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【探究学習】AI企業の価値は、いったい何で測ればいいのか——Googleの人材流出から考えた「見えない資産」

最近、GoogleのAI部門から有力な研究者が相次いで流出している、という内容の動画を見ました。

Googleといえば、世界最大級のIT企業です。

検索、YouTube、広告、クラウド、Androidなど、巨大なサービスをいくつも抱えています。

さらに、自前のデータセンターを持ち、AI向け半導体を開発し、DeepMindという世界トップクラスのAI研究組織まで持っている。

そう考えると、多少研究者が辞めたところで、巨大企業Googleが揺らぐとは思えません。

ところが、AI企業について考えているうちに、少し違った見方が必要なのではないかと思い始めました。

AI企業にとって「人」はどこまで資産なのか

たとえば製造業なら、優秀な技術者が何人か退職したとしても、工場は残ります。

製造設備も残る。

特許も設計図も残ります。

長年構築してきたサプライチェーンもあります。

もちろん人材は重要ですが、企業の能力のかなりの部分が「物」として会社の中に残ります。

ところがAI開発では、少し事情が違います。

最先端のモデルを作る方法や、学習を安定させるためのノウハウ、次の技術的突破口についての感覚などは、必ずしもマニュアルとして完全に保存されているわけではありません。

研究者本人の頭の中に存在している部分がかなり大きい。

だとすると、

「社員が何人辞めたか」

ではなく、

「そのモデルを実際に作っていた中心人物のうち、何人が辞めたか」

を見る必要が出てきます。

AI企業では、人材そのものが非常に大きな「見えない資産」なのかもしれません。


では、AI企業の価値はどう測るのか

ここで疑問が湧きました。

AI企業の企業価値とは、いったい何なのでしょう。

上場企業であれば、当然ながら売上があります。

営業利益があります。

現金があります。

データセンターがあります。

サーバーがあります。

独自の半導体もあります。

こうしたものなら、比較的数字として見ることができます。

ところがAI企業の価値には、それ以外のものが大量に含まれています。

たとえば、

  • 優秀な研究者

  • AIモデルそのものの性能

  • 独自の学習ノウハウ

  • 膨大なデータ

  • 計算資源

  • ユーザー基盤

  • AIを既存サービスへ組み込む能力

  • 将来新しい市場を作る可能性

などです。

ここまで来ると、企業価値を貸借対照表だけで把握するのはかなり難しくなります。

特に「将来性」というものの比重が非常に大きい。

あるAI技術が数年後に巨大市場を作るかもしれない。

しかし、ほとんど収益化できない可能性もある。

この不確実性に、株式市場は現在の価格をつけています。

そう考えると、AI関連企業の株価が大きく動きやすいのも当然なのかもしれません。

Googleは「AI企業」なのか

その点、Googleを運営するAlphabetはかなり特殊な企業です。

純粋なAIスタートアップではありません。

すでに検索広告やYouTubeなどから巨大な利益を生み出しています。

クラウド事業もあります。

スマートフォン向けOSもあります。

世界中にユーザーがいます。

そこにAI研究と巨大な計算インフラが乗っている。

つまりAlphabetの場合、

「AIが成功するかどうかだけに賭けている企業」

ではありません。

むしろ、

既存の巨大な利益基盤を使って、次のAI時代へ移行しようとしている企業

と考えたほうが分かりやすそうです。

ここにはかなりの強みがあります。

たとえば優秀なAIモデルができれば、それを検索に載せられる。

YouTubeに載せられる。

クラウドで企業に提供できる。

仕事用ソフトにも組み込める。

自社の半導体やデータセンターを使うこともできます。

新しい技術を作るだけではなく、それを世界中の人に届ける「道路」まで持っている

これは非常に大きな価値です。


それでも研究者が流出することの意味

一方で、今回の人材流出のニュースを見ると、巨大企業ならではの弱点も見えてきます。

研究者にとっては、巨大組織の中で一つの製品を改善し続けるよりも、小さな組織で新しい研究に挑戦するほうが魅力的な場合があります。

さらにAI業界では、OpenAIやAnthropicをはじめ、新しい企業が次々と登場しています。

資金も集まっています。

研究設備もあります。

そして何より、「次のAIを自分たちで作る」という強烈な目的があります。

Googleは長年、AI研究の中心地の一つでした。

しかし皮肉なことに、そのGoogleで育った研究者たちが外へ出て、新しいAI企業を作ったり、競合企業を強くしたりしている。

ある意味、現在のAI業界そのものが、

