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「会いたい」って言えばよかっただけなのに

金曜の夕方、彼からLINEが来た。

「今週ちょっと疲れてる」

その一文を見て、最初に浮かんだのは、
会えないのかな。
だった。

先週も会っていない。
だから今週は会えると思って、
土曜日は予定を入れずにいた。

でも、そんなことは書かなかった。
「そっか。じゃあ今週は無理しないで、ゆっくり休んで」
送ったあと、自分でも少しだけ満足した。

ちゃんと相手のことを考えられた気がした。

疲れている人に「会いたい」なんて言って困らせない。
寂しいからって、相手に無理をさせない。
それでいいと思った。

十分もしないうちに、
「ありがとう。そうする」
と返ってきた。

その瞬間、なぜか傷ついた。

そうするんだ。
本当に休むんだ。

ほんの少しだけでも、
「でも会いたいな」
とか、
「少しなら会えるかも」
とか。

そういう言葉を、どこかで待っていた。

自分から「休んで」と言ったくせに。
彼がその通りにしただけなのに、急に寂しくなった。

そして、その寂しさを見せるのも嫌になった。

「了解😊」
それだけ返して、スマホを置いた。

さっきまで会いたかったのに、
今度は少し冷たくしたくなる。

なんなら、明日彼から連絡が来ても、
すぐ返したくない。

私ばっかり会いたかったみたいで悔しい。

ここまで来ると、
自分でも何に怒っているのか分からなくなる。

でも、本当はたぶん、彼に怒っていたわけじゃない。
自分で飲み込んだ「会いたい」が、
行き場をなくしていただけだった。

言わなかったくせに、気づいてほしかった。
消したくせに、拾ってほしかった。

彼は、私が土曜日を空けていたことを知らない。
先週会えなかったから、
今週は会いたいと思っていたことも知らない。

彼に届いていたのは、
「無理しないで。ゆっくり休んで」
だけだった。

なのに私は、
その言葉の裏側まで見つけてもらえなかったことに傷ついていた。

たぶんあの夜、本当に言いたかったのは、

「疲れてるんだね。私は会いたかったから少し残念。
でも今週は休みたい?」
そのくらいだった。

「会いたい」を持っている私と、
「今日は休みたい」を持っている彼。
どちらも消さずに置いておける。

彼が休みたいと言ったから、
私まで会いたくなかったことにしなくていい。

私が会いたいからといって、
彼に会うことを選ばせなくてもいい。

二人の気持ちが違うまま、そこにいていい。

『共振共鳴』で扱いたかったのも、
たぶんこういうところだ。

同じ気持ちになることじゃない。

片方がきれいに引いて、
平和を作ることでもない。

「私は会いたい」
「今日は休みたい」

まず、その二つがちゃんと見えるところから始まる。

好きな人だから、分かってあげたい。
でも、分かってあげるために自分を消さなくていい。

あの夜、私が言えなかった「会いたい」は、
わがままでも、重さでもなかった。
ただ、私の気持ちだった。

そこまで置けていたら、
「ありがとう。そうする」の見え方も、
少し違っていたのかもしれない。

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