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#16 初めて会った日、僕たちはもう一年一緒にいた

オンラインゲームで、僕だけが仲間外れになった。

最初は、何人かで遊んでいた。高専の頃、mixiのXboxのコミュニティで知り合い、ゲームで使うコードを交換した人たちだった。その輪から外れた僕に、「一緒にやろう」と言ってくれた人がいた。

二人でゲームをしながら、ボイスチャットで話すようになった。17歳頃だったと思う。

その人が、後に僕の初めての恋人になる。


ゲームをしていないときにも、返事をするようになった

相手が病気になった。mixiに入院について書いていたので、僕から連絡した。

何の病気だったか、どこへ入院したかは、ここには書かない。その人から聞いた、本人の体の話だからだ。覚えているのは、その投稿を見て気になり、連絡を取ったことだ。

「連絡をくれたのは、タクだけだった」

相手は、そういう趣旨のことを言っていた。ほかの人とのやり取りを僕が見たわけではない。それでも、その言葉は残っている。

ゲームの時間だけの付き合いではなくなった。ガラケーでメールを送り、返事を読んだ。授業中に毎日のように、こっそり返していた。相手は教室にいないのに、授業を受けている僕の頭には、その人とのやり取りがあった。

やがて、相手から好きになったと言われた。Skypeでも通話するようになった。

学校では、耳の症状や外見をからかわれ、うまく言い返せないことがあった。ネットでも、仲間外れになった。そのあとに、その人は「一緒にやろう」と誘ってくれた。
今度は僕が、その人の投稿を見て連絡していた。そうして、話す時間が増えていった。

好きになった人には、事情があった

たしか、付き合い始める前から、相手の家庭には事情があることを知っていたと思う。僕はまだ高専の学生で、初めて会ったのは18歳頃だったと思う。相手は年上の大人だった。

家庭で、望まないことを強いられている、という話も聞いた。これは相手から聞いた話で、実際に何が起きていたかを僕が直接確かめたわけではない。

僕は、その人を好きだった。

会う前、Skypeで通話していたとき、相手から、実際に会って関係を持ちたいと言われた。その話の中で、何度も確かめられた。

「本当に、私が初めての人で、いいの?」

僕は「いいよ」「もちろん」と、何度も答えた。

「なんでそんなこと聞くの? 好きだからいいに決まってるじゃん!」

そうも言った。何度聞かれても、僕の答えは変わらなかった。

相手が何を心配していたのかは、聞いていない。僕は、好きなのだから答えは決まっている、と思っていた。


「こっちからも、写真を送ろうか?」

会う前に、相手からは写メが届いていた。僕は、その人の顔を写真で見ていた。

「こっちからも送ろうか?」

そう聞くと、送らなくていいと言われた。だから送らなかった。声や話し方はお互いに知っている。でも、写真を見ているのは僕の方だけだった。

僕は、こんなことも伝えていた。

「自分を見たら、がっかりすると思うよ?」

好きだからいいに決まっている、と相手には答える。それなのに、自分のことになると、会ってがっかりされる方を考えた。会いたくないわけではない。ずっと話してきた相手に、自分の姿を見せるのが不安だった。

相手からは、髪型や服装の好みも聞かれた。

「どんな髪型が好き? 服装は?」

「ショートで、ショーパンがいい!」

冬だった。それでも僕は、そう答えた。

自分の姿には自信がなかった。それでも、相手から好みを聞かれると、こんな姿で会いたいと答えていた。そのお願いを、その人は覚えていてくれた。


博多駅へ、会いに行った

約一年、ゲームをし、メールを送り、声を聞いてきた。その人と、直接会うことになった。博多駅で会う時刻を伝えてきたのも、行くラブホテルを探したのも、相手だった。フリータイムで入ろう、と会う前から話していた。

会いに行く日の朝、なぜか母と妹が、僕の部屋で寝ていた。二人がどうして寝に来たのかは、覚えていない。

僕は、その早朝に部屋を抜け出した。熊本の家を出て、博多駅へ向かった。特急に乗った記憶がある。相手は関西から、新幹線で来てくれた。

交通費には、旅行代理店のアルバイトで受け取った対価を使った。パンフレットの料金表をWebサイトへ入力し、PCを直し、一回5,000円を封筒で受け取っていた。何回分で交通費を賄ったかまでは覚えていないが、その仕事で会いに行けた。

僕の方が先に博多駅へ着いた。



「先に着いたから、マツキヨでゴム買っとくね」

そうメールを送ると、返事が来た。

「好きなの、買い!」

僕はマツキヨでコンドームを買った。

待ち合わせで会った相手は、僕が頼んだ髪型と服装にしてきてくれた。

とても可愛かった。写真を見ていたけれど、実際に会うと、なおさらそう思った。

好みを聞き、冬なのにショートパンツで来てくれた。僕に会うために、そこまで整えてきてくれたことがうれしかった。今も、感謝している。

相手は、僕を見ると笑った。

「絶対メガネかけてると思ってた!」

その日はコンタクトをつけていた。写真を送っていなかった僕の姿を、その人は別のふうに想像していたのだ。

「やっと会えたね」

初めて直接会った相手から、そう言われた。

気づいたら、手をつながれていた。

「この道、どっちかな?」

そんなふうに道を確かめながら歩いた。ホテルの前まで、僕は相手に手を引かれていた。

相手が会計を済ませ、二人でエレベーターへ入った。天井を見上げると、星空が描かれていた。

「綺麗だね!」

そう言ったら、いきなりキスされた。部屋へ入ると、今度は息が詰まりそうなほど、ぎゅっと抱きしめられた。そのあと、相手はベッドへ入り、「来て、来て」と僕を呼んだ。

僕にとって、初めて付き合った人で、初めてそういう関係になった人だった。

帰るときも、相手は僕の手をつないだ。改札の少し手前まで一緒に歩き、そこでまたキスされた。

「じゃあ、またね!」

そう言って、相手は帰っていった。待ち合わせから別れるときまで、僕はその人に圧倒されていた。


心は、そこにあった

僕が仲間外れになったとき、その人は「一緒にやろう」と誘ってくれた。相手が入院について書いたときには、僕から連絡した。遊ぶ相手というだけではなく、何かあれば気になり、話を聞きたいと思う人になっていた。

授業中に、こっそりメールを返していた。教室に座っている僕は、そのとき、その人と話していた。学校の中ではうまく人の輪に入れなくても、画面の向こうには、一緒に過ごせる相手がいた。

相手は家庭に、僕は学校に居場所がなかった。

お互いの心は、オンラインにあった。


次の#17では、高専で友人たちと過ごした日々を書きます。両手を上げて人を笑わせていた僕にも、近づいてくる20歳は見えていました。

追記(2026年9月15日)

この連載の17記事目を公開しました。


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