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【22/7】コロナ禍の記録①:ナナニジの歌詞の感情構造

要旨
22/7(ナナニジ)は、サルトル哲学と自己形成「実存は本質に先立つ」という哲学と重ね、ナナニジは自己形成を追い求める存在として楽曲世界を表現している。

一方、感情のネットワークに注目すると、ナナニジの楽曲は、絶望や孤独から始まり、葛藤・怒りを経て、希望や連帯感へ向かう感情の連鎖を描いている。

2019~2022年の楽曲に注目すると、 コロナ禍の時代性の社会状況を反映し、曲ごとに不安・閉塞感から収束と希望への移行という時代の空気を映し出している。


はじめに

デジタル声優アイドルグループ22/7(ナナニジ)は、哲学的には、自己形成を常に追い求める気持ちを歌う特異な世界観をもつアイドルである。一方で、社会的傾向を表す鏡とも呼べる楽曲を歌っていたものともいえるかもしれない。

今回はAIを使って歌詞データより「感情ネットワーク」を分析する。その対象とするのはコロナ禍(2019年~2022年)にあたるナナニジの楽曲となる「ムズイ」、「風は吹いてるか?」、「僕がもっているものなら」、「覚醒」、「曇り空の向こうは晴れている」の5曲となる。

分析方法

分析方法は、こちらの、徒然研究室 Tsurezure Labさんを参考にしたものとなる。

今回の分析ではLLMの一つ、Gemini(Googleの大規模言語モデル)に歌詞を読み込ませ、そこに込められた「感情」を抽出するという作業を曲ごとに行いました。

具体的には、LLMが楽曲ごとの歌詞の文脈を解釈し、「希望」「不安」「愛情」といった感情の種類と、その根拠となる歌詞の部分をリストアップします。次に、どの感情が一緒によく登場するか(共起関係)をデータ化して、感情同士の繋がりをネットワークとして可視化する、というステップを踏んでいます。
(以下略)

徒然研究室 Tsurezure Lab
「なぜ令和のアイドルは「自己肯定感」を歌うのか
:歌詞データ分析から探る“幸福”の構造転換」

対象曲となるコロナ禍に当たる時期となる2019年から2022年に発表されたシングル表題曲となる第一章の「ムズイ」、「風は吹いてるか?」、「僕がもっているものなら」、「覚醒」、第二章の「曇り空の向こうは晴れている」の5曲になる。


ナナニジの楽曲に潜む感情

負のスパイラルを描くナナニジ

ナナニジのコロナ禍にリリースしたシングル5曲の歌詞は、個人の内面の葛藤と成長を段階的に描いている。一貫して負の感情の淵から始まり、内的な葛藤と覚醒を経て、最終的に希望と連帯という外向きの行動へと向かう、壮大なストーリーを紡いでいる。

22/7「ムズイ」

希望への循環へ移行

5曲が描く全体的な感情のネットワークは、「ムズイ」から「僕がもっているものなら」は負のスパイラルにあり、「覚醒」から負の感情のループから脱却し、「曇り空の向こうは晴れている」により希望の循環へと移行するダイナミックなネットワークを描いている。

コロナ禍期間にあたる4曲には負の感情のループに苦しんだ様子が表され、コロナ禍収束を目前に発表された「曇り空の向こうは晴れている」にて希望への循環へと大きく移行を表していると言える。

ナナニジの感情のネットワーク

ナナニジの楽曲「ムズイ」、「風は吹いてるか?」、「僕がもっているものなら」、「覚醒」による感情のネットワークは、負のスパイラルによって構成されている。絶望・無力感から、葛藤・怒りを生み出し、希望・行動へと導こうとするが、それが叶わずあるいはそのやり方が分からず再び絶望・無力感へと戻ってしまうのである。

絶望・無力感のループ:不安、孤独、悲しみ、無力感といった感情が互いに影響し合い、抜け出すことのできない閉塞感を生み出ている。ナナニジは、このループの中に閉じ込められている。

葛藤・怒りの転換点:負のループが極まると、内面の葛藤や自己への怒りが生まれる。これは負の感情を破壊し、前向きなエネルギーへと変換する、ネットワーク全体の中心的な転換点となる。

希望・行動の連鎖:怒りや決意がトリガーとなり、情熱を持って行動に移る。この行動は、自分だけでなく他者にも向けられ、愛、連帯感、希望といった新たな感情を生み出している。

一方で、コロナ禍収束を目前にした「曇り空の向こうは晴れている」は、これまで抜けられていなかった負のスパイラルによる感情から抜け出し、希望への循環を伝える特徴的な歌詞となっている。

