動物がネットでつながる時代へ──オウムや犬に「選択」と「社会性」を与える革新的研究
登壇者プロフィール:イリヤナ・ハースキー=ダグラス氏
動物とコンピューターのインタラクション(ACI)研究の第一人者、イリヤナ・ハースキー=ダグラス氏。彼女がこの革新的な研究を始めたきっかけは、コンピューターサイエンスの修士課程で学んでいた21歳の時に愛犬ザックを迎えたことでした。ArduinoやRaspberry Piといった低価格のコンピューター技術に熱中していた彼女が問うたのは、「もし動物にインターネットの使用を許可したらどうなるか?」という斬新な問いです。
私たち人間はスマートフォンで簡単に遠く離れた人とビデオ通話できますが、動物たちにも同じことができるのではないか──。この発想から、彼女のユニークな研究は展開されています。
動物の生活に「コントロール」を取り戻す
現代において、多くの人がペットの位置追跡デバイスなどのテクノロジーを利用しています。しかし、実は私たち人間が動物の生活の多くをコントロールしているのが現状です。何を食べるか、どこへ行くか、誰と会うかまで、すべて人間が決めています。
ハースキー=ダグラス氏の研究は、この構図をひっくり返すことを目指しています。テクノロジーを利用して、動物たちに自分の生活、特に社会生活における「選択」と「コントロール」を与える──これが彼女の研究の核心です。
犬とサルが示した驚きの行動
彼女が最初にこのアイデアを思いついたのは、愛犬ザックとソファに座っていた時でした。「もしザックも一緒にテレビを操作できたら?」
彼女はすぐに、犬が近づくと異なる動画を再生するスクリーンデバイスを構築しました。その結果、このデバイスを与えられたすべての犬が、何ら訓練なしにそれを利用したのです。この事実は、何らかのレベルの「豊かさ」や理解を動物が持っていることを示唆しています。
その後、研究は動物園のシロガオサキという小さなサルへと拡張されました。サルたちには、入ると異なるオーディオやビデオが再生されるトンネルデバイスが与えられました。サルたちが好んだのは、水中のバラクーダやクラゲ、そして驚くことに非常にノイズの多い交通騒音でした。
重要なのは、動物が何を選んだかだけでなく、それが彼らに与える影響です。研究の結果、サルたちの引っ掻き行動(ストレス行動)が有意に減少したことが判明しました。テクノロジーが動物のウェルビーイングを改善する可能性が示されたのです。
革命的な試み──動物同士のビデオ通話
次に彼女が注目したのは、動物の「社会生活」でした。野生ではオウムは何百もの群れで飛び、犬はパックで行動します。しかし飼育下では、コストやスペースの制約から、多くの動物が孤立して暮らしています。
彼女はビデオ通話を使って、動物同士をつなぐ実験を始めました。
まず愛犬ザックで実験を開始。ザックがボール状のデバイスを動かすと、彼女にビデオ通話がかかるシステムを構築しました。ザックは頻繁に電話をかけ、朝と夕方のルーティンができました。さらにカメラを反転させ、彼女の世界をザックに見せることで、このテクノロジーはザックにとって自宅を超えた「ポータル」となったのです。
しかし、研究者である彼女が常に電話に出られるわけではありません。そこで次の疑問が生まれました──「人間を介さずに、動物同士が電話をかけ合えないか?」
オウムが証明した「オンライン」の理解
非常に社会性が高いオウムを対象に、タブレットベースのシステムを構築しました。画面に表示された異なるオウムのプロフィール写真を舌で操作することで、ビデオ通話をトリガーできるようにしたのです。
数ヶ月間の利用で、オウムたちは「お気に入りの友達」を持ち、自分からかけた回数よりも他のオウムから電話がかかってきた回数が多いほど、通話回数が増えるという社会的な要素も見られました。通話中、オウムたちは一緒に毛づくろいをしたり、遊んだり、おもちゃを見せ合ったり、歌ったりと、驚くほど多様な行動を見せました。
さらに興味深い発見がありました。ライブ通話ではなく事前に録画されたビデオを再生するようシステムを変更したところ、オウムたちは通話回数と通話時間を減少させたのです。これは、オウムがライブでの相互作用と録画を区別できる可能性を示しています。
広がる恩恵と未来への可能性
オウムの飼い主へのアンケート調査では、回答した飼い主の100%が、自分の鳥がこのシステムから恩恵を受けたと回答しました。鳥との距離が縮まり、関係が改善し、信頼感が増したと感じていたのです。
ハースキー=ダグラス氏は、このテクノロジーの未来に大きな可能性を見出しています。犬を獣医に預けた時でもビデオ通話でつながれる未来、離れてしまった動物園の家族をテクノロジーでつなぐ未来──。
この技術を提供された動物の100%がそれを使用し、飼い主との関係にも利益をもたらしています。
次にあなたが誰かにビデオ通話をする時、世界中のどこかでオウムもまた、自分自身のユニークな方法で、つながりや仲間を求めて連絡を取り合っているかもしれません。動物たちは私たちが想像する以上に複雑で深いニーズを持ち、デジタル世界を理解し始めているのです。
関心を持った方はぜひ冒頭の動画を視聴してみてください。
