信号機ぶどう味 #毎週ショートショートnote
田原にかさんのお題「信号機ぶどう味」今週もお借りしました。
ありがとうございます。
「信号機、ぶどう味?」
誠の声に、晴人は真剣な顔で頷いた。
「だからさ、赤はいちご、黄色はレモン。で、青は……あれ、なんだったかな」
誠は顔をしかめる。
「なんだよ。結局わかんないんじゃん」
「いや、青は何味でもいいんだよ。問題なのはさ、紫」
「紫?…… は?何言ってんの?」
信号機の色は、赤、黄色、青。
そんなの幼稚園の子だって知っている。
それなのに、晴人は言うのだ。「紫」って。
「だからさ、いるんだって。信号機の光を食べる虫。たまに黄色ばっかり食べちゃうやつがいて、そうすると真ん中がぶどう味になるんだって」
「へぇ」
晴人が熱心に言えば言うほど、誠は興味を失う。
「でも誰も見てないんだろ?じゃあ本当のことなんて、わかんないじゃん」
「それはさ、見たやつ、消えちゃうからなんだって」
「へぇ」
二人はいつもの交差点に着いていた。
「じゃあな、また月曜」
晴人が去ると、誠は信号機を見た。
まさかな。
その時、目の前を一匹の虫が飛んで行った。
「あ……紫」
後ろで、誰かが言った。
©️満月2026
