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【ZINEを語るインタビュー】ウミネコ制作委員会×穂音いづみ

大人気のZINE(※)界で、徐々に存在感を増している作り手が「ウミネコ制作委員会」です。ZINEフェスや文学フリマといったイベントで、その名を聞いた方もいらっしゃることでしょう。

ウミネコ制作委員会は、企画・制作を編集長が1人で行い、約20名のクリエイターが執筆協力をしている注目のグループ。現在は11月23日(日)に東京ビッグサイトで開催される「文学フリマ東京41」に向けて準備を進めています。

今回の記事では、ウミネコ制作委員会の編集長と、発足当初から参加しているクリエイターの穂音ほのんいづみさんにお話を伺いました。

※ZINE(ジーン):個人やグループが自由な発想で自主制作する小冊子


プロフィール

ウミネコ制作委員会編集長

落語家の夫で婿。寄席文学を提唱し、演芸に関する本を読み漁り、自らも執筆活動に挑戦中。

穂音いづみさん

少し不思議な世界と、現実と、境界なく繋がるようなお話を書くのが好きです。犬と音楽とミステリと野草があればご機嫌です。

ウミネコ制作委員会とZINE

――ウミネコ制作委員会は、もともとnoteから始まった会だと伺いました。どのような経緯で立ち上がったのでしょうか?

ウミネコ制作委員会編集長(以下、編集長)
ウミネコの前身は、僕がnoteの中で使っていた「ぼんやりRADIO」というアカウントです。当時は僕自身も小説やエッセイを書いて、フォロワー同士で作品を読みあいながら交流していました。

その時間が深まるうちに「僕が好きなクリエイターを、noteの外の世界にも紹介したい」と思うようになっていったんです。せっかくならみんなを一緒に巻きこんで、何か創作で楽しいことがしたいなと。

じゃあ、どうすればそれが実現できるだろう。ひたすら考えた結果、作品を紙媒体として形にできるZINEにたどり着きました。

穂音いづみさん(以下、穂音):
Webの世界そのものを飛び出して、紙を選んだところが大正解でしたよね。縦書きの本は読みやすいですし、紙をめくる感覚も心地良いので、作品に没入できます。

編集長:
もしかしたら僕自身が、紙の本という最高の形で、みんなの作品を楽しみたかったのかもしれません。

noteの世界には、商業ベースにこそ乗っていないものの、実力のあるクリエイターが大勢います。そして商業出版で使われる文字組やレイアウトは、読みやすさを徹底的に追求した最終形態。だからこそ、僕は商業出版と同じ形で、みんなの作品を世に出すことにしました。

幸い、僕は編集の仕事に携わっていた経験があるので、データ作成や入稿のノウハウを知っていました。そして最初に誕生したのが「umineko」というZINEです。

umineko No.1(現在は売り切れ)

穂音:
そこからどんどん大きくなって、本誌のuminekoはNo.3まで続いていますし、派生レーベルも次々に生まれています。すごいですよね。

編集長:
現在は本誌の他に、3つのレーベルがあります。

・ウミネコmini文庫
・ウミネコ文庫
・Bonyari Studio レーベル

実は、ジュンク堂さんや川口市の飲食系書店「豆千」さんを始め、実店舗にもuminekoを置かせていただいています。

文学フリマやZINEフェスに参加すると、ブースにいらっしゃるお客さんに「uminekoが出ると聞いたので来てみました!」と言われることもありますよ。これは本当に嬉しいです。

文学フリマ東京41・3冊のおすすめ本

――ウミネコ制作委員会は「文学フリマ東京41」で、さまざまなZINEを販売すると伺いました。特におすすめの本を教えてください。

編集長:
書き手の個性がみなさん違うので、すべての本を推したいところですが…。今回は3冊をピックアップさせていただきます。

①オムニバスエッセイ「あのころ、ひみつきちで」
②ウミネコmini文庫「神々の甘噛み」(著:穂音いづみ)
③Bonyari Studioレーベル「落語家船越亭歌さすのサスペンス半劇場」(著:楽気ラッキ世文セブン

