墨付けで20棟。今はもうやる大工がいない理由

これまで、墨付けで20棟の家を建ててきました。
墨付けとは、機械や工場に頼らず、大工が自分の目と手で木材一本一本に印をつけ、継ぎ手や仕口の位置を刻んでいく、昔ながらの工法です。今、多くの住宅はプレカット(工場で機械加工された木材を組み立てるだけの方式)で建てられています。
なぜ墨付けをやる大工が減ったのか
理由は単純で、コストです。墨付けは大工の技術と時間に依存するため、機械による自動化(プレカット)にコストで勝てません。同じ家を建てるなら、プレカットの方が早く、安く仕上がります。効率だけを見れば、墨付けは既に「負けた技術」です。
それでも墨付けにこだわる意味

木は1本ごとに癖があります。プレカットは規格化された前提で加工しますが、墨付けは木を見て、その木の癖に合わせて刻みます。効率では測れない部分に、この技術の価値があると思っています。
20棟、それぞれ違う木と向き合ってきました。この経験は、今の修理・診断の仕事にもそのまま活きています。木を「見る」感覚は、墨付けをやってきた人間とそうでない人間で、根本的に違うと思っています。
一言では語り尽くせないくらいの時間と汗を、この20棟にかけてきました。改めて写真を見返すと、自分でもよくやってきたなと思います。
コストでは機械に勝てません。それでも、こうして積み上げてきた技術と経験が、効率化の流れの中で静かに消えていこうとしているのは事実です。だからこそ、記録として残しておきたいと思っています。
もしこの技術に興味がある方がいれば、弟子入りのような形はお引き受けできませんが、質問や相談であればコメントやDMで答えます。
