【Tシャツの選び方🔰】"1年で首が伸びる"を避ける、店頭でできる4つのチェック
3枚1,000円のTシャツ、正直これまで何枚買ってきただろう。
夏の終わりに気づいたら首元がだらしなく伸びて、脇の縫い目がねじれて、結局クローゼットの奥で「部屋着」に格下げになる。そしてまた同じような3枚セットを買いに行く。
このループ、実は5年続けると、1枚3,000円のTシャツを5年着倒すより高くついている可能性がある、という話をしたい。
自分も学生の頃からずっとこのループにいた。安いTシャツを大量に買っては1シーズンでダメにする、を何年も繰り返した。当時は「Tシャツなんてどれも綿100%でしょ、同じ生地でしょ」と本気で思っていた。正直、今でも畳んだ状態でぱっと見ただけでは分からない。触って初めて分かることが多い。
でも業界の内側から見ると、「綿100%」という表記の裏に、実は結構な差が隠れているのが分かる。

まず生地そのものの話から。Tシャツの生地はほぼ全部「天竺編み」というニット組織でできている。この天竺、編み目の詰まり方(度目・どめ)で別物になる。ゆるく編んだ天竺は軽くて涼しいけれど型崩れしやすい。逆に密に編んだ「度詰め」の天竺は、ハリがあって透けにくく、型崩れもしにくい。同じ「綿100%」表記でも、度目の設定だけでこれだけ差が出る。タグにはまず書いていない情報だ。
次に、糸そのものにも差がある。Tシャツに使う綿糸は大きく「カード糸」と「コーマ糸」に分かれる。コーマ糸は「コーミング」という工程で、短い繊維や不純物を丁寧に梳き取ってから紡ぐ糸で、この工程でだいたい2割前後の繊維を捨てる、と言われている(概算です)。手間もロスも増える分、糸の表面がなめらかになり、毛羽立ちにくく、光沢が出る。カード糸はこの工程を省くので当然安いが、毛羽立ちやすく、洗濯を重ねるとどんどんケバケバしてくる。あのヨレた感じの正体はだいたいこれだ。
概算だが、業界で言われる原価感覚だと、カード糸・粗い度目の天竺と、コーマ糸・度詰めの天竺とでは、生地代だけで見て倍近く差が出る、と言われている(あくまで一般的な概算です)。ただ小売価格は3倍から5倍開くことも珍しくない。つまり「高いTシャツ=ぼったくり」ではなく、生地代の差はちゃんとあるけれど、価格差ほど極端ではない、というのが実際のところに近い。
ここまでが構造の話。ここからが今日、店頭で使える話。
次にTシャツを買うとき、レジに向かう前に30秒だけ、これをやってみてほしい。
1つ目。身頃の生地を指でつまんで軽く引っ張り、離したときの戻りを見る。すぐにピンと戻るものは度目が詰まっていて型崩れしにくい。戻りが遅い、あるいはシワが残るものは度目が粗く、着ているうちにたるみやすい。
2つ目。首元のリブを軽く指で引っ張ってみる。伸ばした後にすぐ元の形に戻るなら縮率設計がしっかりしている証拠。伸びたままなかなか戻らないものは、早ければ数回の洗濯で「首だけ伸びたTシャツ」になる可能性が高い。
3つ目。生地を軽く光にかざしてみる。毛羽立ちが少なく、うっすら光沢があるものはコーマ糸を使っている可能性が高い。逆に毛羽が目立ってマットな質感のものはカード糸寄りと考えていい。
4つ目。脇の縫い目を見る。筒状に編んで作る「丸胴編み」のTシャツは脇に縫い目がなく、ヨレにくい。脇にはっきり縫い目があるものは生地を裁断して縫い合わせて作っているタイプで、量産のコストは下げやすいが、その分ねじれやすい傾向がある。絶対条件ではないが、判断材料の一つにはなる。

この30秒のチェックで見分けられるのは、要は「1年でヨレて処分することになる1,000円のTシャツ」と「5年着られる3,000円のTシャツ」の違いだ。単純計算すると、1,000円を毎年買い替えた場合の5年間の総額と、3,000円を5年着た場合の総額はそう変わらない。むしろ差が出るのは、頻繁に買い替える手間と、着るたびに「ちょっとヨレてるな」と感じながら過ごす時間の方だと思う。ここは正直、数字より体感の話になる。
買う場所の話もしておくと、業界標準のOEM生地を使っているようなブランドや、無地Tシャツを専門に作っているメーカー系の商品は、この度目・コーマ糸の情報を仕様として明記していることが多い。逆に「無地Tシャツ」とだけ書いてあって詳細な仕様が一切ない激安品は、上に書いた4つのチェックをその場で自分の指と目でやるしかない。
もう一つ、買った後のケアの話もしておきたい。実はどんなに良い生地でも、洗濯ネットに入れずに他の服と一緒に洗濯機でガシガシ洗うと、摩擦で毛羽立ちが進んで、コーマ糸の良さもすぐ消える。逆に安いカード糸のTシャツでも、裏返して洗濯ネットに入れ、乾燥機を使わずに干すだけで、寿命は体感で1.5倍くらい変わる。生地の見極めと同じくらい、洗い方も効いてくる。
正直、Tシャツなんて消耗品だと思って生きてきたし、今もその考えは変わっていない。ただ「同じ消耗品でも、1年で消耗するものと5年かけて消耗するものがある」と分かってからは、Tシャツを買うときに一瞬だけ手を止めるようになった。
以前書いた、綿の糸の話(番手とコーマ工程で生地代が6倍変わるという記事)と、今日の話は根っこが同じ構造をしている。糸の質、編み・織りの密度、そして縫製。この3つの掛け算で服の値段はできている。Tシャツはその中で一番シンプルに、自分の指で確かめられるアイテムだと思う。
今日から、Tシャツを「安いから」で選ぶのは卒業。生地を触って判断できるようになったはずだ。
このアカウントをこのまま読み続けると、半年後には値札を見ただけで「なぜこの値段なのか」がだいたい説明できるようになる。そうなると、服選びで高い授業料を払うことがぐっと減る。
次はスウェットやパーカーの「裏毛」の話をする予定。表側の天竺と裏側のパイル、あの厚みの正体もまた別の技術の話になる。明日も昼と夜に1本ずつ更新するので、よければフォローしておいてほしい。
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いただいたチップは、実際に生地を買って、切って、洗って検証する費用に使います。次の記事が、ちょっとだけ濃くなります。