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【みかみか】第1章 日本企業におけるSDGsへの取組み

多摩経営工房SDGs研究会では、「SDGs+(ぷらす)」として、メンバーが日替わりでSDGsに関するさまざまなテーマを発信しています。
江戸時代の暮らしや日本文化の中には、現代になって「SDGs」と呼ばれる考え方につながる知恵や工夫が数多く息づいています。木曜日は、そんな身近な事例を通して、持続可能な社会や経営のヒントを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

📗第1章 日本企業におけるSDGsへの取組み

 近年、企業活動においてSDGsへの対応が急速に広がっています。SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる17の目標と169のターゲットは、社会課題の網羅性と具体性から、企業にとっても「自社の取組みを社会とどう接続させるか」を考えるための有効なフレームワークとなっています。

 特に大手企業においては、SDGsへの本格的な取組みが進んでいます。例えば、ある流通大手企業では、リサイクル素材の衣料品開発、途上国における雇用創出、難民支援などをSDGsと結びつけ、「服の力を、社会の力に。」という理念のもとにグローバルな活動を展開しています。一方、ある大手メーカーは、水素社会の実現に向けた技術開発や、再生可能エネルギーの導入を戦略的に進めており、企業ビジョンとSDGsが一体となっています。そして、その取組みをウェブサイトや統合報告書に明記することで、自社の社会的価値をアピールするケースも増えてきました。

 こうした取組みは、多くの専門人材と予算、長期視点を持つ経営体制があってこそ実現できるものであり、必ずしもすべての企業に求められる水準ではありません。だからと言って、「中小企業だからSDGsは難しい」ということでもありません。実際には、日々の業務の中にSDGsと強く親和性のある活動を取り入れている中小企業も少なくないのです。

 ある町工場では、製造過程で生じる端材を地域の福祉事業所に提供し、手工芸品として再活用することで障害者就労支援を行っています。また、ある飲食店では、食品ロス削減の一環として、余剰食材を子ども食堂に定期的に提供しています。これらの事例は、目標12「つくる責任 つかう責任」目標8「働きがいも経済成長も」に該当する、まさにSDGs実践の好例といえるでしょう。

 一方で、既存の清掃活動や環境美化にSDGsのロゴだけを付け足すような、実質的な取組みとは言い難いケースも散見されます。いわゆる「SDGsウォッシュ」です。これはSDGsへの取組みを形式的に見せているだけであり、信頼性を損なうばかりか、本来の取組みの価値をも見えにくくしてしまいます。

 もちろん、こうした事例の多くは意図的なものではなく、「とにかくSDGsを取り入れなければならない」「とりあえず形にしたい」という焦りや、「どのようにSDGsと結びつければよいかが分からない」という不安から生じているケースがほとんどです。

 中小企業では、人材・時間・資金といったリソースが限られており、大企業のようにSDGs取組みのための専門部署を設けることが難しいというのが実情です。そのため、「SDGsに取り組んでいるつもりなのに、表現が伝わらない」「やっていることをどう見せたらいいか分からない」という悩みも多く聞かれます。

 このような背景には、SDGsと類似概念である「CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」との混同も一因として挙げられます。CSVは、企業が経済的価値と社会的価値を同時に創出することを目的とした概念であり、SDGsの一部と重なりますが、「自社の利益と社会貢献の両立」に明確な焦点があります。一方、ESGは、投資家が企業の長期的な持続可能性を評価するための指標であり、非財務情報の開示やガバナンス体制の強化などが求められます。

 これらはSDGsと補完的な関係にありますが、目的や視点が異なります。中小企業では、これらの言葉を“横並びのバズワード”として捉えてしまい、自社にとっての優先課題が見えなくなってしまっている恐れがあります。

 SDGsはあくまで「未来志向の経営指針」であり、「すでに行っていることの価値を再確認し、整理し、見える化する」ことが第一歩です。大きな予算や専門部署がなくても、地域社会の中で実直に営まれている日々の活動こそが、持続可能な社会づくりに貢献しているのです。

 “地に足のついたSDGs”を実践できるのも中小企業の強みです。廃棄食材を地域の子ども食堂へ寄付している飲食店、国産材を使って地元の伝統工芸を守る木工所、シングルマザーを積極的に採用するサービス業の事例等は、地域の事業者同士の結びつきによって実現しているのだと考えられます。このように、小さくとも本質的な取組みを行っている事例は数多く存在します。
 重要なのは、SDGsのために新しいことを無理に始めることではなく、すでに行っている日々の取組みの意味を捉え直し、適切に発信していくことです。しかし、日本では「SDGsは意識しなくても自然にできている」と考える風潮が根強く、そこには価値の見逃しや発信不足といった“認識ギャップ”が存在しています。

次回7/16(木)は…
👉第2章 「自然にできている」という思い込み
次章では、こうした思い込みの背景にある文化的価値観や無意識のバイアスに注目し、SDGsとの接点とズレを探っていきます。


木曜日担当 みかみか(丸山 美佳)
中小企業診断士 / 防災士

【略歴】
ICTメーカーのマーケティング部門で販促企画、イベント運営、ユーザー会事務局などを担当。震災復興支援やBCP策定、社会貢献活動など、SDGsにつながる現場実践を積む。
独立後は多摩地域での事業者伴走支援、展示会・ビジネスマッチング支援、地域活性のための「まちゼミ」支援等に従事する一方、「SDGsと日本文化」をテーマに研究・論文執筆を進めている。
また、コミュニティラジオやインターネットラジオを通じて地域で活躍する人々の紹介や情報発信にも取り組み、地域コミュニティの可視化とネットワークづくりを行っている。

【所属】
一般社団法人東京都中小企業診断士協会 三多摩支部 地域支援部
一般社団法人多摩経営工房(多摩ラボ) SDGs研究会/製造業研究会

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