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【探究学習】AIと「話す」ことで、考えることはどう変わるのか

今回、初めてAIと本格的に音声で長時間話してみました。

きっかけは、ある企業について調べてみようと思ったことでした。


最初は「最近株価が下がっているけれど、どう評価すればいいのだろう」という、ごく普通の企業分析の話でした。

ところが、話しているうちに、

「なぜ主力事業だった分野から、医療や先端素材の分野へ変われたのでしょうか」

「研究開発をいろいろな分野で行うことは、資本の分散にならないのでしょうか」

「なぜ多角化しているのに、うまくいっているのでしょうか」

「そこには独特の企業文化があるのではないでしょうか」

と、疑問が次々に出てきました。

気がついたら、1時間ほどAIと話していました。

そして面白かったのは、その企業について知識が増えたこと以上に、AIと音声で対話することそのものについて、新しい発見があったことでした。

「えーと」や「うーん」も会話の一部になる

テキストでAIを使うとき、私はある程度考えを整理してから質問を書きます。

ところが音声では、そうなりません。

「えーと……」

「うーん……」

「なんていうんだろう……」

と言いながら考えます。途中で言い直すこともありますし、自分でも何を聞きたいのか完全には分かっていない状態で話し始めることもあります。

最初は、こうした部分はAIにとって単なるノイズなのだと思っていました。

しかし、実際に長く対話していると、そう単純ではないように感じました。

言葉に詰まる。それ自体が「自分はここをまだうまく理解できていない」という情報になります。同じことを何度も違う言葉で聞いているなら、「自分はこの部分に強く興味を持っている」ということかもしれません。

完成した文章だけでは落ちてしまう情報が、音声には残っている。これはかなり面白い発見でした。

テキストは「考えてから入力する」。音声は「話しながら考える」

テキストの場合、考える→整理する→入力する→AIが答える、という順番になりやすいです。

一方、音声では、考える⇄話す⇄AIが応答する⇄また考える、という循環になります。「入力」と「思考」の境界が曖昧になるのです。

これは検索とはかなり違います。検索では、基本的には「何を調べたいのか」がある程度分かっている必要があります。ところが対話の場合、「自分は何を知りたいのか」そのものをAIとの会話によって見つけていくことができます。

今回の対話もそうでした。最初から「企業文化を研究しよう」と考えていたわけではありません。

株価について話し、事業分野について話し、研究開発について話し、会社の歴史について話しているうちに、

株価→成長分野→新規事業→研究開発→多角化→企業文化→会社の歴史

と、問いが枝分かれしていきました。最初からこの問いを検索窓に入力することは、おそらくできなかったと思います。

問いを育てるための道具

これまで私は、AIをかなりデジタルな存在として考えていました。質問を入力すると、情報を処理して、論理的な答えを返す。もちろん、それもAIの重要な機能です。

しかし音声で長く話してみると、少し違った側面が見えてきました。

人間の思考には、論理だけではない部分がかなりあります。迷う。言葉を探す。一度言ったことを撤回する。突然別のことを思いつく。話している途中で、自分が本当に気になっていたことに気づく。そうした一見非効率な部分も、実は思考なのだと思います。

音声AIでは、その「まだ整理されていない思考」を比較的そのまま外に出すことができる。だとすれば、AIを単なる情報検索ツールとして考えるのは、少し狭いのかもしれません。むしろ、AIを思考の壁打ち相手として使う、という表現のほうが近いはずです。

これは探究学習と相性が良いだけでなく、卒論のテーマ探しにも、小説の設定を掘り下げる作業にも使えると思います。「この人物はなぜこんな行動をするのでしょうか」とAIと話しているうちに、自分でも考えていなかった設定が生まれる。人間の中にある、まだ言葉になっていないものを引き出す使い方です。

仕事でも同じことが起きそうです。将来的にキーボードがなくなるというより、キーボード+マウス+音声AI、という組み合わせが一般的になるのかもしれません。資料を見ながら「この数字を前年と比較してください」と話しかける。そうなるとAIは「使うソフト」というより、仕事をしながら横で話している相手に近くなります。

教育や高齢者との対話にも、同じ構造の可能性があります。もちろん、人間とのコミュニケーションをAIに置き換えればよいという話ではありません。ただ、いつでも話しかけられて、同じ話を何度しても付き合ってくれる存在には、一定の価値があるはずです。「分からない」と言う前の、「うーん……なんかここが……」という段階から付き合ってくれる。音声AIの価値は、質問に答えられること以上に、質問になる前の段階から付き合えることにあるのかもしれません。


結局、何が分かったのか

肝心の企業分析については、明確な結論が出たわけではありません。「製品ではなく技術によって自分たちを定義してきた会社なのではないか」というところまで考えが進んだ、というのが正直なところです。

でも、それでよかったのだと思います。最初に立てた「株価が下がっているけれど、どう評価すればいいのだろう」という問いには、まだ答えられていません。その代わりに、最初には存在しなかった「なぜこの会社は変化し続けられたのか」という、もっと本質的な問いに出会いました。

そして不思議なことに、AIについて調べようと思って始めたわけでもないのに、最後にはAIそのものについて考えていました。

探究とは、最初に立てた問いの答えを見つけることだけではなく、対話や調査を続けるうちに、次の問いに出会うことなのかもしれません。

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