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〔仮題〕大阪 都市 概論⑥

〔サムネイル写真の出典〕
毎日新聞社が「れとろ探訪」と題してホームページに掲載された写真を使用しています。


【まえがき】
ゴールデンウィーク、いかがおすごしですか?

ゴールデンウィークが連休になる方は、ぜひ、普段の疲労やストレスから解き放たれて、大いにリフレッシュなさって下さいませ。

ゴールデンウィーク、ガッツリ、勉学や仕事等に専念し、頑張られる方は、大変お疲れ様です。

本シリーズについて、前回、⑤を投稿してから、諸事情あり、気が付けば、25日程、間が開いてしまいました。

このシリーズをどれぐらいの方が楽しみに読んで下さっているのかは定かでありませんが、そんな方がおられましたら、申し訳ありません。

本日は、ゴールデンウィークということで、タイトルにふさわしく、大阪独自のまちづくりとして、御堂筋をテーマに、特に御堂筋の美しい景観形成と企業ニーズのせめぎ合いに焦点を当て、綴りたいと思います。


【大阪を代表するメインストリート、御堂筋】御堂筋は、全長約4km、道路幅員約44mの、南側一方通行の道路で、梅田と難波を結ぶ、大阪都心部の“背骨”を形成するメインストリートである。

欧陽菲菲さんの「雨の御堂筋」や、坂本スミ子さんの「たそがれの御堂筋」など、昭和歌謡のヒット曲で歌われ、全国的にも有名な道路である。

その成り立ちなどについては、本シリーズの②に詳しく書いたので、そちらをご参照願いたい。


【美しく、風格ある、御堂筋】
今の御堂筋が概成した当時、その土地、その土地で建設可能な建築物の規模は、「都市計画法」の前身に当たる「市街地建築物法」に基づき、“高さ”により制限されていた。

「都市計画法」に取って代わられてからは、建物の「高さ」の代わりに「容積率」(土地の広さに対して、どれだけの建物床を作ることが可能なのかを示す比率)が定められ、建てられる建築物の規模は制限されることになっている。

なぜ、その土地で建てられる建物の規模を制限しないといけないのか?

建物を建てると、
建物用途が住宅なのか、業務施設なのか、商業施設なのか、はたまた、データセンターみたいなものなのかにもよるが、
人が生活し、或いは活動することとなる。

出入りには自動車を使う場合も、自転車や徒歩による場合もあるだろう。

つまり、建物が建つということは、
道路を使う自動車等が増加し、
また、人間が暮らし、活動するうえで、水道を使い、下水道を使い…といった風に、
建物の用途や規模に応じて、都市インフラへの需要(負荷)が生じることを意味する。

都心部であれば、多くの大規模建物が立地するため、建物規模をコントロールしなければ、都市インフラが“パンク”してしまうことになる訳だ。

現行の「都市計画法」では、それぞれのエリア単位で、「用途地域」というものが定められ、具体的には、建てることが可能な「建物用途」と「建ぺい率」(=建築用地の面積に対し、どれだけの面積を建築用地として使って良いかを表す比率)、「容積率」とが定められている。


さて、話を御堂筋が概成した当時に戻すと、建物規模は「高さ」により制限され、御堂筋ではその高さが31mとされていた。(これは、当時、「百尺制限」と呼ばれていた。)

御堂筋は、上述した通り、大阪都心部の“背骨”に当たる道路であり、沿道に立地することが利便性も高く、ステータスでもあった。

このため、金融機関の本店等、業務機能を有する大企業の建物が軒を並べ、いずれも、高さ制限ギリギリまで建物を建てたことから、沿道の建物の連なりにより、御堂筋沿道に高さ31mのスカイラインが形成されることとなる。

御堂筋には、街路樹の銀杏並木も立派に育ち、結果、広幅員道路、銀杏並木、31mのスカイライン、重厚な石造りやネオ・バロック様式の威厳ある建物の連続性、御堂筋の語源となった歴史的な寺院である北御堂と南御堂の立地など、わが国でも稀有な都市景観が御堂筋に形成されることとなった。


