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テレワークゆり物語 (143)市場も無ければニーズもない

「テレワークは、市場も無ければニーズもない。
 田澤さん、正直、その会社は厳しいと思うよ。」

ビジネスコンサルタントの男性から、こうアドバイスされたのは、日本初のテレワーク専門のコンサルティング会社を立ち上げる直前、2008年のこと。
「テレワークは夢物語」と言った銀行マンと違って、私のことを心配しての言葉だった。

これに対し私は「いいえ、テレワークには、市場もニーズもあります!」
とは反論できなかった。

2008年当時、国が目標値を定めてさまざまな施策を実施しても、企業は「うちには関係ない」状態。
テレワークに関心のある企業は、ほとんどごくごく一部。

つまり、市場が無かった。

ましてやお金を出してまで、テレワーク導入のコンサルティングを受けたいという企業は、皆無だった。

つまり、ニーズが無かった。

ビジネスとして成り立たないであろう会社を、私は作ろうとしていたのだ。

残念ながら、彼のアドバイスは正しかった。私が2008年に立ち上げた「株式会社テレワークマネジメント」は、資金が無い。仕事がない。儲けがない。社員を雇えない。・・・苦労の連続だった。

今から振り返ると、当然といえば当然。
当時のテレワーク、特に「在宅勤務」は、会社の福利厚生のひとつに過ぎなかった。子育て中、あるいは親の介護中の女性社員のための制度。自宅では、ちゃんと仕事ができないから、そんな働き方を認める会社は、女性にやさしい会社だ。という、わけのわからない理論がまかり通っていた。

テレワークは「特別休暇」や「短時間勤務」など、『仕事をしないための制度』ではなく、『仕事をするための制度』です。福利厚生ではありません。

・・・と、私がいくら主張しても、何も変わらず、年月が過ぎていった。

しかし、三女に「気持ち悪いほど前向き」と言われる私は、いつかビジネスになると信じて疑わなかった。その理由は明確だ。

『テレワークの導入は簡単ではない。
 しかし、適切に実施できれば、日本のさまざまな課題を解決できる』

1998年に立ち上げた「株式会社 ワイズスタッフ」で、離れていてもチームで仕事をすることに10年以上試行錯誤を重ねてきた私は、そう確信していた。

(市場もニーズも)
「無いのなら 作ってみせよう ホトトギス」

無料の押しかけ講演を何度も繰り返した。しかし企業からのコンサル依頼はほとんどなく、国や自治体の仕事を細々と受託し、会社は赤字を繰り返すうちに、10年という月日が流れていった。

進まない日本のテレワーク。流れを変えるきっかけは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックだった。開催中の『交通緩和』を目的に、国や大手企業が、大きく動き始めたのだ。

しかし、その東京オリンピック・パラリンピックは、新型コロナウイルスの蔓延で延期されることになる。そして、テレワークは、新型コロナウイルスの『感染防止』として、多くの人に知るところとなり、多くの企業が実施することになる。

コロナ禍の収束が見えてきた今、
「田澤さん、がんばってきた甲斐があったね」
「田澤さん、テレワークが広がってよかったね」
「田澤さんのおかげだよ」
とまで言ってくださる人がいる。

いや、違う。
今の日本のテレワークの状況は、私のおかげでも何でもない。
また、多くが、私が目指していた「テレワーク」でもない。

急激に広がった『市場』や『ニーズ』は、本物ではないのではないか。
その証拠に、
多くの企業が「出社」に戻っているではないか。

今こそ、本物の『市場』づくり、本物の『ニーズ』喚起が必要ではないか。
ふと、昔のアニメの決め台詞が浮かんだ。

キャシャーンがやらねば誰がやる!?』

やらなきゃ。

※冒頭の写真は、2023年2月の北海道知床の流氷の海。レッドオーシャンでも、ブルーオーシャンでもない。テレワークは今、まだらオーシャンかもしれない。



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