愛と希望の循環:最終的に、他者に希望を伝えるという行為は、その希望がさらに次の人へと繋がっていくという、ポジティブな感情の循環を生み出します。これにより、最初の絶望のループは断ち切られ、新たなストーリーが始まるのである。


若者の感情(負のスパイラル)から希望へ:楽曲にある感情

負のスパイラルにはまり抜け出せない若者たち

「ムズイ」:負のスパイラル

5thシングル「ムズイ」は、若い世代が抱える深刻な内面の葛藤や社会への違和感を表現しているに過ぎない歌詞と捉えている人もいるかもしれない。

「ムズイ」に登場する感情は、単独で存在するのではなく、複雑に絡み合っている。一方通行ではなく、互いに影響し合いながら負のスパイラルを形成していることを示している。

ナナニジは、不安孤独に苛まれ、それが悲しみ低い自己肯定感を引き起こし、最終的に絶望へと至っている。そして、一瞬の決意も、この負の感情の連鎖の中で揺らいでしまう様子が描かれている。この歌詞は、このような複雑な感情の絡み合いをリアルに表現していると言える。

「ムズイ」と似たように負のスパイラルによって感情が表現された曲に、カップリング曲「空のエメラルド」がある。


情熱と決意

6thシングル「風は吹いてるか?」は、社会や時代に対して強いメッセージを投げかける、非常に情熱的で、挑戦的な内容となる。全体を通して、受動的な態度から能動的な態度への変化が描かれている。憤り/義憤、不安、情熱/決意、連帯感、葛藤を表した曲となっている。憤り不安が行動の原動力となり、情熱決意へと結びついていくプロセスが見える。

ナナニジは、社会への憤りや未来への不安といったネガティブな感情を、情熱決意に変え、最終的に他者との連帯感を築こうとする能動的な行動へと昇華させていく過程を表現している。この歌詞は、現状への不満を単なる不満で終わらせず、行動へと繋げる強い意志を描いている。


出口が見えそうで見えない状況

7thシングル「僕がもっているものなら」は、他者の苦しみに対する深い共感と、それでも何もできないという無力感、そして最終的に見出される「愛」の感情を繊細に描いてる。無力感、悲しみ/苦悩、共感、愛情、自己否定を表した曲となっている。共感無力感悲しみ/苦悩を生み出し、その葛藤を経て、最終的にへと昇華していくプロセスがみえる。

この歌詞は、深い絶望無力感から始まり、内なる葛藤を経て、最終的に情熱決意に満ちた行動へと変わっていく過程を描いている。

この曲は、卒業した帆風千春のラストソングであった。ナナニジメンバーが帆風千春に持った気持ちを表現した歌詞ともなっているように聴きとることが出来る。

8thシングル「覚醒」の歌詞は、深い絶望無力感から始まり、内なる葛藤を経て、最終的に情熱決意に満ちた行動へと変わっていく過程を描いている。絶望無力感といったネガティブな感情が、怒りという強いエネルギーに変わり、それが決意高揚感を生み出すプロセスが描かれている。

ナナニジは、絶望から怒りというエネルギーを見出し、それによって立ち上がる決意を固め、最終的に未来への高揚感を感じるという、劇的な感情の変化を描写している。

この時期に、ナナニジからは4人のメンバーが去り6人のメンバーが残った。逆境を乗り越えるための心の強さと、そのプロセスで生まれる感情の繋がりを鮮やかに表現している。


希望を伝える存在への変革

新しいストーリーの始まり

「曇り空の向こうは晴れている」は、深い絶望孤独に沈んでいた若者が、葛藤を乗り越え、希望を見出し、それを他者に伝えようとする過程を描いている。

時間の経過と心の変化が重要なテーマとなる。絶望無力感孤独不安を引き起こし、その負の連鎖を乗り越えることで希望連帯感へとたどり着くプロセスが描かれている。

歌詞にある若者が深い絶望の中にいたが、希望の兆しを見つけることで、過去の自分と同じように苦しむ他者への連帯感を抱き、その希望を伝えたいと願うようになる、というストーリー性を帯びている。

この歌詞は、個人の苦悩が、他者への希望という力に変わっていく、感動的なプロセスを表現している。


結語として

ナナニジの楽曲は、単なるアイドルソングにとどまらず、若者の内面の葛藤や社会的な不安、そして希望への変化を鮮やかに描き出している。負のスパイラルに囚われた感情が葛藤と決意を経て、他者への希望として循環していく過程は、私たち自身が体験したコロナ禍の感情の変遷と重なり合う。ナナニジの歌詞は、絶望の中でも前を向く力、そして希望を共有する喜びを教えてくれる、感情豊かな物語である。

続きはこちらになります。


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