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サモトラケのニケ

ルーヴル美術館について書くことにしようと決めた時、いちばん初めに何を取り上げるかはもう決まっていた。サモトラケのニケである。

ルーヴルを訪れた友人たちに感想を訊くと、みな口を揃えてニケがよかったと答える。広々とした階段の踊り場に展示された勝利の女神の彫像は、彫刻に対する特別な興味がなくとも、一目見ただけで「なんだかこれはすごいぞ」と思わせる力があるのだ。その印象は古今東西の美術をめぐる長い見学のあとでも色褪せることはない。

ニケの彫刻としての美しさについてはすでに多くの人が詳細に書き綴っている。試しに「サモトラケのニケ」と検索すれば、専門家による解説から親しみやすいブログ記事まで、さまざまな人が彫像の魅力を言葉にしたものが見つかる。私は美術の専門家でも才走る美文家でもないので、わざわざここで新たに語る必要はないだろう。代わりに展示方法の妙について簡単に触れるにとどめよう。

この彫像は長い回廊を臨む「ダリュの階段」の踊り場に設置されている。ルネサンスや古代ローマの彫刻が並ぶ展示室から先へ進もうと訪問者が顔を上げると、神々しいニケの姿がたった今降り立ったかのように現れる。我々の視線は歩を進めるごとに大きくなる、舳先に立ち風を受ける女神の姿にまんまと釘付けになるのだ。天井に設けられた窓から光が降り注ぎ、パロス島の大理石で作られたこの像の姿をさらに神聖なものにしている。陽が落ちたあと眺めてもまた異なる趣があり、日没の早い冬はふたつの顔を拝むことができる。

建築家エクトル・ルフュエル(Hector Lefuel)は展示作品を正面、右、左の三方向から(そしてさまざまな高さから)眺められるように階段を設計した。ニケは1883年以来この場所に設置されているらしい。当時は天井部分に展示に合わせた華やかなモザイク画が施されていたというが、現在は改装され、より簡素な背景になっている。いずれにせよ、他でもないこの場所に、この像を置いた者の采配に脱帽である。展示にとりたて期待も抱かずやってきた来訪者たちにさえここまで強い印象を残すのは、この演出の力が多分にあることに疑いの余地はない。

右下から見たサモトラケのニケ

ちなみに、案内板によるとニケが一番美しく見えるのは像に向かって右下から見上げたアングルらしい。左半身の方が布や羽の彫りが丹念なのだそうだ。


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