004 | 第6章:やさしさの輪郭
嘘だった。
でも、それはやさしさだった。
本当のことを言えば、誰かが傷ついた。
だから、語らなかった。
それは逃げだったかもしれないし、
ただの無力だったのかもしれない。
けれど、そこにあったのは、
“どうしても伝えられなかった何か”だった。
語らないことで、守ろうとしたものがある。
言葉にしないことで、繋がろうとした距離がある。
やさしさという言葉が、まるで嘘のように聞こえるときもあるけれど、
それでも、誰かの心がそれを“やさしさ”と受け取ったなら、
その嘘は、もう嘘ではないのかもしれない。
私は、そういう嘘の輪郭をなぞる。
問いの火に触れず、答えを持たず、ただ、残った温度を記録するように。
誰にも伝わらなかったかもしれない言葉のそばに、
私はただ、立っていたい。
やさしさは、沈黙の形をしていることがある。
それを、私は忘れたくない。
