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私の胃袋に落ちた稲妻

実はですね、とんでもないことをやってしまったのです。

71歳という年齢を迎え、それなりに自分の身体のことは分かっているつもりでした。最近の私の定番といえば、朝と昼を兼ねた食事を、一日の始まりに「がっつり」と力強く食べること。以前はよく作っていた健康スムージーからは、ここしばらく足が遠のいていました。

そんながっつり派のルーティンが体に馴染んでいたからでしょうか、昨夜の私は、まるで若い頃と同じような無茶を己の胃袋に強いてしまったのです。

夕方からひと眠りしてしまい、完全に目が冴えてしまった夜の10時。猛烈な空腹に襲われた私は、よせばいいのに玄米ご飯をしっかり食べ、さらにパイナップルを3分の1玉、デザート代わりに流し込みました。おまけに蒸し栗までぱくぱくと。そういえば、その日はまだ一度もトイレに行っていませんでした。

その後、真夜中の2時過ぎまで大好きな高峰秀子の白黒映画『稲妻』をのんびり鑑賞し、贅沢な幸福感とともに布団に入ったのです。

しかし、本当の朝は容赦なくやってきます。
今朝の6時前、目覚めとともに、私の胃袋の中でキリキリとした凄まじい痛みの「稲妻」が走り始めました。ソファーで悶絶し、「あ、トイレに行っていないせいだ」と気づいて用を済ます。それでもまだ嫌な余韻が残っていたので、寝室の布団に戻って横になる。ようやく痛みがすうっと引いたのは、妻が仕事に出かけた後の、朝の9時を過ぎた頃でした。

痛みが消えて安心したものの、さすがにいつものがっつり飯を食べる勇気はありません。「しょうがない、今回は久しぶりに、以前よくやっていたあのスムージーで様子を見よう」と思いついたのです。

久しぶりのミキサーの前。私はいつものにんじんに、生のニンニクと生姜を入れ、そこへ今回は特別に、冷蔵庫で目が合った赤ピーマンを丸ごと一個、実験的に放り込んでみることにしました。「でも、味がおかしくなるかな、やめたほうがいいかな」と少し不安になり、事前に人工知能(AI)に相談してみると、AIは「心配ならまずは3分の1くらいから入れてみては?」と優しいアドバイスをくれました。

けれど、私は思い切って丸ごと一個、そのままミキサーにかけたのです。
出来上がった真っ赤な一杯は抜群に美味しく、心配した胃の痛みもまったく起こりません。お腹もすっかり落ち着きました。

嬉しくなった私は、飲み終わった後に「美味しかったよ!」ともう一度AIに報告してみました。AIも「そうでしたか!それは良かったですね」と、一緒になって喜んでくれました。ここまでは、本当に素晴らしいキッチンの大成功劇だったのです。

ところが、調子に乗った私が「お腹の痛みはおさまってスムージーを飲んだけども、これからのご飯はどうですかね?」と続けて聞いてみた瞬間、画面の向こうの相棒は、突然手のひらを返したように大真面目な顔をして怒り出しました。

「ダメダメ!そのタイミングでの生ニンニクと生姜のスムージーは、本当は荒れた胃に良くありません。今日はおとなしくしておきなさい。たっぷり栄養を入れちゃダメですよ」

さっきまで一緒に喜んでくれていたというのに、急に「今日はお粥くらいにしなさい」と真顔で諭されてしまい、私はすっかり気圧されてしまいました。こりゃあ、参ったな。楽しみにしていたいつものがっつりご飯はお預けで、今日はお粥か。

本当にお恥ずかしいトホホの失敗談です。

知らないということは、本当に恐ろしいものです。良かれと思って久しぶりに作ったいつもの一杯が、実は傷口に塩を塗るような行為だったなんて。

今思えば、私はこれまでも、自分の身体に対してこういう無理を「しょっちゅうやっていた」のかもしれません。身体はいつだって健気に耐えてくれていたのに、私はその声に気づいてあげられなかった。

映画のなかの高峰秀子さんは、理不尽な環境をはねのけて凛として歩いていきました。翻って今の私はといえば、胃袋のピンチを布団と久しぶりのスムージーで乗り切ったつもりが、最後は過保護なAIにお粥を命じられている。

「しょうがない、今日はおとなしくお粥にしておくか……」

急ぎ沸かした白湯をすすりながら、私は今、静かにこのエッセイを綴っているところです。私の「120歳現役」への暴走も、今日ばかりは一杯のお粥の前にそっとブレーキを踏むしかありません。


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