おすすめ①オムニバスエッセイ
「あのころ、ひみつきちで」

「あのころ、ひみつきちで」定価800円

――まずオムニバスエッセイから、本のご紹介をお願いします。

編集長:
「創作の原点」をテーマに、20名のクリエイターが子ども時代を振り返って、それぞれの思い出を綴ったエッセイ集です。

クリエイターの方々と雑談をしていた際、子ども時代にこんなことをやっていた、という思い出話になったんです。それがみんな、現代の創作につながっている話ばかりで、すごく興味深くて。やっぱり創作を続けている人には、原点となったエピソードがあるんだな、と強く思いました。

ウミネコ制作委員会に参加しているクリエイターに声をかけてみたところ、見事に全員、濃厚な思い出をお持ちでした。それを集めたのが本書です。

穂音:
創作のルーツという「秘密」が詰まった、オリジナリティあふれる1冊ですよね。まさに〔あのころ、ひみつきちで〕。

編集長:
ZINEフェス福岡とオンラインショップではすでに販売しているのですが「それぞれ個性的すぎて楽しかった」「昔の自分に読ませたい」といった感想をいただきました。参加していない書き手さんからは、次は声をかけてほしいと立候補が相次いでいます。

穂音:
クリエイターに書きたいと言ってもらえる本って、すごくいいですよね。

私も「はつ恋セブン」という、録音テープのエピソードで参加しています。文学フリマ東京41で、ぜひお手に取ってみてください。

おすすめ②ウミネコmini文庫
「神々の甘噛み」(著:穂音いづみ)

「神々の甘噛み」定価500円

――こちらは穂音さんからご紹介をお願いします。

穂音:
動物をフックにした、3つの物語を集めた短編集です。

表題作の「神々の甘噛み」は、私の愛犬をモデルにした銀色の犬と、銀髪の女性の摩訶不思議な物語。4部構成になっていて、前半の2部はnoteの企画に寄稿したもの、後半の2部は書き下ろしです。

編集長:
穂音さんが描く独特の世界、通称〔穂音ワールド〕には、大勢のファンがついています。穂音さんの本を買いに、イベントを訪れるお客さんもいるんですよ。

穂音:
嬉しい!

編集長:
穂音ワールドに初めて触れる読者は「何、この話」と思いながらも、どんどん没入していくケースが多いです。きっと、それまで読んだことがない世界観に浸れるのが魅力の1つなんでしょうね。想像力が逞しい方や、京極夏彦先生か水木しげる先生が好きな方には特におすすめです。

穂音さん、ネタバレにならない範囲で「神々の甘噛み」の世界が生まれたきっかけを訊いていいですか?

穂音:
私の愛犬の前足に、アレルギーが出てしまったことです。出血するまで舐めてしまうので、獣医さんの指示で首にエリザベスカラーを着けることになりました。

エリザベスカラー(穂音さんの愛犬ではありません)

その姿を見たときに「パラボラアンテナみたい」と思っちゃって。この子は変わった犬だから、宇宙と交信でもしてるのかな、と閃いたんです。

そこから「犬は単独行動が嫌いだし、絶対に宇宙仲間がいるはず。相棒はどんな生き物かな、2人でどう動くのかな」と想像が膨らんで、頭の中に万華鏡のような世界が生まれました。それを書き起こしたのが本作です。

編集長:
動物が出てくることで、穂音さんの物語から生々しさのようなものが消えるんですよね。だからこそ、純粋な空想の世界に浸れるのかもしれません。穂音ワールドを未経験の方は、ぜひ読んでみてください。

おすすめ③Bonyari Studioレーベル
「落語家船越亭歌さすのサスペンス半劇場」(著:楽気ラッキ世文セブン

「落語家船越亭歌さすのサスペンス半劇場」定価800円

――楽気世文さんとは、あまり聞かないお名前ですね。どんな方ですか?

