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【探究学習】AI時代の世界秩序は誰がつくるのか――高齢指導者の退場と、2030年代の危うい未来

最近、世界の主要国の指導者を眺めていて、ふと気になったことがあります。
中国の習近平、アメリカのトランプ、ロシアのプーチン、インドのモディ。
少し前までは、世界各国で「若い指導者」が登場することが、新しい時代の象徴のように語られていた気がします。
ところが現在、世界経済や国際政治に大きな影響を与えている国々のトップには、高齢の指導者が並んでいます。
それ自体が良いとか悪いとかいう話ではありません。
むしろ興味深いのは、
AIやロボティクス、宇宙開発、遺伝子操作といった、人間社会そのものを変えかねない技術が急速に進歩している時代に、20世紀を長く生きてきた政治家たちが、世界の方向を強力に決めている
ということです。
歴史の皮肉のようにも感じます。


技術は未来へ進み、政治は過去を背負っている

現在の主要国の指導者たちは、それぞれまったく違う政治体制の中にいます。
アメリカには選挙があります。
インドにも巨大な民主主義制度があります。
一方、中国やロシアでは、指導者個人への権力集中が強くなっています。
ただ、共通しているのは、いずれの指導者も非常に大きな影響力を持ち、その人物自身の思想や判断が国家の方向を左右しているということです。
そして彼らが政治家として人格形成した時代には、生成AIもスマートフォンもありませんでした。
インターネットすら社会の前提ではなかった。
ところが彼らがいま決めている政策の中には、
AI、
半導体、
ドローン、
宇宙開発、
サイバー安全保障、
遺伝子技術、
自律兵器、
といった、まさに21世紀後半の社会を左右するテーマが含まれています。
技術は猛烈な勢いで未来へ進んでいる。
しかし、その未来への入口を管理しているのは、20世紀をよく知る世代なのです。


指導者が交代しても、世界は元には戻らない

さらに気になるのが、その後です。
現在の指導者たちは、当然いつか政治の第一線から退場します。
その時、世界はどうなるのでしょうか。
たとえばトランプの後に、まったく違う思想を持つアメリカ大統領が誕生したとしても、米中対立や産業政策、同盟国との関係などが一気に2010年代へ戻るとは考えにくいでしょう。
プーチン後のロシアも同じです。
仮に次の指導者が欧州との関係改善を望んだとしても、ウクライナ戦争によって変わってしまった安全保障体制や国民感情は残ります。
習近平後の中国も、誰が後継者になるのか、その人物が現在の路線を継承するのか、修正するのか、さらに強硬化するのか分かりません。
モディ後のインドも、今後さらに巨大な経済大国となった時、その力をどのように使う国になるのかはまだ見えていません。
つまり、
指導者は交代できても、その指導者が作った歴史は交代できない。
次の世代は、前の世代が作った「地形」の上で政治を始めることになります。


