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【NISAやってみた】SpaceX株を買うことは、イーロン・マスクに未来を委ねることなのか

先日、保有しているSpaceX株が大きく下落しているのを見て、少し気になりました。
なにせ先日のスペースXのIPOで1株だけ株式を買っているので。
SpaceXは、ロケットの再利用や衛星通信サービス「Starlink」など、これまでなら国家にしかできなかったような事業を実現してきた会社です。
一方で、直近の決算ではAI分野を中心とした巨額の設備投資が明らかになり、市場ではその資金消費の大きさが警戒されました。
赤字であること自体は、市場もある程度予想していたはずです。
それでも株価が下がったのは、単純に「赤字だったから」というより、
これほどの金額を、これほど速いペースで投資し続けるとは思われていなかった
ということなのかもしれません。
赤字よりも、現金がどれだけ出ていくか
成長企業が赤字になること自体は、珍しいことではありません。
将来の売上を作るために工場やデータセンターを建設し、研究開発や人材に資金を投入すれば、短期的な利益は小さくなります。
問題は、その投資が将来どのくらいの利益を生むのか、そして利益が出るまで会社の資金が持つのかということです。
SpaceXの場合、従来のロケット事業やStarlinkに加えて、AI関連事業へ巨額の資金を投入しています。
Starlinkという優良事業が稼いだ利益を、まだ収益性の定まっていないAI事業へ大量に振り向ける。
この構造を見て、私はソフトバンクグループを思い出しました。
(ソフトバンクグループは2株だけ保有しています。)