編集長:
実は僕なんです。ウミネコ制作委員会の活動をしているうちに、落語要素を入れたバカバカしい作品を書きたくなってしまって。その瞬間に思いついたのが、昭和から平成にかけてテレビで大人気だった「火サス」こと、火曜サスペンス劇場のオマージュ作品でした。

穂音:
毎週火曜日の21時から放送していた、2時間完結のサスペンスドラマですよね。クライマックスは崖で探偵が推理を披露して、犯人が自白したところにパトカーが来る。このイメージが定着していました。

火サスのクライマックスには崖が必須

火サスと言えば、絶対に欠かせない俳優が船越英一郎さん。岩崎宏美さんが歌うエンディングテーマ曲「聖母マドンナたちのララバイ」も印象に残っています。

編集長:
いま穂音さんがおっしゃった、火サスならではのアイコンと、落語の要素を掛け合わせたのが本作です。リアルタイムで見ていた世代なら、流し読みでもオマージュだと分かるんじゃないでしょうか。

実際、火サスを見たことがある読者の方は、とても喜んでくださいます。でも、一番楽しんだのはきっと僕でしょうね。短い小説に、ダジャレとバカバカしさで味付けをしてふざけていましたから。

穂音:
でも、私はその味付けの中に、悲哀の隠し味が入っているように思います。

ネタバレになるので詳しくは語れませんが、褒められ続けると落語の芸が狭くなる話には、プロの落語家のリアルを感じました。でも、そこでらら梅ララバイという女性が火サスらしく絡んできて、すぐに笑っちゃう。

編集長:
実際にこの本を読んだ方に「文フリで買った本の中で一番くだらなかった」とご感想をいただいたことがあります。もちろん、褒め言葉としてですよ。くだらなくておもしろい、という声はとても多いです。

書いていたときは、くすっと笑えるくだらなさが、あざとさに変わらないようバランスを取っていました。ダジャレ1つ入れるにも、笑わせようとしていることがにじみ出てしまうと、あざとく感じられてしまいますから。

穂音:
その気遣いは大成功ですよね。火サス世代なら誰でも、純粋に楽しめる作品に仕上がっていると思います。

船越亭歌さすと聞いただけでピンとくる方には、一抹の懐かしさを感じつつ、良い意味でバカバカしい世界に没頭できる作品です。ぜひお読みください。

今後の活動予定

――文学フリマ東京41以降の、お二方の活動予定を教えていただけますか?

編集長:
本の販売はこれまでと同様、各地のZINEフェスと文学フリマ、オンラインショップで続けていく予定です。イベントではできる範囲で、協力してくださっているクリエイターの委託販売も引き受けたいですね。

制作としては、ウミネコmini文庫が次回で10作目になるので、スペシャル版を発行する予定です。いま出ているアイデアは、全巻入るオリジナルケースの制作、複数のクリエイターによるアンソロジーなどがあります。

まだ何も決まっていないので、まったく違うものになるかもしれませんが、楽しみにしていただけたら嬉しいです。

穂音:
2026年2月8日の「文学フリマ広島8」にブースを出店する予定です。

私のブログのタイトルとウミネコ制作委員会を合わせた〔ホニョーラの尻尾とウミネコ制作委員会〕というブース名になります。私が参加させていただいた本に加えて、個人的に好きなZINEも一緒に並べたいですね。

執筆活動は、相変わらずマイペースで書き続けています。年内に中長編を1本仕上げて、年明けから長編に入る予定です。これからも、穂音ワールドを待っていてくださる皆様に、おもしろいと感じていただける作品をお届けします。

◇◆◇

文学フリマ東京41は、11月23日(日)に東京ビッグサイトで開催されます。

ウミネコ制作委員会のブースは、南3・4ホールの〔つ-49・50〕。
(ちなみに、お隣のつ-51は筆者のブースです)

※筆者ブースのメインはこちらの本

文学フリマ東京41は、3,000を超えるブースが出店する、本好きの一大イベント。
会場にお越しの際は、ぜひウミネコ制作委員会、さわきゆり両ブースへお越しください。

(取材・記事 さわきゆり)


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