見出し画像

あたまのなか

『信号機、ぶどう味なんですよ。』

『えっ?』

交通量の少ない23時過ぎ。
70歳くらいだろうか。
白髪のダンディーなタクシードライバーが言った。

『次の信号機、通りすぎる時にぶどうの味がするんです。少しだけ集中してみてください。』

突然、訳のわからない事をいわれて戸惑っていると通り過ぎてしまった。

『いかがでしたか?
ぶどうの味しましたか?』

『…突然だったので集中できませんでした。』

『では、次の信号機はイチゴの味がします。
集中してみて下さい。』

(そんな事…)と思いながら集中してみた。

タクシーが止まった。

動いた。

『いかがでしたか?』

『…した気がします…。
イチゴと聞いていたからかもしれません。』

『次はレモンパイかもしれません。』

『レモンパイ…
(どんな味だっけ??)』

『到着しましたよ。
お腹が空いていると、ついつい食べ物を連想してしまってね。』
ダンディーな朗らかな笑顔だった。

鏡に映る自分を見て気づいた。

明日は美味しいものを食べよう。

いいなと思ったら応援しよう!