「歪ませるな、魂を尖らせろ」――90年代最凶の2曲が全ての初心者を覚醒させる理由
ギターを手にしたばかりの貴方が、今一番鳴らしたい音はどんな音だろうか?最新のマルチエフェクターを繋いで、ボタン一つで歪ませたきれいに整った音だろうか?
いや、きっと違うはずです。貴方が本当に憧れたのはもっと生々しく、聴いた瞬間にゾクゾクするような理屈抜きの「本物のロックの音」ではないだろうか?90年代の日本のロックシーンには、その「本物」を極限まで突き詰めた2つの怪物がいました。BLANKEY JET CITYとthee michelle gun elephantです。奇しくも同じ1997年に放たれた2大シングルを今こそ徹底解剖します。

テクニックの奴隷になるな!
――何故、貴方のカッティングは「ただの雑音」に聴こえるのか?
多くの初心者が、この2曲のイントロを聴いて「よし真似して弾いてみよう!」と挑戦します。しかしそこで最初の大きな壁にぶち当たります。アンプを激しく歪ませて、右手を目一杯振って弾いているのに何故か「ただのうるさい雑音」になってしまいます。ブランキーのような殺気もミッシェルのような圧倒的なスピード感も出ません。
ここにある最大の問題点は、「音を出すこと」ばかりに意識がいって、「音を止めること(ミュート)」を忘れているという点です。
余計な弦が鳴って音が濁ったり、コードの切れ際がダラダラと伸びたりしていると、あのシャープな狂気は絶対に生まれません。
歪みエフェクターのツマミを上げれば上げるほど音は誤魔化せるが、同時にピッキングの輪郭は消え失せて、迫力は死んでしまうのです。
このリフのカッコよさ――2曲のギター神髄を解剖する
ではこの2曲の「リフの神髄」はどこにあるのか?
それぞれのカッコよさをギタリストの視点から解説します。
BLANKEY JET CITY『ガソリンの揺れかた』1997
浅井健一(ベンジー)の鳴らすイントロのリフはお洒落なコード理論など嘲笑うかのような不穏で鋭利なカッティングから始まります。このリフの凄みは「ベース弦(低音)のルーズなドライブ感」と「高音弦の悲鳴のような鋭さ」が1本のギターの中で同居している点にあります。
狙った音だけを「ガツン」と前に出すイントロ一発で空気を変えてしまう説得力はまさにワン&オンリーです。



THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『ゲット・アップ・ルーシー』1997
アベフトシの放つリフは文字通り「マシンガン」です。
高速で刻まれるカッティングはメロディであると同時に完全な打楽器(パーカッション)と化しています。音が「極限まで硬質」であること――歪んでいるように聴こえて、実はアンプ本来のクリーン〜クランチに近い芯のある太い音が凄まじいアタックで鳴らされています。一音一音の粒立ちが恐ろしいほどハッキリしているからこそ、あの高速スピードでも音が潰れず、聴き手の鼓膜をダイレクトに殴りつけることができるのです。




エフェクターを脱ぎ捨てろ!
――右手と左手の「引き算」が極上のグルーヴを生む
この2曲をマスターする為の結論はシンプルです。「エフェクターの歪みに頼るのを止めて、右手のピッキングの強弱と、左手のミュートによる引き算を覚えること」これに尽きます。
アンプの歪みはクランチ(少し歪む程度)に抑えて、その分の右手で弦を「叩く」ように強く、鋭く振り抜きます。そして音を止めたい瞬間に左手の力をフッと抜いて、弦に触れた状態にして音を完全に遮断します。
『ガソリンの揺れかた』と『ゲット・アップ・ルーシー』は、リリースから30年近くが経とうとしている今尚、日本のロックの頂点に君臨し続けています。それは彼らが機材の進歩や流行のサウンドに一切目もくれず、ギター・ベース・ドラムという楽器そのものの生命力を限界まで引き出していたからです。
彼らのフレーズは決して複雑なジャズコードや超高速のタッピングではありません。むしろ初心者でも押さえられるシンプルな構造の中にロックの全てが詰まっています。
今すぐエフェクターのスイッチを切り、アンプのボリュームを上げて、右手を思い切り振り下ろすのです。彼らが鳴らしたあの奇跡の夜の残響は貴方の指先から、何度でも蘇るはずです。
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