「後継者の時代」としての2030年代

ここでさらにAIやロボティクスの進歩を重ねると、かなり大きな問題が見えてきます。
2030年代には、現在の主要指導者たちの世代交代が進んでいる可能性があります。
その頃には同時に、
AIエージェント、
人型ロボット、
完全自動運転、
自律型ドローン、
高度な遺伝子編集、
民間宇宙開発、
といった技術も、現在よりはるかに社会へ入り込んでいるでしょう。
すると次の世代の指導者は、単に、
「前任者の外交政策をどうするか」
を決めるだけではありません。
AIをどこまで行政に使うのか。
ロボットによって仕事が減った時、所得をどう分配するのか。
無人兵器に人間を殺す判断をさせてよいのか。
宇宙空間の資源を誰が所有するのか。
遺伝子編集を病気の治療まで認めるのか、それとも人間の能力向上にまで使うのか。
こうした問題を決める必要が出てきます。
これは、従来の「右か左か」という政治的対立より、もっと根本的な問題かもしれません。
なぜなら、
どんな社会を作るのかだけでなく、「人間とは何か」そのものを政治が決める可能性があるからです。
技術は同じでも、政治によって全く違う社会になる
たとえばAIがあります。
AIを利用して、
一人ひとりに安価な教育や医療、行政サービスを提供する社会を作ることもできます。
一方で、
国民の顔、位置情報、通信履歴、購買履歴、人間関係などをAIで分析し、国家が個人を常時監視する社会を作ることもできます。
ロボティクスも同じです。
危険な仕事から人間を解放するためにロボットを使うこともできます。
逆に、警察や軍隊を自動化し、国家による暴力のコストを極端に下げることもできます。
遺伝子技術も、
病気を治す技術にもなれば、
国家が望む人間を作ろうとする技術へ向かう可能性もあります。
つまり、
技術そのものには政治思想がない。
どのように使われるかを決めるのは、人間です。
だからこそ、これからの時代は、
「どの国が一番高度なAIを持っているのか」
だけを見るのでは足りません。
そのAIを、誰が、どんな価値観で握っているのか。
こちらの方が重要になってくるのだと思います。
一番怖いのは、独裁国家による「倫理のショートカット」
ここで気になるのが、権力の強い国家です。
民主国家では、新しい技術を導入する時、
議会、
司法、
報道、
大学、
倫理委員会、
市民社会、
などが一定のブレーキになります。
もちろん民主国家だから必ず安全とは限りません。
しかし、
「国家目標のためなら、多少の人権侵害や倫理違反は仕方がない」
という政治体制では、こうしたブレーキを外すことが容易になります。
すると、
ある国が高度なAI監視社会を作る。
別の国が自律兵器を大量導入する。
どこかの国が倫理的に問題のある人体実験や遺伝子研究を進める。
そんなことが起こる可能性があります。
さらに怖いのは、その国だけで終わらないことです。
他国が、
「相手だけがそんな技術を持っているなら、こちらも開発しなければならない」
と考える。
すると、
倫理を無視した国家が先に一線を越える

他国が安全保障上の理由から追随する

それまで禁止されていた技術が徐々に解禁される

という軍拡競争が始まります。
核兵器とよく似た構造です。


しかもAI時代の軍拡は、核兵器より見えにくい

核兵器には巨大な施設が必要です。
ウラン濃縮設備やミサイル基地など、物理的な痕跡があります。
ところがAIやサイバー技術、バイオ研究は、それよりはるかに見えにくい。
相手国が何を研究しているのか。
どこまで自律兵器を開発しているのか。
AIを軍事判断にどこまで使っているのか。
外部から完全に把握することは難しいでしょう。
すると、
「相手が秘密裏にものすごい技術を開発しているのではないか」
という疑心暗鬼が生まれます。
疑心暗鬼は軍拡を加速させます。
ここに、
AI、
衛星、
ドローン、
サイバー攻撃、
ロボット、
バイオ技術、
が組み合わさっていく。
一つ一つの技術以上に、複数の技術が接続されることが怖いのです。


国家にはかつて「人間」というボトルネックがあった

少し考えてみると、これまでの国家には人間という制約がありました。
情報を集めるのも人間。
分析するのも人間。
命令を出すのも人間。
戦うのも人間。
国民を監視するのにも、多数の警察官や役人が必要でした。
しかしAIとロボットは、この人間というボトルネックを減らしていきます。
膨大な衛星画像をAIが分析する。
監視カメラ映像からAIが人物を特定する。
ドローンが自律的に目標を追跡する。
サイバー攻撃の一部をAIが自動化する。
そうなった時、
20世紀の独裁国家よりも、21世紀のAI独裁国家の方が、はるかに少ない人数で巨大な人口を管理できる
可能性があります。
「AIが人間を支配するのか」というSF的な問いより、
AIを使った人間が、別の人間をこれまで以上に強力に支配できるようになるのではないか。
当面はこちらの方が、現実的な問題なのかもしれません。


では、誰が新しい世界秩序を作るのか

ここまで考えると、当然ある疑問にたどり着きます。
次の大戦を起こさないための新しい国際秩序を、いったい誰が設計するのでしょうか。
おそらく、昔のように一つの超大国が設計することは難しいでしょう。
中心になるのは、やはりアメリカと中国だと思います。
AI、半導体、宇宙、軍事技術などで、この二国がまったく合意できなければ、実効性のある世界ルールは作れません。
しかし米中だけに任せれば、
「アメリカ側につくのか、中国側につくのか」
という陣営対立になりかねません。
そこで重要になるのが、
インド、
EU、
日本、
ASEAN、
アフリカ諸国、
などの第三極です。
さらに国連のような国際機関が交渉の場を提供する。
ただしAI時代には、もう一つ特殊な存在があります。


