【人生の栞】ハイカラな祖母と、私を整える「花を選ぶ時間」
こんにちは、てるてるです。
せわしない日々の中で、月に一度だけ、立ち止まって深呼吸ができる場所があります。
それは、亡き祖母が愛した花屋さんです。
彼女が旅立ってからの一年、私は導かれるようにその店へ通うようになりました。
それは供養というカタチを借りて、私が私自身を整え、お洒落で粋だった祖母と「対話」をするための、かけがえのない時間です。
男気あふれる、永遠のハイカラさん
生前の祖母を一言で表すなら、「男気のあるハイカラさん」でした。
いくつになってもお洒落心を忘れない人で、急な入院が決まった日のやり取りは今も忘れられません。
私が用意した新品のパジャマを手に取り、彼女は首をかしげてこう言ったのです。
「これ、年寄りっぽく見えない?」
「あなたも立派にお年寄りの仲間ですよ」という言葉を飲み込み、「この小さな花柄、今、若い子の間で流行ってるんだよ」と伝えると、満足そうに頷く……そんな可愛い人でした。
また、孫の私に対しても一切の妥協を許さない「男気」がありました。
カフェの会計で私が財布を出そうものなら、ものすごい剣幕で睨みつけ、「財布はしまいなさい!」と私の手のひらをぴしゃり。
現金を強引に私のカバンに突っ込み、「私が生きてる間は、孫に支払わせちゃダメなのよ」と。
その迷いのない格好よさに甘えて、私はいつも喜んでご馳走になっていました。
仏花ではなく、彼女が「今」着たい色を
そんな祖母が旅立って一年。
花が好きだった祖母。
彼女が通っていた花屋に、今度は私が足を運ぶようになりました。
初めて訪れた日、店員さんに用途を聞かれ「祖母への……」と答えると、「では、仏花の花束でよろしいですか?」と聞かれました。
その瞬間、あのパジャマの時の顔が浮かんだのです。
「いえ、仏花ではなくて……。今日は、本人が好きだった色の花束にしてください」
出来上がったのは、青や紫を基調にした、シックで大人びた花束。
それを供えると、まるで祖母が新しい服を纏(まと)ったときのように、その場がパッと華やぎました。
それからは、春には淡いピンク、夏にはひまわり。
一年忌のホリデーシーズンには、思わず「私が欲しい!」と呟いてしまうほど可愛い、季節の旬を詰め込んだ花束を贈りました。




棺に納めた、自慢のローファー
祖母の葬儀の日、本当に最後のお別れの場面。
棺に愛用の履き物を入れることになり、しんと静まり返る厳粛な空気の中、私はどうしても黙っていられませんでした。
「……ねえ、この靴で合ってる?」
母と叔母が不思議そうに振り返る中、私は続けました。
「だって、キャメル色のローファーに、『白いファー』が付いてるよ?」
母たちは一瞬の間を置いて、吹き出しました。
「そうなのよ、そのファー付き、お気に入りだったのよ」と。
最後のお別れなのに、やっぱり「祖母らしさ」の勝ち。
不謹慎かもしれませんが、私たちは笑いながら彼女を送り出しました。
あんなにハイカラな靴で天国を歩く人は、きっと彼女くらいでしょう。
旅のおわりに
花屋で花を選ぶ時間は、今や私にとっても大切な「自分を整える時間」です。
「おばあちゃん、今月はこんな花にしたよ」
色鮮やかな花々に触れ、旬の香りを吸い込むとき、私の心も静かに凪(な)いでいきます。
祖母が遺してくれたのは、思い出だけではありません。
花を選び、季節を愛で、日常に彩りを添えるという、健やかに生きるための「心の知恵」。
今日も私は、あのファー付きローファーを履いて颯爽と歩いているであろう祖母を想いながら、一番きれいな花を探しに花屋へ足を運びます。
2026.08.03 追記
ハイカラで男気のある祖母を知ってもらいたくて、お題に参加させていただきました。
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最後まで読んで頂きありがとうございます💐頂いたチップは、祖母へのお花のプレゼントに変えて、そっと想いを届けたいと思います🌼温かなお気持ち、本当にありがとうございます。