしばらく忘れられないと思います。

文化は、国境を越えます。

でも、その文化を人に届けるためには、必ず誰かの仕事がある。

その仕事の先に、人の笑顔があり、出会いがあり、記憶が残る。

僕にとってフェス運営は、海外生活や留学で学んだ異文化理解を、日本の現場で再確認する経験でもありました。

次回は、観客として、そして会場案内スタッフとして見てきた海外フェスやライブイベントの話にもつなげていきたいと思います。

※見出し画像は、mirecat(みれのスクラップ)さんの作品を使用させていただきました。素敵な画像をありがとうございます。

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