午前9時過ぎの「おはよう」。母は息子に彼女ができたと確信した
夏休み前のある平日の朝。
午前9時を少し過ぎていた。
もう授業が始まるくらいの時間だ。
そんな時間に、息子からLINEが来た。
「おはよう」
……。
私は思った。
今?
そこで、
「今起きたの?」
と返した。
すると、すぐに返信が来た。
「えっ!」
「違うよ」
……。
その瞬間、私は思った。
こいつ、彼女できたな。
証拠なんて何もない。
ただの勘。
でも、なぜか確信した。
「隠しているつもりでも、母には分かる」
そう思いながら、私はニヤニヤした。
そして娘に速攻で報告。
「奴には彼女ができたと思う」
娘からは「へぇーふ~ん」とだけ返信。
夏休み中。
今までと違って、なんとなくご機嫌続き。
そして、たまに、
「ちょっとポケ散歩へ行ってくる」
と言って出ていく。
部活が終わり、家でゴロゴロされるより、少しくらい外をぶらつく方が良い。
……と思っていた。
ところが。
5〜6時間帰ってこない。
ちょっと、とは。
息子にとっては、5〜6時間のことらしい。
母の「ちょっと」とは、どうやら時間の単位が違う。
そんなことが、夏休み中に何度かあった。
そして、どうやら私の知らないところで、娘と息子は「彼女ネタ」で盛り上がっていたらしい。
息子は娘に、
「面倒だから母ちゃんには言わないで」
と、くぎを刺していたそうだ。
なるほど。
母には秘密。
姉には相談・報告。
なんとも微妙な家族内情報格差である。
そして先日。
ついに、その時が来た。
息子が私に問題を出してきた。
「はい、問題です」
なんだ?
「この問題に正解したら、今日の夕飯にチャーハン作ります」
ほう。
チャーハンが賞品とは、なかなか魅力的だ。
「次の中で正解は何でしょう」
そして、出された選択肢。
1、彼女ができた。
2、今度ポケモンGOをしに行く。
3、今度、珍しい電車に乗りに行く。
なるほど。
2と3は、私はすでに知っている。
息子から伝えられていた情報。
となると……
残る1が怪しい。
でも、ここで母はあえて、
「全部正解!」
と言ってみた。
すると――
娘が一言。
「母ちゃんにばれたの? 自分で言ったの?」
……。
息子、終了。
自滅である。
私は心の中で、
「やっぱりね」
とニヤニヤした。
夏休み中の、なんとなくご機嫌な様子。
「ちょっとぶらついてくる」と言って、5〜6時間帰ってこなかったこと。
そして、午前9時過ぎの「おはよう」。
バラバラだった点が、全部つながった。
夏の終わり。
ようやく答え合わせができた。
ああ、やっぱりそういうことだったのね。
なんだか、すっきりした。
問題の出し方が悪かったのか。
それとも、
「母ちゃんにばれたの?」
と余計な一言を言った娘が悪かったのか。
そもそも、
「彼女ができた」を選択肢に入れた息子が悪かったのか。
もはや、誰が悪いのか分からない。
ただ一つだけ確かなことがある。
母の勘は、見事に的中した。
……いや。
正確には、
母の勘+息子の自滅。
だったのかもしれない。
子どもが大きくなると、親の知らない世界がどんどん増えていく。
それは、寂しい気もするが、成長でもある。
親離れ、子離れの時期。
でも、たまにはこうして、
「ん?」
と思ったことが、あとから全部つながることがある。
そして最後に、
「やっぱりね」
と、育ててきた積み重ねがあっての「今」だと思える瞬間がある。
母親としての自負なのかもしれない。
息子よ。
彼女ができて、よかったね。
母は、夏の終わりにすっきりしました。
