見出し画像

「何かあったら言ってね」で本音が出てこないのはなぜか?

0. はじめに


「何かあったら言ってね」と伝えてある。だから大丈夫。

本当にそうでしょうか。

本音というのは、何かが起きてから出てくるのでは遅くて、何も起きていないときに言えていないといけないものだと思っています。例えば、会社を辞めると決まった人との面談で初めて本音の不満が出てくる。これはわかりやすい一例です。

では、普段から本音が出てくるチームと、そうでないチームは、何が違うのか。

1. 信頼があっても、本音は出ない


「あの人のことは信頼している。でも、本音は言っていない」

矛盾しているようですが、実はよくあることです。関係は良好で、約束も守ってくれる。それでも、うまくいっていないことや本当の思い・感情を言えない。むしろ、信頼している相手だからこそ「失望させたくない」と思って言えなくなる、ということすらある気がします。

また逆もあります。それほど親しくない相手なのに、なぜか率直に話せる。外部から来たファシリテーターの前で、普段は黙っている人が急に核心を話す、というようなことです。

信頼が厚いほど本音が出る、という単純な話ではなさそうです。

2. 信頼は相手を見て決まる。本音は、自分がどうなるかで決まる。


信頼は、相手を見て決まります。この人は約束を守る。判断がぶれない。過去にその人がやってきたことを根拠に、その人の客観評価として積み上がります。

一方、本音を言うかどうかを決めているのは、相手の評価ではありません。これを言ったあと、自分がどうなるかのほうです。相手の評価に基づくのではなく、口に出した数秒後に自分がどう見られるかを考えているのです。

見ているものが違うので、信頼を積み上げればいずれ本音が出てくる、という一直線の話ではありません。

信頼を厚くすれば相談は来るようになります。ただ、相談が来ることと、そこで本当が話されることは別です。本音が見えない時に「まだ信頼されていないんだな」と考えると、打つ手を間違えます。

3. 人は、他の人が言ったときのことを見ている


では、本音を出させるために必要なことは何か。

決め手になるのは、例えばこういう問いへの答えです。

「自分がミスをしたと言ったら、この人はどう反応するか」 「見当違いかもしれない懸念を口にしたとき、自分の立場はどうなるか」

どちらも、相手がこれまで約束を守ってきたか、つまり相手を信頼しているかとは、別の話です。

ではその問いへの答えは何で作られるか?
それは他者の事例です。

ミスを早く報告した人が、評価で損をしていないか。反対意見を言った人が、そのあとどう扱われたか。悪い知らせを持ってきた人は、結局得をしたのか、損をしたのか。自分が言う前に、他の人が言ったときの反応がその人の潜在意識に刷り込まれています。

だとすると、打つ手は一つです。
誰かが相談してきたときに、どう受け止めるか。
一貫性を持って安心できる受け止めをしているか。

一度きつく返せば、それはその人だけの記憶にはなりません。その場にいた全員が見ています。あとで個別に「よく言ってくれた」と伝えても、それは誰にも見えていません。

いつ、誰が相談しても、「相談してよかった」と思ってもらえる。 それに尽きます。相手によって、機嫌によって、内容によって変わるなら、周りはそれも見ています。それではその周りにいた人が、いざ自分の番になったとき、本音を出していい理由がそこにはありません。

そんな人に「なんでも言っていいよ」「何かあったら言ってね」と言われても、本音は言わないわけです。

4. 何も起きていないときに、言えているか


何か問題が起きたあとや、誰かが辞めると決めたあとに本音が出てくるのは、自然なことだと思います。そのときにはもう、言っても失うものがほとんどないからです。

冒頭に書いた、外部のファシリテーターには話せてしまう、というのも同じです。あの人は自分を評価しないし、明日にはもういない。言っても何も失わない相手にだけ本音が出ているなら、それはその人の性格の話ではなく、ごく自然な当たり前のことです。

そういう場面でだけ本音が出ているなら、本質的な課題や致命的なリスクは、日常的には上がって来づらいということにも繋がります。
そして、そこから慌てても遅い。バタバタし始めて、そんな中で少しずつ本音が見えてきて、そんな状態で会話しても関係性も良くならない。

本当に出てきてほしいのは、まだ何も起きていない段階の「これ、進め方だけ一回確認していいですか?」のはずです。

おわりに


「信頼してるのに、本音を言ってくれない」

この違和感は、相手の問題というより、信頼と、本音が出ることを同じものとして扱っていることがそもそものズレの始まりです。

本音が出るかどうかを決めているのは、相談されたときにどう受け止めてきたか、それを一貫性を持って安心感を周囲に示せたか、です。

なお、この記事は理論としての整理です。今の自分の職場や仕事について何か言いたいわけではなく、研修やワークショップで扱っているテーマを、人の話を聞く側の立場からまとめ直したものになります。

具体的にどうすれば良いか?この記事でそのアクションまでは深く言及できませんでしたが、objeCtではその辺りも含めて、心理的安全性の高い組織づくりを実践する研修やワークショップを行っています。
気になった方は以下のサイトからお問い合わせください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集