【毎週ショートショートnote】足沓七刀、踏切オーディション
全国で話題の『踏切オーディション』。
参加条件はただ一つ。
「人を立ち止まらせる才能があること」。
最終審査に残ったのは、有名作曲家、人気映像監督、そして靴職人の足沓七刀だった。
課題は、百人の通行人を最も長く踏切の前に留まらせること。
作曲家は美しい音楽を流した。
監督は巨大スクリーンに感動映像を映した。
多くの人が足を止めたが、遮断機が上がると去っていった。
最後に足沓七刀の番になった。
彼は踏切の脇に小さな椅子を置き、古びた靴を一足だけ並べた。
そして何もしなかった。
列車が通り過ぎ、遮断機が上がっても、人々はその靴を見つめていた。
「誰の靴だろう」
「どこへ行ったんだろう」
「帰ってくるのかな」
想像が次々に生まれた。
やがて一人の老人がぽつりと言った。
「昔、この辺を裸足で走り回っていたな」
すると別の人も思い出を語り始めた。
審査員長は満点を出した。
「音楽も映像も人の目を止める。しかし足沓七刀は、人の時間を止めたのだ」
【402文字】
田原にか様のこちら⬇️の企画に参加させていただきました。