SpaceXとソフトバンクグループの共通点
ソフトバンクグループの株を買うことは、通信会社やARMだけに投資することではありません。
孫正義氏が将来どの事業に資金を振り向けるか、その資本配分能力に投資することでもあります。
同じように、SpaceX株を買うことも、単純にロケットやStarlinkへ投資することではなくなっています。
SpaceXの株主は、イーロン・マスクが、
* ロケット
* 衛星通信
* Starship
* AI
* データセンター
* 将来の宇宙開発
のどこに、どれだけ資金を投入するかを選べません。
マスクの判断を、まとめて引き受けることになります。
つまりSpaceX株は、通常の事業会社の株であると同時に、
イーロン・マスクが運用する、宇宙・通信・AIの巨大投資ファンド
のような性格も持ち始めているのだと思います。
誰もマスクを止められないのか
さらに気になるのが、SpaceXにおけるマスクの強い支配力です。
マスクは経営者であるだけでなく、大きな議決権を持つ支配株主でもあります。
一般株主や社外取締役が「AIへの投資が大きすぎる」と考えても、マスク本人が進めようとすれば、それを止めるのは簡単ではありません。
もちろん、完全に誰も止められないわけではありません。
株価が下落し、資金調達が難しくなれば、資本市場がブレーキになります。政府との契約や規制、顧客からの需要も制約になるでしょう。
しかし、社内の取締役会や一般株主よりも、外部の市場が止めるしかない構造だとすれば、投資家としては少し怖さを感じます。
創業者の多角化は成功するのか
過去を振り返ると、創業者が成功を背景に、次々と別の事業へ手を出して失敗した例は少なくありません。
成功体験が大きいほど、
今回も自分が正しいはずだ
と考えやすくなるからです。
一方で、創業者主導の多角化に成功した企業もあります。
日本の三菱、韓国のヒュンダイやサムスン、インドのリライアンス、アメリカのAmazonなどです。
ただし、成功した企業を見ると、単に思いつきで無関係な事業へ進出したわけではありません。
三菱なら海運、鉱山、造船、金融。ヒュンダイなら建設、自動車、造船、重工業。AmazonならEC、物流、クラウド。
それぞれの事業は、一見すると別物ですが、技術、人材、顧客、物流、資金調達といった共通の能力でつながっています。
さらに長期的に成功した企業は、どこかの段階で創業者個人の会社から、専門家が運営する組織へ変わっています。
創業者がすべてを判断し続けたから成功したのではなく、創業者の構想を組織として実行し、検証し、修正できるようになったから生き残ったのです。
マスクの「無茶」は、いつまで続けられるのか
ここで、もう一つ気になることがあります。
マスクはこれまで、普通の経営者なら避けるような無茶を繰り返してきました。
ロケットの再利用、電気自動車の大量生産、世界規模の衛星通信網。
どれも途中では「無理なのではないか」と思われながら、最終的には大きな成果を上げました。
そのため、次の投資が常識外れに見えても、
マスクなら、また成功させるのではないか
という期待が生まれます。
しかし、人間の体力や集中力には限界があります。
私はこの話を考えながら、トキワ荘の漫画家たちを思い出しました。
戦後の漫画界を作った漫画家たちは、若い頃から睡眠や健康を削るような猛烈な働き方を続けました。そして、そのなかには60歳前後で亡くなった人も少なくありません。
もちろん、そこからマスク個人の健康状態を予測することはできません。
ただ、若い頃に可能だった異常な働き方を、50代、60代、さらにその先まで続けられるのかという疑問は残ります。
マスク一人の身体と判断力に、
* 自動車
* 宇宙開発
* 衛星通信
* AI
* 脳神経技術
* 巨額の資本配分
が結びついている。
これは一人の経営者の健康問題が、複数の産業の経営リスクになるということです。
突然倒れることより、判断力が少しずつ変わる怖さ
企業にとって怖いのは、経営者が突然いなくなることだけではありません。
突然不在になれば、会社は後継体制へ移行せざるを得ません。
むしろ難しいのは、仕事を続けられる程度には元気でありながら、
* 疲労が蓄積する
* 判断が衝動的になる
* 失敗を認めにくくなる
* 周囲が反対意見を言えなくなる
* 過去の成功体験から投資額を拡大する
といった変化が少しずつ起きる場合です。
これはマスクに限らず、強い権力を持つ創業者が高齢化していく企業すべてに存在する問題でしょう。
創業者が優秀であればあるほど、周囲はその判断を疑いにくくなります。
過去の成功が、未来の暴走を止めにくくするのです。
SpaceXの本当のリスクは「マスク後」にある
SpaceXには、日々の事業を運営する優秀な経営者や技術者がいます。
マスクが数日会社を離れただけで、ロケットの打ち上げやStarlinkが止まるわけではないでしょう。
しかし、
マスクがいなくなったあと、誰が次の10年を決めるのか
という問題は残ります。
既存事業を運営できることと、巨額の投資先を選び、失敗を認め、事業を撤退させることは別の能力です。
SpaceXが本当に長期的な企業になるには、マスクの個人的な能力を、組織の能力へ変換する必要があります。
マスクが明日いなくなっても、会社が投資計画を検証し、優先順位を決め、間違いを修正できる仕組みがあるか。
それが、Starshipの成功やAIの成長と同じくらい重要なのかもしれません。

SpaceX株を持つということ
今回の対話を通じて、SpaceX株を持つ意味が少し見えてきました。
それは単に、宇宙産業の成長へ投資することではありません。
イーロン・マスクという一人の人間の、構想力、資本配分能力、体力、判断力、そして後継者づくりに投資すること
でもあります。
マスクの強引さは、SpaceXの最大の競争力です。
同時に、その強引さを誰も止められず、本人の能力を組織へ移せないのであれば、最大の経営リスクにもなります。
マスクが正しいか、間違っているかという二択ではありません。
今まで成功してきた人物が、これからも同じ方法で成功し続けられるのか。
そして、その人物がいなくなったあとにも会社は残るのか。
SpaceX株の下落を眺めていたところから、いつの間にか「企業は一人の天才にどこまで依存してよいのか」という、かなり大きな問題に行き着きました。
少なくとも現在の私にとっては、大きく買い増すよりも、1株を持ちながらその行方を観察するくらいが、ちょうどよい距離なのだと思います。

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