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【探究学習】持続可能な純喫茶について

先日、有楽町の交通会館の地下で、古い喫茶店に入りました。70代のおばさんが1人で切り盛りし、常連らしき60代後半の男女がタバコを吸いに立ち寄る。カウンター10席だけの、小さなお店でした。

そのときふと感じた違和感を、少し掘り下げてみたいと思います。


喫茶店の数は、本当に半分になったのか

全日本コーヒー協会の統計によれば、喫茶店数は1981年の約15万軒をピークに、2016年には約6万7000軒まで減少しています。30年でほぼ半分。厚労省の資料でも、2008年度頃の約29万件をピークに、現在は約20万件程度まで減ったとされています。

数字だけ見ると、恐ろしいほどの縮小です。

ただ、ここで気になったのは、この「喫茶店数」にスターバックスやドトールのような大手チェーンも含まれている、という点でした。統計上、喫茶店は法人・個人を問わず数えられていて、東京都では法人経営の割合がすでに53%を超えているというデータもあります。

とはいえ、実際の規模感を調べてみると、スターバックスは全国で約2,000店舗、ドトールやコメダも1,000店舗前後。喫茶店全体の店舗数(約5万〜6万店規模)からすれば、大手チェーンが占める割合は数%程度にすぎません。

つまり、この30年間の「半減」は、ほぼそのまま個人経営の喫茶店が姿を消していった軌跡だということになります。都心部を歩けばドトールやスタバばかり目につきますが、それは全体から見ればごく限定的な存在で、いかにこれまで個人経営の喫茶店という業態が分厚く存在していたかを、逆説的に物語っています。


喫茶店の「機能」を奪ったのは誰か

では、その空白を埋めたのは何か。

ひとつは、マクドナルドやモスバーガーといったファストフード、そしてファミリーレストランです。彼らは低価格でWi-Fiや電源を備え、長時間の滞在も許容する。モスバーガーが「モスカフェ」を打ち出すように、もはや業態としても喫茶店の役割を意識的に取り込んでいます。

背景には、子育て世帯の存在もあります。個人経営の喫茶店は、カウンター中心の狭い店内、子供用メニューの不在、「静かに過ごす大人の空間」という暗黙の前提など、家族連れにとってハードルの高い設計になっていることが多い。物価高が続く今、同じ「外で一息つく」なら、1000円近くする喫茶店より、ワンコインで済むファストフードを選ぶのは、経済合理性としては当然の流れでしょう。

つまり喫茶店は、家族連れという大きな客層を最初から狙っていなかった業態、とも言えます。だからこそ少子化とも相性が悪く、構造的にじわじわと縮小していきました。


高齢化・単身化という、もうひとつの追い風

ただし、話はそれだけでは終わりません。

高齢化と単身世帯の増加は、むしろ喫茶店的な空間を必要とする層を厚くしている、という側面もあるはずです。

- 1人でいても浮かない空間であること

- 深い付き合いを求めない、常連とマスターのちょうどいい距離感

- せかされない、ゆるやかな時間の流れ

『阿蘇』の年配の店員さんたちと、そこに集う60代後半の常連たちは、まさにこの条件に噛み合っていました。ファミレスやファストフードが家族連れやグループを主客とする空間だとすれば、喫茶店はもともと「1人客が浮かない」ことを前提に設計された、数少ない業態です。単身高齢者にとって、これは決して小さな価値ではありません。


それでも「持続可能」とは言えない理由

しかし、ここに構造的なジレンマがあります。

需要側の高齢者・単身者は増えている一方で、供給側の店主自身も同時に高齢化し、引退していくからです。『阿蘇』のおばさんも、「体が持つ限りやれるだけやったら畳む」というスタンスで店を続けているように見えました。利益を追わず、生き甲斐として、自分が食べていけるだけ稼げればいい。

需要と供給が同じスピードで縮小していくとすれば、この市場は開拓されないまま、静かに消えていく可能性が高い。

もし本当に高齢化・単身化という追い風を活かすのであれば、それは今の店主たちの自然な引退を待つのではなく、若い世代が「高齢者向け・単身者向けの居場所」として意識的に純喫茶を再定義し、新規開業していくような、世代を超えた継承の動きが必要になってくるのだと思います。

帝国データバンクの調査でも、コロナ禍以降、コーヒー単体の粗利ではなく「空間・体験の価値」の提供へシフトする喫茶店が増え、安定して黒字を確保する店が目立ってきているという分析があります。数だけを見れば縮小産業ですが、「何を売るか」を再定義できた店には、まだ生き残る道があるということでしょう。

『阿蘇』のような昭和の喫茶店が、あと何年残るのかは分かりません。ただ、その空白を埋めるのがファストフードだけでなく、いつか誰かが「持続可能な純喫茶」という形で引き継いでいく未来もあるのだと、少しだけ想像してみたくなりました。

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