【小説】マイネ・フロイデ(プロローグ)
【夕暮れ時の公園にて】
僕とハマちゃんは、公園のベンチに並んで座っていた。
周りでは、子供たちがジャングルジムが付随したような滑り台や、鉄パイプで組まれたような回せる地球儀状の遊具、ブランコ、シーソー等に夢中になり、或いは追いかけっこをしてはしゃぎ、あちこちから歓声や笑い声が響いていた。
そんな中、僕たちはといえば、静かに語り合っていた。
否、正確に言えば、僕の片想いの悩みをハマちゃんに聞いてもらっていた。
当時、僕も、ハマちゃんも、大学2年生。
そして、僕の片想いの相手は、中学時代、3年間想いを寄せ続けたなおちゃん。
別々の高校に進学し、中学卒業後、全く接点はなかった。
それでも、僕は、なおちゃんが忘れられず、なおちゃんへの恋心は中学時代から何一つ変わっていなかった。
どう考えても、叶わぬ恋ー
そんな現実が僕にはあまりにつらすぎた。
僕は、抱えきれなくなり、溢れ出す想いを、ハマちゃんに聞いてもらうことで、放熱するとともに、あるハズのない救いを求めていたのかもしれない。
ハマちゃんはといえば、僕の出口のない、同じ場所をぐるぐると巡るばかりの話しに、ずっと耳を傾け、時折、僕にかすかに明るい未来を感じさせるような励ましのことばを挟み、向き合ってくれていた。
やがて、日が傾き始め、子供たちが何人かずつ家路につき、公園は静けさに包まれていった。
空は茜色に染まり、やがて、夜の帷も降り始め、天頂から濃い青、さらに紺色へと変わってゆく。
美しきグラデーションは、空一面、底の見えない漆黒となり、公園内はところどころが街路灯に照らし出された。
僕たちは、何時間、すごしていたのだろう。
公園のベンチから眺めた空、
僕たちの間を吹き抜けた爽やかな風、
隣でいつまでも付き合ってくれた友の姿、
何より、僕を包んでくれた親友の温かな心。
あれから三十年余りの歳月が流れたけれど、
時を忘れてすごし、
あの公園で感じたすべてが、
今も、美しきまま、僕の記憶の中で鮮明に息づいている。
【Golden Age of My Youth】
自らの人生を振り返ると、幼き頃も、小学生の頃も、中学生の頃も、大学生の頃も、それ以降も、それぞれに、満たされ、輝いていたときを思い起こすことができる。
けれども、僕の青春の中で、最も輝いていたのは、間違いなく、高校時代だったと思っている。
冒頭の想い出話に登場してもらったハマちゃんも、高校時代に出会った親友だ。
今回、僕は、そんな輝ける時代を、友人たちの想い出とともに、振り返り、書き残したいとの思いから、ペンを執ることとした。
僕たちは、いわゆる“進学校”に入り、出会い、ともにすごし、仲間となり、一生ものの絆を紡いだ。
“進学校”へ進学した僕たちだったけれど、今思えば、まだまだ子どもで、粗野で、怖いもの知らずで、世間知らずで、自由で、夢見心地で、恋に恋焦がれ、ちょっぴり繊細で、総じて言うと“アホ”だったように思う。
大学へ進学し、社会へ出て、自ら、生きていかねばならないことなんて、我がことと思っていないかのように、ただただ、毎日が楽しければ、それでいい、ぐらいに思っていた。
あの時代に、あの仲間が集まったからこそ、皆が“アホ”でいられたんだと思う。
この小説を読まれた、かつての青年が、自らの青春を
「そんなこともあったよね。」
なんて思い出され、
現在の青年が、
「そんな風に楽しくすごしたいものだね。」
なんて思っていただけたら、幸いです。
どうぞ、よろしくお願いします。
〔プロローグ完〕
【あとがき】
処女作「(仮称)桜を守る」を書いたことで、小説を書く楽しさに目覚め、全話、書き終えた後、ずっと、次はどんな話を書こうかと考えていました。
そんな中、ずっと以前から、書きたい、書き残したいと考えていた、僕の高校時代をモチーフにした小説を書くのはどうだろうという考えが強くなってきました。
高校時代から、気が付けば、40年程が経っており、あれだけ鮮明に覚えていたエピソードなんかも、徐々に薄れてきているようにも思え、今、書かねば、書く機会を失いかねないという危機感も芽生えてきました。
そんな訳で、素材も、登場人物も、揃っているものの、構成等は、まだ、これから練らねばならない本小説を書き始めることにしました。
前作同様、今回も、凡そのラストシーンは思い描いているものの、前作と違い、素材や登場人物が多い分、上手く着地させることができるのか、不安もありますが、一つ、一つのエピソードが、それぞれに、そこそこ面白くなるはずなので、読んで、楽しんでいただけるものにはなるように思っています。
僕は、本当に、ずっと以前より、書くことを心に決めていたものなので、必ず書き終えます。
ですので、よろしければ、最後まで、お付き合いいただけましたら幸いです。
今回も、最後までお読み下さり、ありがとうございました。
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