Googleの研究者たちが世界中へ拡散して作られた巨大な生態系

のようにも見えてきます。


Alphabetにはなぜ複数の株があるのか

今回調べていて、もう一つ興味深かったのがAlphabetの株式構造でした。

Alphabetには複数種類の株式があります。

一般の投資家が市場で購入できるものにも、議決権がある株と、原則として議決権を持たない株があります。

さらに創業者などが保有する、より強い議決権を持った株式も存在します。

なぜこんな仕組みになっているのか。

一つの理由は、創業者が会社の長期的な方向性を維持しやすくするためです。

通常の上場企業では、株主から、

「もっと利益を出せ」

「採算の合わない研究をやめろ」

「短期的な株主還元を増やせ」

といった圧力がかかることがあります。

しかしGoogleのように、何年利益につながるか分からない研究へ巨額の資金を投入する企業では、それでは難しい場合があります。

AI、自動運転、量子コンピュータ、ロボティクス。

こうした研究は、数年で成果が出るとは限りません。

そこで創業者側が強い議決権を維持することで、短期的な株価だけに振り回されにくい経営を可能にしている。

株式の種類という、一見すると単なる金融制度の話から、その企業がどんな時間軸で経営しようとしているのかまで見えてくるのは面白いところです。


株を買うことは「未来の仮説」を買うことなのか

企業について調べていると、PERや売上高、営業利益など、さまざまな数字が出てきます。

もちろん、こうした指標は重要です。

しかしAI企業について考えるほど、それだけでは足りないと感じます。

現在どれだけ利益を出しているのか。

どれだけキャッシュを持っているのか。

どれだけ設備を持っているのか。

それに加えて、

その企業が5年後、10年後にどんな位置にいるのか

という仮説まで考えなければならない。

これはかなり難しい。

しかし同時に、とても面白い。

企業の株を持つということは、単に現在の利益の一部を所有するだけではなく、

「この会社は未来でも重要な存在であり続けるだろう」

という仮説を少しだけ買うことなのかもしれません。


「安く買う」より、「なぜ欲しいのか」を考える

今回、株式の注文方法についても調べていて、指値注文には面白い側面があると感じました。

「この価格なら買いたい」という価格をあらかじめ決めておく方法です。

当然ながら、その価格まで下がらなければ買えません。

しかし、それでいい場合もあります。

ぜひ欲しい会社なら現在の価格で買う。

興味はあるけれど、そこまで積極的に買いたいわけではない企業なら、

「ここまで下がったら買ってもいい」

という価格を決めて待つ。

そして一定期間たっても買えなければ、もう一度考え直す。

これは単なる注文方法というより、投資判断に「賞味期限」を設定する方法なのかもしれません。

特に米国株のように値動きが大きい株では、少し低い価格で指値を入れ、1〜2週間程度で判断を更新するという考え方は使いやすそうです。

ただし、決算発表など大きなイベントをまたぐ場合には注意が必要です。

悪い決算によって株価が急落し、以前決めた指値で自動的に買えてしまうこともあるからです。

つまり、

価格を決めること以上に、「その価格を決めた理由が今でも有効なのか」を確認することが重要

なのだと思います。


AI時代には「会社を見る目」も変わる

今回、Googleの人材流出というニュースから始まって、企業価値について考えてみました。

昔なら、

売上
利益
工場
土地
特許

といったものが企業の価値を考える中心だったのかもしれません。

しかしAI企業では、

人材
知識
データ
計算能力
モデル
ユーザー
ネットワーク
未来の可能性

といった、数字にしにくいものの比重が急速に大きくなっています。

そして面白いのは、それらが互いにつながっていることです。

優秀な研究者がいるから良いAIができる。

良いAIがあるからユーザーが増える。

ユーザーが増えるからデータが集まる。

データが集まるからAIがさらに改善される。

それを動かすためにデータセンターが必要になる。

巨大な設備投資を可能にするためには、既存事業から生まれるキャッシュが必要になる。

AI企業の価値とは、どれか一つではなく、こうした要素が循環する仕組みそのものなのかもしれません。

だとすると、これから企業を見るときには、決算書だけでなく、

「この会社には、どんな人がいるのか」

「その人たちはなぜこの会社にいるのか」

「技術をどうやって利益に変えるのか」

「その会社にしかないものは何なのか」

まで考える必要があります。

Googleからの人材流出というニュースは、単なる転職ニュースではなく、

AI時代には、企業価値そのものの定義が変わりつつある

ことを示しているように感じました。

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