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大家業は、時間と脳内メモリをお金で買っている

わたしは普段、フリーランスのUIデザイナーとして働きながら、小規模な不動産賃貸業を営んでいる。現在は戸建を4戸、購入やリフォーム、客付けなど、主に空き家再生のコミュニティと提携業者のサポートを受けながら運営してきた。

先日、ふと物件サイトで都内近郊の中古戸建を眺めていたら、500万円を切る物件がいくつも出てきた。それを見て「次はDIYや分離発注を駆使して、自分の手でやってみるのはどうか?」というアイデアが浮かんだ。

結論から言うと、思い直した。今回は、その思考の過程を書き留めておきたいと思う。外注か内製かという、デザイナーの仕事にも地続きのテーマだったからだ。

安く買える誘惑と、高値掴みのリスク

自力で仕入れてDIYで再生すれば、外注コストが浮く分だけ利回りは上がる。SNSや動画では、そうやって格安物件を蘇らせる大家さんがたくさん活躍していて、見ていると心が揺れる。

しかし、冷静に考えると、わたしが今それをやると高値掴みする確率がかなり高い。

コミュニティ経由で買う場合、物件の目利きはその道のプロが同行してくれるし、不動産業者から未公開物件が回ってくるルートもある。リフォームは提携業者に依頼する前提なので工事費の自由度は低いが、その代わり、地雷物件を掴む確率と、工事で失敗する確率が大きく下がる。

つまり、上乗せされているコストは単なる手数料ではなく、失敗確率を下げるための保険料というわけだ。目利きの経験値が浅いうちに保険を外すのは、利回りが上がるのではなく、リスクが上がっているに過ぎない。

外注は「時間と脳内メモリ」を買う行為

もうひとつ、コストと引き換えに買っているものがある。時間と、脳内メモリだ。

脳内メモリというのは、わたしがよく自分で使う言葉でもあるのだが、同時に気にかけていられる物事の容量のことだ。タブを開きすぎたブラウザが重くなるように、進行中の案件や心配事が増えるほど、一つひとつの処理は遅く、雑になっていく。

わたしの場合、本業のUIデザインの仕事があり、家庭では小さな子どももいる。この状態で物件の指値交渉、職人さんの手配、工程管理までを自分で抱えたら、確実にどれかが破綻する。だから今は、コストと引き換えに時間と脳内メモリを買っている構造になっている。

これは大家業に限った話ではない。わたしは税理士にも顧問をお願いしていて、正直「ちょっと高いのでは?」と思った時期もあったが、申告の心配事が頭から消えて本業に集中できるなら十分に元が取れると思い直した。デザインの現場でも、ロゴやイラストを外部のプロに任せるかどうかという判断は日常的にある。外注費の対価は成果物だけではなく、空いた時間と脳内メモリも含まれている。ここを見落とすと、内製がいつでも「安い」ように見えてしまう。

ずっと依存するつもりもない

とはいえ、外注に頼り切ることのリスクも、身をもって知っている。

以前、付き合いのあった業者さんが頼れなくなり、対応に苦労した経験がある。コミュニティも提携業者も、ずっとそこにいてくれる保証はない。外注先は自分の一部ではないのだ。

だから、依存度は少しずつ下げていくことを意識している。ただし、それは「今すぐ全部自分でやる」という意味ではない。今は本業が忙しいからコストで時間を買い、将来、戸建が増えて本業を減らせるようになったら、浮いた時間の分だけ自分の関与する割合を増やしていく。そういうフェーズ設計だ。

不動産賃貸業は、会社員と違って定年のない長い営みだ。だからこそ、その時々の自分の持ち時間に合わせて、外注と内製の配分を調整し続ければいい。焦って一気に内製へ振る必要はない、と自分に言い聞かせている。

おわりに

というわけで、500万円の中古戸建への衝動は、いったん棚に上げた。それでもDIY再生の動画を見るたびに心が揺れるので、また同じことを考え始めたら、この記事を読み返すことにする。

外注か内製かは、金額の比較だけでは決められない。自分の時間と脳内メモリが今いくらで、これからどう変わるのか。そこまで含めて考えると、同じ選択肢でもフェーズによって答えが変わる。大家業もデザインの仕事も、その点はまったく同じだと思う。

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