テクノロジー企業も「国際政治の参加者」になる

AIや宇宙開発の重要な部分を、現在では民間企業が持っています。
AIモデル。
半導体。
クラウド。
データセンター。
衛星通信。
ロケット。
こうしたインフラの一部は、国家より企業の方が技術的に詳しい。
これは核兵器時代とはかなり違います。
核兵器は基本的に国家が管理していました。
しかしAI時代には、
国家元首だけでは世界ルールを作れない
可能性があります。
2030年代の国際会議では、
国家の指導者、
国際機関、
研究者、
そして巨大テクノロジー企業、
が同じテーブルにつくことになるのかもしれません。
かなり奇妙な世界です。


人類は大事故が起きる前にルールを作れるのか

ここで歴史を振り返ると、少し嫌な予感もします。
人類は必ずしも、
「これは危険になりそうだから、先にルールを作ろう」
と行動してきたわけではありません。
大きな戦争や事故を経験してから制度を作ることの方が多い。
第二次世界大戦の後に国連が作られました。
核兵器が登場した後に、核軍備管理の仕組みが作られました。
AIについても、
大規模な自律兵器事故、
AIによる軍事的誤判断、
巨大なサイバー攻撃、
宇宙インフラへの攻撃、
バイオ技術の重大な悪用、
といった事件が起きて初めて、
「これは各国の自由競争に任せてはいけない」
という合意が生まれる可能性があります。
できれば、そこまで行く前にルールを作ってほしい。
しかし、それができるかどうかは分かりません。


現在の指導者は「古い秩序を終わらせる世代」なのかもしれない

ここまで考えていて、一つの仮説が浮かびました。
現在の高齢の指導者たちは、
20世紀型の世界秩序を壊したり、組み替えたりする最後の世代
なのかもしれません。
米中対立。
ロシアと欧州の分断。
インドの大国化。
グローバルサウスの台頭。
産業政策の復活。
国家安全保障と経済の一体化。
こうした動きによって、1990年代以降のグローバル化を前提とした世界はかなり変わりつつあります。
その世界を引き継ぐ次の世代は、
AI・ロボティクス・宇宙・生命工学時代の新しい国際秩序を作らざるを得ない最初の世代
になるのかもしれません。
そう考えると、次のアメリカ大統領が誰になるのか。
習近平の次に誰が中国を率いるのか。
プーチン後のロシアがどうなるのか。
モディ後のインドがどんな大国になるのか。
これらは単なる政局ニュースではなくなります。
その人物たちが、
人類が新しい技術とどう共存するのか、その最初のルールを決める可能性があるからです。


2030年代は「技術の時代」ではなく「技術を制御する時代」になるのか

AIについて考えていると、つい、
「どこまで賢くなるのか」
「どんな仕事がなくなるのか」
といった話に目が向きます。
しかし、もっと大きな問題があるのかもしれません。
AIを人類は制御できるのか。
というより、
AIを持った国家を、人類は制御できるのか。
ロボットを持った国家。
高度な遺伝子技術を持った国家。
宇宙インフラを支配する国家。
そうした力を持つ国々が、お互いを完全には信用していない。
そこに新しい指導者たちが登場する。
2030年代は、技術そのものが主役になる時代というより、
強力になりすぎた技術を、人間社会がどう統治するのかが問われる時代
になるのかもしれません。
そして、その制度作りに失敗すれば、かなりきな臭い世界になる。
反対に、そこから新しい国際ルールを作る政治家が登場すれば、後世から見て非常に重要な人物になるでしょう。
現在の世界は、まだそのどちらへ向かうのか分かりません。
だからこそ、今という時代には、
未来が見えないのではなく、未来そのものがまだ決まっていない。
そんな感覚があるのかもしれません。

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