父への弔辞
6月7日に
日本にいる父に会いに来ることになっていました。
6月3日の午後、
父の身体は急に弱り、
あっという間に、永遠の眠りにつきました。
看護師さんにお願いして、
亡くなる少し前の父に
電話越しで話しかけることができました。
お通夜には間に合いませんでしたが、
告別式には喪主として参列できました。
「少しでも長く父のことを覚えておいてほしい」
そんな思いで弔辞を読みました。
その一部をここにも書き残しておきたいと思います。
(最初の挨拶部分は省略)
今しばらくは、この場をお借りして、⻑⼥としてではなく、ひとりの⼦どもとして⾒た⽗についてお話しさせていただきたく思います。間違って記憶していることもあるかもしれないことをご了承ください。
⽗は、まだ私たちが⼩さい⼦供のころ、よく⼀緒に遊んでくれました。なかでも近くの公園に⽝を連れて⼀緒に遊びにいくことが、私は⼤好きでした。⽗が⽝の⾸輪から鎖を外してくれるので、⽝が思いっきり嬉しそうに公園内を⾛り回るのを⾒るのがとても楽しかったのです。休⽇には、ホットケーキやプリンを作って私たちを喜ばせてくれました。おかげで、妹も私も「おやつを作るのはお⽗さんの仕事」だと思っていたほどです。また⽗は、私たち家族のために⾃分で⾞を運転して何度か家族旅⾏に連れて⾏ってくれました。⽇帰りで京都から戻ってくる最中に雪が降り始め、真っ暗な雪道の中 1時間以上かけて、1 ⼈でタイヤにチェーンを装着してくれたことを今でも良く覚えています。
また、⽗は⼤変多趣味な⼈でした。写真展を開くほど写真が好きでした。柔道、⼸道も嗜み、バイクに乗って旅⾏したりもしていました。⾳楽もクラシックからロックミュージックまでなんでも聞いていました。器⽤な⽗は、椅⼦や本棚といった家具を⾃分で作ったりもしていました。先ほどもちらっとお話ししたお菓⼦作りについては、⼀時期はパン⽣地を作るところから始めるパン作りにまでいたっておりました。⽗の⼿作りのいちごジャムやマーマレード、あんこ、梅ジュースなどといった⾷品を、多くの⽅が「美味しい」と⾔って喜んでくださると、嬉しそうでした。晩年になっても伊勢型紙や俳句などに挑戦し、⼈⽣の最後まで新しいことを楽しみ続けた⼈でした。
定年退職後も、中⽇⽂化センターの史跡探訪会の講師として、地域の皆さまを添乗する仕事に励んでいたと聞いております。⽗が作成した多くの資料を⾒ると、分刻みでスケジュールを組み、訪問先の⾒どころも調べていました。中でも私が⼀番感嘆したのは、参加者の皆さまに喜んでいただけるようにと、計画したスケジュールどおりかどうかを、⾃分で現地に⾜を運んで確認していたことです 。どこで昼⾷の休憩をとったら喜んでもらえそうかも、⾃分で試したうえで、本番の添乗業務に臨んでいたのです 。おかげさまで、講師としての⽗の評判は⼤変好評で、辞める際には、多くの⼈に惜しまれたと聞いております。
晩年の⽗とは、私がもう少し早く⽇本に戻ってきていたら、⼀緒に京都に⾏に⾏けたのになと話しておりました。⼦どもの頃を京都で過ごした⽗と、⾼校を卒業してから渡⽶するまでの間京都に住んでいた私とは、京都に対する愛着という共通する思いで繋がっておりました。残念ながら、その願いをかなえることができなかったことは、今でも⼼残りです 。
⽗という⼈間は、勤勉で、実直で、穏やかという印象を多くの⽅々が持っておられるのではと思います 。もちろん実際にそうでしたが、⼦どもである私が⽗のことを⼀⾔で⾔い表すとしたら、⽗は、 「⼼の豊かな⼈」であるということを強調したいのです 。⽗は、その豊かな⼼のおかげで、単に⾃分の⼈⽣を楽しむだけではなく、⼼に余裕がありました。⾃分の周りにいる⼈たちをも喜ばせようという奉仕の精神に満ちていました。恩着せがましいところは⼀切なく、⾃然にそのようなことをする⼈でした。⽗のような⼈を⽗親として持てたことに感謝し、⼦どもとして⼤変誇りに思っております。
⽗の話を始めれば尽きることはありませんが、最後に⽗への感謝の⾔葉を伝えて締めくくりたいと思います。
「お⽗さん、62 年間、お世話になりました。そして、⼈としていかに⽣きるかということを⾝をもって教えてくださり、ありがとうございました。私はまだ未熟ですが、今後、お⽗さんのように、⾃分の⼼と⾝体を使って、より多くの⽅に喜んでいただくということが⾃然にできるような⼈間として⽣きていきます。どうぞ今まで通り⾒守っていてください。私にとってはいつまでも、偉⼤なお⽗さんです。97 年という⻑い⼈⽣、本当にお疲れさまでした。お⽗さんがこの世にいなくても、再び会える⽇まで、これからもお⽗さんに毎⽇話しかけます。今は、お⺟さんと⼀緒にどうぞゆっくりお休みくだ
さい。何度⾔っても⾔い⾜りませんが、お⽗さん、ありがとう。」
お読みいただきありがとうございました。
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