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【探究学習】大人の社会科見学ーー銀座のオーケーストアに行ったら、ビル一棟が「巨大なついで買い装置」だった

先日の休み、銀座を歩いていると、「オーケー」の看板が目に入りました。

たまたま近くを通りかかったということもありますが、少し前にテレビ東京の『カンブリア宮殿』でオーケーが取り上げられていたことを思い出し、入ってみることにしました。

銀座の一等地にあるオーケーストア。

いったい、どれくらい「銀座価格」になっているのだろう。

そんな軽い興味から地下へ降りてみたのですが、商品の値段は、地元にあるオーケーとほとんど変わりませんでした。

銀座なのに、この値段で本当に商売になるのだろうか。

番組に出演していた二宮涼太郎社長は、銀座店は赤字ではないと話していました。店内を歩いてみると、その理由が少し見えてきます。

普段使いの商品は、ほかの店舗とほぼ同じ値段。一方で、高めの酒やおつまみ、贈答用にもなりそうな果物、上等な肉や魚などが目につきました。

価格そのものを銀座仕様にするのではなく、何を多めに置くかを銀座仕様にしているのです。

同じ利益率でも、300円の商品と1万円の商品では、得られる利益額が違います。安さへの信頼を壊さず、単価の高い商品や、よく回転する総菜などを組み合わせることで、銀座の高い賃料を吸収しているのでしょう。

銀座なのに、郊外のショッピングモールのような顔ぶれ

しかし、さらに興味深かったのは、オーケーだけではありませんでした。

マロニエゲート銀座2のフロア案内を見ると、地下1階と地下2階がオーケー。1階から4階がユニクロ、5階がGU、6階がダイソー、Standard Products、THREEPPY。7階には、むさしの森珈琲、しゃぶ葉、くら寿司が入っています。

テナント名だけを並べると、銀座でなくても見かけそうな顔ぶれです。

ところが、実際に店を回ってみると、それぞれが普通の支店とは少し違います。

ユニクロは「UNIQLO TOKYO」という大型のグローバル旗艦店。ダイソーも、主要3ブランドを集めたグローバル旗艦店です。くら寿司やしゃぶ葉も、銀座店をグローバル旗艦店と位置づけています。

オーケーも、郊外型の安売りスーパーから、都心や関西へ進出する企業へ変わろうとしているところです。

つまり、ここに集まっているのは、単に有名なチェーン店ではありません。

本業の調子がよく、次の成長を目指し、そのためにブランドの見え方を一段引き上げたい企業が集まっているのです。

ユニクロは「安い服」から世界共通の生活文化へ。ダイソーは「100円ショップ」から総合生活ブランドへ。くら寿司やしゃぶ葉は、国内のファミリー向けチェーンから、海外にも通用する日本食の体験施設へ。

銀座に店を出すことで、低価格店が「世界に見せる日本ブランド」へ変わっていきます。

一方の銀座も、こうした店を受け入れることで、富裕層や観光客だけでなく、近隣住民や家族連れが日常的に訪れる街へ変わります。

銀座が大衆化すると同時に、大衆店が銀座化している。

そんな双方向の変化が、このビルの中で起きているように感じました。

オーケーだけを見るつもりが、服まで買っていた

もっとも、そんなことを考えたのは、家に帰ってからです。

当日はオーケーを見に行ったつもりだったのに、せっかくなのでユニクロやGUにも立ち寄り、結局2,000円ほど買い物をしていました。

考えてみれば、これは施設側が想定した通りの行動です。

テレビ番組を見てオーケーに興味を持つ。オーケーを目的にビルへ来る。せっかく来たので、ほかの階も見る。そして、予定になかったものを少し買う。

オーケーの宣伝がユニクロやGUの売上につながり、ユニクロの旗艦店があることがオーケーのイメージを引き上げる。各店舗が、互いの広告塔になっています。

そこで、ふと気づきました。

これは、100円ショップに入ったときと同じではないか。

100円ショップでは、目的の商品を探している途中で別の商品が目に入り、「この値段なら、まあいいか」とカゴに入れてしまいます。一品ずつは安くても、会計すると予定より多く使っています。

マロニエゲート銀座2は、その仕組みをビル一棟で行っているのです。

オーケーを見に来たついでにユニクロへ行く。ユニクロを見たついでにGUへ行く。ダイソーにも寄り、歩き疲れたら上の階で食事をする。

ビル全体を一つの店と考えれば、各テナントが売り場のコーナーで、エスカレーターが店内通路です。

食品代、服代、雑貨代、食事代は、それぞれ別の支出として感じられます。オーケーで3,000円、ユニクロで2,000円、ダイソーで700円、食事で1,500円。一つひとつは「それほど使っていない」と思えても、合計すれば当初の予定を大きく超えます。

いわば、ビル一棟を使った巨大な「ついで買い装置」です。

最新型のようで、実は昔ながらの百貨店だった

ただし、この構造はまったく新しいものではありません。

昔ながらの百貨店も、地下に食料品、低層から中層に衣料品、上層に生活雑貨、最上階にレストランを置いていました。

最上階の飲食店を目的に客を上まで運び、帰りに各階を見てもらう。最後に地下の食品売り場で夕食や手土産を買って帰る。生鮮品や冷凍食品を最後に買えるので、客にとっても合理的です。

