ゼルダと権力と悪しきものの孤独
『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』に初挑戦中の阿Qさん。物語も中盤に差し掛かり、難易度も高くなってきた。先日書いた『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の導師ウィルバー・マーサーも引くであろうほどゲームオーバーを繰り返し、電流罰を受けていた。
しかし、繰り返しのかいもあり、何とか古代生物ウミサソリのようなボスを退治した。そこで、どうやらこの世界の「大いなる力」を「悪しきもの」が手に入れてしまったため、世界が呪われていると明かされた。
なるほどと私は納得した。使いこなせないほどの地位や権力をうっかり手に入れてしまうことは、往々にしてあることだと思った。悪しきものはおそらく最後に出会うであろうから、どのような場所にいて、どのような生活をしているかは今は分かり得ない。
しかし、この呪われてしまった世界、色のない世界は殺伐として、汚らしくさえある。それは、もしかしたら「悪しきもの」が望んだものではないのかもしれない、とも考えた。
どこか遠くのお城で、自分が呪ってしまった世界を見下ろし、自分を倒してくれる人を待っているのかもしれないと思った。それは、他人事とは思えなかった。繰り返しゲームオーバーになり続ける勇者をどこかで見ている孤独に、共感を禁じ得なかった。
空の目蚤の目
お土産をもらった。有名な温泉地に行ってきたのだという。お礼とともに、反射的に「行ってみたいです。良かったですか?」と何の感情も無く笑って私は言った。その人は、凄く広い温泉街で良かった、足湯がいっぱいあるのだと嬉しそうに言った。
私は、柔らかい照明の部屋の中にいた。お風呂に入って、浴衣に温泉宿特有の変な上着を羽織ってご飯を食べていた。見たことのないものだらけのご飯は美味しく、そして多すぎた。最終的に部屋ですることが無くなった私は、結局スマホでYouTubeを見ていた。そして顔を上げ、「素敵な旅館だねありがとう」そう言って笑った。
はっと気づいた。リモート会議用のブースで、講習会の動画を見ていてうとうとしてしまっていたのだ。そのブースは暗く狭かった。こもった空気で顔がベタついた。
帰宅して、その温泉街を調べた。しかし、交通費は私には高かった.宿代は高かった。そのお金があれば、配信機材を買おうと思った。いたたまれない気持ちになって、ベースを弾いてみた。手癖で弾いた、Joy Divisionの『Disorder』。どこにも行けない私のベースの音はいつにも無くカッコよく仕上がっており、ヘッドホンで鳴っていた。
スタッフ ANOMIE