【建て替えられない御堂筋】
御堂筋は、長年に亘り、こうした御堂筋を御堂筋足らしめる都市景観を維持していく。

上述のとおり、「市街地建築物法」が「都市計画法」に取って代わられ、高さの規制がなくなり、容積率だけの縛りを受けることになってからも、大阪市からの行政指導により、31mのスカイラインが維持された。

しかし、御堂筋のこうしたレギュレーションのため、御堂筋はだんだんと社会の潮流に取り残されていくこととなる。

つまり、歪が生じ、いくつかの課題が顕在化するのである。

そのうち、最も深刻だったのが、御堂筋からの本社機能等、業務機能の流出だった。

地価の高い御堂筋では、当然、床の需要も高く、土地の高度利用が求められる。

しかし、建物高さを31mで制限されているため、建て替えても容積率を使い切ることができない。

地下を掘れば、床を作れるが、地上に作るより、明らかに割高で、非効率だった。

こうしたことから、業務施設として、時代の要請に合わせ、より高い天井、より広い床が求められるにも関わらず、十分に叶えられず、結果、建て替えたくても、建て替えられないという事態に陥る。

一方で、大阪市内の他の拠点(それは梅田周辺であり、中之島であり、といったところだが、)であれば、普通に容積率に見合った建物を建築できる。

そうなると、企業の判断は簡単だ。

御堂筋に多く立地していた銀行の本店機能を始め、多くの大企業の本社機能が、他の拠点へと流出し始めたのである。


【レギュレーションの見直しと景観の保全】
大阪市は、メインストリート・御堂筋から大企業が流出するという課題に直面するも、
御堂筋で、長年に亘り、形成され、維持されてきた31mのスカイラインを中心とする、御堂筋独自の都市景観の保全も要請されることとなり、
その両立を実現するための方策の検討に腐心する。

その結果、御堂筋沿道の建築のレギュレーションが見直されることとなった。

では、どうしたのか?

建築物を二段構えで建てることが考えられたのである。

建物のうち、御堂筋に接する部分は、相変わらず、高さを31mに制限する。

この、建物の高さ31mの面を“基壇部”として、“基壇部”より上の部分にも建物を建てられるようにしたのである。

ここからが、苦心の跡が見られる部分となるのであるが、
“基壇部”よりも上の部分については、御堂筋からセットバックしないと建てられないとした。

そして、そのセットバック部分の建物について、御堂筋の反対側から見て45度の角度から上にはみ出さない、
つまり、御堂筋の対岸から仰角45度で見上げても、セットバック部分が見えなければ許可されることとしたのである。

こうして、企業が求める、容積率に見合った、より床面積の大きな建物に建て替えたいという要請を満たしつつ、
“基壇部”を31mで連続させつつ、セットバック部分のより高い建物を対岸からは見えないようにすることで、31mのスカイライン、つまりは御堂筋の景観も守る
というレギュレーションが実現を見たのである。

もちろん、視点場は、対岸の真正面に限られる訳ではなく、離れた場所から斜め上を仰ぎ見れば“基壇部”の上の建物も見えてしまうという点では完全な対策ではなかったものの、御堂筋からパッと見て、31mの高さに“基壇部”が連続することから、セットバック部分の景観上の影響は最小限に抑えられたといって、間違いないだろう。

企業の要請と景観の保全のために、こうしたレギュレーションを捻り出した、当時の大阪市の担当者に、敬意を表したい思いだ。


【あとがき】
本稿では、御堂筋で都市景観が大切にされる一方、本社機能の流出という課題に直面する中、当時の都市計画の担当者が、どう対応したのかを概観した。

しかし、御堂筋には、まだまだ、改善せねばならない課題が山積していた。

このため、次の稿では、引き続き、御堂筋がどんな課題を抱え、それにどう対処したのかを見ていきたいと思う。


今回も長文となりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、引き続き、素敵なゴールデンウィークをおすごし下さい。



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