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援助をやめたら、家族は来なくなった?72歳女性が考えた「お金と家族の距離」

「今年の夏休みも、みんなでどこかへ行く?」

娘からそう聞かれたとき、72歳の悦子さん(仮名)は少し迷った。

そして、静かに答えた。

「今年からは、旅行代はもう出さないことにしたの」

それは、孫への愛情がなくなったからではない。

誕生日プレゼントも贈る。お年玉も渡す。

ただ、旅行費や習い事、教育費など、数万円から数十万円になる援助については、これからは控えることに決めたのだった。

しかし、その決断の後、悦子さんの家庭には思いがけない変化が起きた。

毎年のように訪れていた娘一家が、その夏、家に来なかったのだ。


年金月16万円。「これからの自分」のためにも考え始めた

悦子さんは8年前に夫を亡くし、現在は一人暮らし。

住宅ローンを完済したマンションで暮らし、年金収入は月約16万円。預貯金は約1,600万円ある。

これまで、孫のためにお金を使うことを惜しいと思ったことはなかった。

娘には中学生と小学生の子どもがいる。

孫たちが小さい頃から、夏休みや年末年始にはよく家を訪れてくれた。

そのたびに悦子さんは、

「せっかく来てくれたのだから」

と外食に連れて行き、遊園地や水族館の費用を負担した。

夏休みには家族旅行の費用を一部出すこともあった。

最初は数万円程度だった援助も、子どもの成長とともに大きくなっていった。

中学校の入学祝いに10万円。

塾の夏期講習費として8万円。

前年の夏には、家族4人の旅行費として約20万円を負担した。

「孫のために使うことは、本当に幸せでした」

そう話す悦子さん。

しかし、年金生活になり、少しずつ不安も出てきた。

自宅設備の修理費。

将来の医療費。

もし介護が必要になった場合の備え。

「今までと同じように援助を続けても大丈夫なのだろうか」

そう考えるようになったのだ。

内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査」では、60歳以上で今後優先的にお金を使いたいものとして、「子や孫のための支出(学費、おこづかいなど)」を挙げた人は25.8%。

一方で、「自分や配偶者の医療・介護費用」を挙げた人は47.5%だった。

高齢期には、家族への思いやりと、自分自身の将来への備え。その両方を考える必要がある。


援助をやめた夏、家は静かになった

悦子さんが娘に、

「今年から旅行代は出さないね」

と伝えたとき、娘は、

「分かった」

と答えた。

悦子さんは、孫たちが少し残念に思う程度だろうと考えていた。

しかし、その夏。

いつもなら聞こえていた孫たちの声がなかった。

7月が終わっても、8月になっても、娘一家から帰省の連絡はない。

心配になった悦子さんが、

「夏休みはどうするの?」

と聞くと、

「子どもたちも予定が多くて、まだ分からない」

という返事だった。

そして、そのまま夏休みは終わった。

娘一家は一度も来なかった。

「夏休みも、誰も来ませんでした」

悦子さんはそう振り返る。

もちろん、援助をやめたことだけが理由とは限らない。

上の孫には部活動があり、下の孫にも習い事がある。

子どもが成長すれば、家族全員で祖父母の家へ行く機会が減るのは自然なことだ。

それでも悦子さんの中には、ある疑問が残った。

「以前は、なぜあんなに頻繁に来てくれていたのだろう」


「お金を出さなくなったから?」娘に聞いた答え

ある日、悦子さんは娘に思い切って聞いた。

「お母さんがお金を出さなくなったから、来なくなったの?」

娘は驚いた。

「そんなつもりじゃないよ」

子どもたちの予定が増え、家族全員の時間を合わせることが難しくなっただけだと説明した。

ただ、話を続けるうちに、娘はこう言った。

「でも、お母さんのところに行くと、みんなで外食したり、どこかへ遊びに行ったりするのが当たり前になっていたかもしれない」

その言葉を聞いて、悦子さんにも思い当たることがあった。

孫に会えることが嬉しくて、

「何かしてあげたい」

と思い続けてきた。

しかし、いつの間にか、

「会う時間」と「お金をかけた楽しみ」

がセットになっていたのかもしれない。


親子や祖父母と孫の関係は、お金だけでは続かない

子や孫への援助は、多くの祖父母にとって愛情表現の一つだ。

入学祝い。

旅行費の負担。

日々の小さなプレゼント。

そこには「幸せになってほしい」という純粋な願いがある。

一方で、長期間にわたる援助が習慣になると、家族の交流と金銭的な支援の境目が見えにくくなることもある。

援助を減らしたことで、家族との距離を感じるようになる人もいるだろう。

しかし、それは必ずしも家族関係が壊れたという意味ではない。

お金を介さず、どのように会うのか。

どんな時間を一緒に過ごすのか。

改めて考えるきっかけになる場合もある。

悦子さんは今も孫を大切に思っている。

ただ、これからは「何かをしてあげること」だけではなく、「一緒に過ごす時間そのもの」を大切にしたいと思うようになった。

本当の家族のつながりは、誰がいくら負担したかではなく、お互いを思いやる気持ちによって続いていくのかもしれない。

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