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第059話|声を聞く者|教団に利用された勇者たちの戦記|ココ編【……成長したのは良いが、面倒だな】

———リンゴ林

リンゴを摘み取ろうとしたアーラが気配を感じ、振り返った。

「……」

(……この感じ、同胞か?)

(……大きいな)

アーラは、パックに伝えるか迷った。

(……できれば、放置するのが得策なんだが……)

(……小僧は放っておかないだろうな)

(……しかし、また人間に見られると厄介だしな……)

パックが、アーラの顔を覗き込んだ。

「……どうかした?」

アーラはパックに向き直った。

「……」

(……小僧の勘が鋭くなってる?)

(……それとも、俺が態度に出していたか?)

アーラはパックの成長を煩わしく感じると同時に、なぜか感動に似たものを覚えた。

「……」

「……落ち着いて聞け」

「……まだ距離はあるが、同胞の気配がする」

パックの動きが止まった。

「……」

「……倒さなきゃ、ダメな感じ?」

アーラは、パックの優しさにため息をついた。

「……“壊れた同胞”に同情するな」

「それよりも、行くのか?」

「……また、人間に見られると厄介だぞ?」

パックは少し考えた。

「……分かってる」

「……」

「……でも、行かなきゃ」

アーラは、パックの成長を噛み締めた。

「……まずは、状況を把握しに行く」

「……どう動くかは、その後だ」

「……うん」

パックは落ち着いて頷いた。

アーラが体勢を低くした。

パックは最後にリンゴをもうひと齧りして、アーラの背に乗った。

———上空

遠方に、巨大な影を捉えた。

……ズズン

重い音が響いた。

巨大な魔族の後方には、踏み潰された木々によって、森の中に道ができていた。

パックは目を見開いた。

「……大きい」

アーラは、違和感を拭いきれなかった。

「……」

(……人間の集落に向かっているのか? ……なぜだ?)

(……小娘は? こっちに向かっているのか?)

(……不確定要素が多すぎる)

「……小僧、同胞は人間の集落に向かっているようだ」

「……ゆっくりだが、時間の問題だ」

「まずは近づいて、俺が音で引きつけてみる」

「合図をしたら、耳を塞げ」

パックは喉を鳴らした。

「……分かった」

アーラは慎重に翼を傾けた。

「攻撃が来るかもしれん、しっかり掴まってろ」

亀の魔族を警戒しつつ、ゆっくりと距離を詰めた。

“壊れた魔族”までは、まだ距離があるはずだった。

だが、その全容は容易に確認できた。

周りの木々とのサイズ感が、明らかにおかしかった。

近づくにつれ、地響きが聞こえてくる。

……ズズン

十数メートルほどある木々が、次々と踏み潰されていく。

背を覆う甲羅と尻尾の先には、鋭い棘のようなものが生えていた。

それは巨大な亀のような姿をしていた。

アーラは羽ばたかず、滑空したまま接近した。

亀の魔族は森の木々を優に上回る巨体だった。

亀の魔族が首を持ち上げ、アーラたちを視界に捉えた。

アーラは亀の魔族と目が合い、全身に緊張が走った。

しかし、亀の魔族はアーラから視線を外し、再び村の方向へ向き直った。

その行動に、アーラは違和感を覚えた。

目を細める。

(……無視、だと?)

(……どういうことだ?)

(……目的があるように見えるが……)

(……正面からは危険か……)

アーラは警戒し、亀の魔族の後方へ旋回した。

その時だった。

大きな風切り音が、アーラたちに襲いかかる。

亀の魔族の長い尻尾が、木々を薙ぎ倒しながら、アーラたちへ迫った。

「———っ!!」

アーラの目が見開かれた。

無数の大木が飛んでくる。

回避の軌道が、ない。

(——避けきれない)

パックが息を呑んだ。

「アーラ——!!」

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