テレビCMでお馴染みの米国人俳優、トミー・リー・ジョーンズ氏(以下・敬称略)。すでに20年ちかくCMに出続けているが、どういう訳だろうか?
#トミーリージョーンズ
#サントリーCM
海外の俳優を日本のCMに起用した先駆け、それは何と言ってもアラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンにあるようだ。二人とも、1970年代から1980年代にかけて出演している。
アラン・ドロンは、レナウンの紳士服ブランド「ダーバン(D’URBAN)」のCM。一方、ブロンソンは、「丹頂株式会社」という会社の「マンダム」だった。(その後、社名を「マンダム」に変更)
調べてみると、キッカケは三船敏郎だという。映画『レッド・サン』(1971)で、三船敏郎とチャールズ・ブロンソン、アラン・ドロンという世界的スターが共演していたのだ。1870年ころを描いた西部劇だったが、侍とガンマンが手を組んで困難に対処するというユニークな物語だった。
この出演がもととなり、三船が、CMの仲介をしたようだ。今でも一流俳優は、CMには出ない。だが世界的な俳優である三船敏郎が「日本では、当たり前に一流の役者がCMに出ている」と伝え、口説いたという。これらのCM、日本では話題となり両会社の販売に貢献することになった。
ブロンソンとアラン・ドロン、それぞれ国を代表するような俳優。脇役の出演がほとんどのトミー・リー・ジョーンズ。どのような理由で、サントリーのCMに出ることになったのか?そこを掘り下げてみようと思う。
*コワモテ俳優のリー・ジョーンズ!
トミー・リー・ジョーンズは、その風貌からまさに「コワモテ俳優」という言葉が似合う存在だ。鋭い目つき、深い皺の刻まれた顔、そして低く重厚な声は、観客につよい印象をのこす。演技は派手さよりも確かな存在感に支えられており、画面に登場するだけで場の空気を引き締める力を持っているといえるだろう。そのため、ハリウッドでは「脇役の名手」と評価されることが多いようだ。
実際、彼のキャリアを振りかえると、主演よりも助演としての活躍が目立つ。『逃亡者』では冷徹な連邦保安官を演じ、ハリソン・フォードを追いつめる役柄でアカデミー賞助演男優賞を獲得している。映画『メン・イン・ブラック』ではウィル・スミスの相棒として、無表情で皮肉を効かせる演技が作品のユーモアをくわえた。『ノーカントリー』では老保安官として、暴力に覆われた世界に静かな諦念を漂わせている。いずれも主演俳優を引き立てつつ、作品全体に重厚さを与える役割を果たしているのだ。
しかし「脇役」と言っても、彼の場合は単なる「添え物」などではない。むしろ彼がいることで物語のリアリティが増し、主演の輝きが際立つのだ。ジョーンズは「主役を食ってしまう脇役」と評されることもあり、その存在感は作品の質を左右するほど強いものだという。主演作ももちろんあるのだが、彼の真骨頂はやはり助演としての圧倒的な安定感にあると言えるだろう。
*映画では刑事役がかなり多い!
トミー・リー・ジョーンズは、刑事や保安官など「法の番人」役を演じることが非常に多く、そのイメージが映画界では強く定着しているといえるようだ。
代表作のひとつ『逃亡者』(1993)では、冷徹かつ執念ふかい連邦保安官サミュエル・ジェラードを演じ、アカデミー賞助演男優賞を獲得した。その後のスピンオフ作品『追跡者』(1998)でも同じ役柄で主演を務め、逃亡者を追い詰める姿を描いている。この役は彼のキャリアを象徴する存在となり、「トミー・リー・ジョーンズ=刑事・保安官」という印象を決定づけたようだ。
また、『ノーカントリー』(2007)では老保安官として、暴力に覆われた世界に静かな諦念を漂わせる演技を披露した。『メン・イン・ブラック』シリーズでは、地球を守る秘密組織の捜査官エージェントKを演じ、無表情で皮肉を効かせる演技がユーモラスでありながら「職務に忠実な男」というイメージをさらに強めている。さらに『U.S. Marshals』や『ローリング・サンダー』などでも、法執行官や軍人に近い役柄を演じており、彼の「コワモテ」な風貌と重厚な声がこうした役に非常に適しているようだ。
もちろん悪役や一般人の役も演じている。『沈黙の戦艦』ではテロリスト役、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』では人間味あふれる主人公を演じるなど、幅広い役柄をこなしてはいるようだ。しかし観客の記憶に強く残るのは、やはり「刑事」「保安官」「捜査官」といった役柄。これは彼の演技スタイルが「冷静沈着」「職務に忠実」「威厳ある存在感」といった要素に支えられているためで、結果として「法の番人役」こそが彼の代名詞となったのではないか。
*CMに採用された理由とは?
トミー・リー・ジョーンズの日本でのCM。その人気のたかい理由は、映画で見せる「コワモテ刑事」のイメージと、CMで演じる「宇宙人ジョーンズ」のユーモラスなギャップにあったといえる。映画では冷徹で職務に忠実な保安官や捜査官を演じることが多く、観客に「絶対に笑わない男」という印象を残してきた。しかし、サントリー「BOSS」のCMでは、真顔のまま日本社会に溶けこみ、時として不器用でおかしな行動をとるのだ。例えば、工事現場で汗を流したり、コンビニでアルバイトをしたり、さらにはアイドルのライブに紛れ込んだりと、普段の彼からは想像できないシチュエーションが次々と展開されていく。
この「真面目な顔でおバカなことをする」という構図こそが笑いを誘う最大のポイント。観客は彼の厳しい表情を知っているからこそ、そのギャップに強烈なユーモアを感じるわけだ。しかも、彼自身が決してコミカルに振る舞おうとせず、あくまで真剣に「宇宙人としての調査」を続けている姿が、逆に滑稽さを際立たせている。これは日本の笑いの文脈でよく見られる「ボケとツッコミ」の構造にちかく、ジョーンズは常に「ボケ役」を真顔で演じているということなのだ。
つまり、映画での「刑事役の似合う俳優」というイメージがあるからこそ、CMでの「真顔でおバカ」な演技が際立ち、視聴者の心をつかんでいるといえるのではないか。オファーしたのは、広告代理店の電通のようだが、その効果を考えてのことと思える。そして彼の存在が、日本の広告文化において「ギャップの笑い」を体現する象徴的な存在になったといえるのではないだろうか。
*まとめ
ハリウッド俳優のトミー・リー・ジョーンズ。アカデミー助演男優賞を受賞している生粋のアクターである。その彼が、何ともユーモラスな日本のCMに出続けているというのは不思議なような気がする。
これは私の推測なのだが、とにかく極めつけ人柄が良いのではないか!そう思うのだ。ジョーンズ自身が日本文化に深い関心を持っていることも好意的に受け止められているという。歌舞伎や能、茶道、浮世絵などに精通し、日本を「第二の故郷」と語るほどの愛着を示していることが知られている。その誠実な姿勢が、「日本に寄り添う存在」として受け入れられる要因になっているのではないかと推察できる。
特筆すべきは、2011年の東日本大震災の際に、ジョーンズ氏が復興支援のためのCMに「ノーギャラ」で出演したという事実だ。これは彼の誠実さと日本への思いを示すエピソードとして広く語られている。通常ならば巨額の報酬が発生する場面で、無償で協力したという点は、たんなる契約俳優ではなく「日本を人一倍大切におもう存在」としての価値をみいだしたようにも見えるのだ。