マロニエゲート銀座2も、基本的には同じ構造です。

上の階で食事をし、ダイソーを見て、エスカレーターで降りながらGUやユニクロを回る。最後に地下のオーケーで、夕食や週末の食材を買う。

しかも、この建物は、かつて「プランタン銀座」でした。

一つの百貨店が服、雑貨、食品、飲食をまとめて編集していた建物を、現在は、それぞれの分野に強い専門チェーンが一階ずつ分担しています。

つまり、この施設は、百貨店を一度分解し、現代の巨大チェーンによって再び組み立てたものと見ることができます。

百貨店の空間設計は残り、売り場を運営する主体だけが変わったのです。

駐車料金まで、買い物の仕組みに組み込まれている

さらに調べてみると、駐車場の仕組みもよくできていました。

マロニエゲート銀座2の駐車料金は30分310円。1店舗で税込3,000円以上買うと1時間、5,000円以上で2時間、銀座2の駐車場利用者は1万円以上で3時間無料になります。

ここで重要なのは、複数店舗のレシートを合算できないことです。

ユニクロで2,000円、ダイソーで1,000円、オーケーで2,000円を使っても、合計5,000円としては扱われません。無料時間を得るには、一つの店で3,000円か5,000円まで買う必要があります。

すると、帰り際にこう考えます。

「駐車料金として1,000円以上払って何も残らないより、オーケーで食材を買った方がいいのではないか」

肉、魚、牛乳、酒、冷凍食品などをまとめれば、5,000円には比較的簡単に届きます。しかも、どうせ必要な食材です。重い商品も、そのまま地下の車へ運べます。

このビルに車を止め、銀座を散策し、近くでランチを食べる。帰る前に駐車料金を無料にするため、ユニクロやオーケーで買い物をする。

施設側から見れば、銀座の街へ流れた客を、駐車料金という見えない糸で最後に自分たちの店へ戻していることになります。

駐車場は単なる付帯設備ではなく、当日限りの買い物クーポンを先に渡す装置でもあるのです。



銀座の表通りとは、少し違う人たち

店内を歩いていて、もう一つ気づいたことがあります。

銀座の街を歩いている人たちに比べ、マロニエゲート銀座2の客は、服装や雰囲気が少しラフでした。中高年の夫婦や家族連れも多く見かけました。

私が訪れたのは、土曜日の午後3時ごろです。

もしかすると、車や電車でこのビルへ来て、上層階や近隣で昼食を取り、銀座や有楽町を歩き、帰宅前に食材を買っていた人たちなのかもしれません。

これは単なる印象でもないようです。

オーケー銀座店の開業前後を比較した人流分析では、マロニエゲート銀座2の来館者は全世代で増えましたが、特に50代から70代以上の増加が大きかったといいます。

さらに、来訪者の居住地特性からは、比較的所得の高い都心居住者、生活に余裕のあるファミリー層、働き盛りの単身者が多いと推定されています。

つまり、「安いスーパーに来る低所得層」という単純な話ではありません。

お金はあっても、日常品には合理的な価格を求める。住居や教育、旅行にはお金を使っても、毎日の牛乳や卵まで高級スーパーで買う必要はないと考える。

良い車で銀座へ来て、オーケーで安い食材をまとめ買いすることは、まったく矛盾しないのです。

服装の違いも、所得の違いというより、銀座へ来た目的の違いなのでしょう。

表通りを歩く人は、観光、高級店、百貨店、待ち合わせなど、「銀座へ出かける」服装をしています。一方、このビルを訪れる人は、ランチ、普段着、日用品、食料品という「週末の用事を済ませる」服装です。

同じ銀座の中に、二つの銀座があります。

一つは、着飾り、見られ、非日常を楽しむ銀座。

もう一つは、家族で食事をし、服や雑貨を見て、夕食の食材を買って帰る、日常の銀座です。



商業施設は、客の「一日」を設計する

現在、マロニエゲート銀座2の運営には、ファーストリテイリングが主導する新会社「ファーストリテイリング・プロパティ」が関わっています。ファーストリテイリングと総合不動産サービス会社のザイマックスが設立した会社で、商業施設や複合施設の企画、設計、運営管理を行います。

両社は、リアル店舗の役割が、単なる販売場所から、ブランドの世界観を体験してもらう場所へ変わっていると説明しています。

そう考えると、このビルのテナント構成にも納得できます。

ユニクロ、GU、ダイソー、オーケー、くら寿司、しゃぶ葉。

いずれも、低価格と品質を両立させ、大規模な仕入れ、物流、商品開発によって成長してきた企業です。そして今、国内の安いチェーン店から、世界に見せるブランドへ変わろうとしています。

このビルは、単に空いているフロアを貸しているのではありません。

上層階で昼食を食べさせ、中層階で雑貨や衣料品を見せ、地下で生活必需品を買って帰ってもらう。駐車場まで含め、客の移動、滞在時間、支出の順番を一つの体験として組み立てています。

商業施設が設計しているのは、売り場だけではありません。

そこで過ごす人の「一日」そのものなのです。

もちろん、だからといって、私たちが一方的にだまされているわけではありません。

利用者は、銀座で食事や散策を楽しみ、必要な服や食材を買い、駐車料金も節約できます。施設側は売上を得て、店舗はブランドを知ってもらえる。便利さと購買誘導が、きれいに重なっています。

オーケーを少し見て帰るつもりが、ユニクロやGUを回り、気づけば買い物をしていた私も、すっかりその仕組みの中にいました。

銀座のスーパーを見に行っただけのつもりが、いつの間にか、百貨店の歴史、企業のブランド戦略、人間の消費心理、そして銀座という街の変化まで見えてきた。

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