母にもらったバジルを、昔の鉢に植えました
🏡暮らしを整える #2
数ヶ月前に実家へ帰ったとき、母から突然、
「バジル、持っていく?」
と言われました。
「え? バジル? どこにあるの?」
正直、ちょっと驚きました。
実家へ帰ると、母とはよく家庭菜園の話をします。
「今年はきゅうりがよく採れるよ」
「もう少ししたら、おくらも採れるようになるよ」
「うちで採れたピーマン、持っていく?」
そんな会話はいつものことです。
でも、バジルはちょっと意外でした。母は普段、ハーブを使った料理をする人ではありません。バジルを買っているところも、これまで一度も見たことがありませんでした。
母と一緒に庭へ出て、「ここだよ」と案内されたのは庭の隅。家から眺めているだけでは見えない場所でした。
そこには、10〜15cmほどに育ったバジルがたくさん生えていました。
母はその中から10本ほどを、スコップで無造作にごそっと取り、空いた四角いイチゴパックへ土ごと詰めてくれました。
20年以上前の鉢に、バジルを植えた
持ち帰った10本ほどの苗から、しっかりしたものを6本選びました。苗同士の間隔を空けたほうがいいことは、昔の記憶でなんとなく覚えていました。
「この鉢なら6本くらいかな」
そう判断して植えたのは、ベランダの隅にずっと置いてあった、大きな丸い素焼きの鉢です。
同じ鉢がもう一つあります。30代のころ、片方にはバジル、もう片方にはローズマリーとイタリアンパセリを植えていました。ローズマリーは、実家から今の住まいへ引っ越したとき、市から移住祝いとしてもらったものです。
この鉢は、当時ホームセンターで見つけて一目惚れして買ったものです。模様も何もない、本当に素朴な丸い鉢なのですが、形も大きさも素焼きの色合いも、全部が私の好みでした。
だからでしょうね。同じものを2鉢も買ってきました。けっこう重いのに。

ハーブを育てなくなってからも、20年以上ベランダの隅に2つ並んだままでした。
母からもらったバジルを、この鉢に植えました。
イタリア料理に夢中だった
私は30代のころ、イタリア料理にかなりハマっていました。
きっかけは、当時見ていたドラマ「女神の恋」です。ドラマの中でワインと料理がよく出てきて、
「なんか、いいなあ」
と思ったのがはじまりでした。
ちょっと真似して作ってみたら、これがおいしい。
「作っていて楽しい! 食べても楽しい!」
そこから、私の凝り性が発動しました。イタリア料理の本を5冊買い、週3回以上は作っていた時期もあります。ミラノ風の豚カツレツやニョッキ、カプレーゼなどを作っては、家でワインを楽しんでいました。
イカ墨や塊のパルミジャーノを買うために、わざわざ街まで出かけていたほどです。

当時、バジルはソースを作るために鉢いっぱいに育てていました。パスタだけでなく、魚のムニエルのソースにも使っていました。
ピザ生地にバジルソースを塗り、モッツァレラチーズだけをのせて焼くピザも好きでした。
「これがシンプルでワインにとても合うんです」
いつの間にか、ハーブを育てなくなった
その後、仕事が忙しくなりました。
仕事のパートナーとの関係も、かなりストレスになっていた時期でした。
休みの日でも、職場の前の道を通るのが嫌になるくらいでした。
まっすぐ家に帰れず、外で飲んで発散することも増えていきました。
家で料理を楽しむ時間は自然と減り、ハーブを育てる余裕もなくなっていきました。
「もうやめよう」
と決めたわけではありません。気づいたら、やらなくなっていた、という感じです。
毎日の水やりが始まりました
そして今年、母からもらった6本のバジルは、ベランダで順調に育っています。
水やりは朝と、仕事から帰ってきてからの1日2回。帰宅後に水をやるときには、
「暑かったね~。お水あげるね~。」
と、気づけば話しかけていることもあります。
なんだか健気なんですよね。
毎日成長していく姿を見るのが、ちょっとした楽しみになっています。
待ちきれなくて、採りすぎました
育て始めてすぐに、松の実とソース用のオリーブオイル、塊のパルミジャーノ・レッジャーノを買っていました。
「作る気満々です」
バジルソースを早く作りたくて、
「もう、このくらいなら収穫してもいいかな」
とボウルを片手にベランダへいそいそと向かいました。
ところが採ってみると、ソースにするには少し量が足りません。仕方なく、小さめの葉もさらに採りました。
結果、採りすぎました。
その後、次の葉が育つまでかなり待つことになりました。
「ごめんよ~、バジル君!」
2回目は、必要な葉の量が何となく分かっていたので、今度は我慢して育つのを待ちました。 それでも、サラダ用に少しだけちぎって使っていました。
久しぶりに作ったバジルソース
バジルソースは、30代のころ最初に買ったイタリア料理本に載っていたレシピです。
細かい分量は忘れていましたが、材料は覚えています。バジル、松の実、オリーブオイル、パルミジャーノ・レッジャーノ、塩。
フードプロセッサーにバジルをぱんぱんに入れ、オリーブオイルを加えて攪拌します。フライパンで炒った松の実も加え、さらに攪拌。そこへ一生懸命削ったパルミジャーノと塩を混ぜて完成です。
2週間くらいで使い切る分は小瓶に、残りは小分けにして冷凍しました。
最初に作ったのは、ジェノベーゼパスタでした。具材は入れません。茹でたてのパスタとソースをボウルの中でしっかり絡め、皿に盛って追いパルミジャーノと黒こしょう、仕上げにバジルをのせます。
食べた瞬間、
「これこれ。この味。」

20年以上前に食べていた味と、変わっていませんでした。
母とバジル
母のバジルは、もともと近所の肉屋の前に生えていたものです。
肉屋の前は駐車場になっていますが、歩道には街路樹があります。その空いたところに、なぜかバジルが生えていました。
母はそれがバジルだと分かったらしく、花が終わって種ができたころに採ってきて、庭に蒔きました。
すると、たくさん芽が出たそうです。友人にも苗を分け、私にも、
「たくさん持っていきなよ。お母さん食べないから」
えっ? ……じゃあ、なぜ植えた?
今では実家のバジルも、花が咲くほど大きく育っています。母によると、そこからまた種が採れるそうです。

でも母は、いまだに自分で育てたバジルを一度も食べていません。
「やっぱりかあ~」
来年もきっと
母は、おそらく来年もバジルを育てます。
また「苗をあげるから持って行って」と言われる気がします。いや、間違いなく言うと思います。そういう人ですから。
そうなったら、また育てますよ。毎日少しずつ成長していくのを見るのは、けっこう楽しいですからね。
