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【小説】(仮称)桜を守る〔第一話〕

【はじめに】
これまで、ある程度、構想自体は持っていたのですが、今回、初めて、小説の投稿を始めます。
その第一話が本稿となります。
まだ、粗々のアウトライン的なものになってしまうのですが、皆さまの反応等を拝見しながら、場合によると、しっかり作り込みをした上で、小説の新人賞等へチャレンジするといったことも視野に入れています。
温かい目でお読みいただけましたら、幸いです。


【プロローグ】
1月17日の未明、僕は、突然、ドンと激しく突き上げられた感覚に、「何事?」と訳のわからぬまま、目覚めた。
暗い部屋で、轟音とともに、家が激しく揺さぶられ、軋むのを聞きながら、僕も激しい揺れに身を任せることしかできない。
本棚から、バサバサバサっと多数の本が落ち、僕は反射的に両腕で頭を抱え込む。
何かとんでもなく重く固いもので、激しく打ち付けられたのを感じた。
そこから先の記憶は、ない。

僕が次に目覚めた時、白い天井がぼんやりと見えた。
点滴のパックから、水滴が、ポタッポタッと落ちている。
ピッピッと心臓の鼓動に合わせ、電子音が鳴っている。
僕は身体を動かそうとしたが、身体中に痛みが走る。
どうやら、僕は入院しているようだ。

阪神・淡路大震災だったのだと、後に知った。

さらに、その後、僕はいくつもの衝撃的な事実を知ることとなった。

木造2階建てのわが家は全壊。
僕の小・中・高校時代の友人に、何人も大怪我をし、亡くなった者もいた。
そして、両親は、亡くなっていた。

僕は、ひとりぼっちになってしまった。

小さいながら、会社を経営していた父が残してくれていた銀行預金だけが、僕に残された全てだった。

僕は大学受験を諦めた。
そして、悲しみとやるせなさしかない神戸を避けるように大阪へ逃れ、ワンルームマンションの一部屋を借りた。
僕は、悲しみと失意の中、何をするでもなく、モノクロームの世界で新生活を始めた。


【出会い】
あれから15年程が経過し、僕は三十代半ばになっていた。
定職に就くでもなく、居酒屋でアルバイトをしながら、倹しく暮らしていた。
生活費の足りない部分には、親が残してくれた預金を充てた。

3月11日の午後、僕は居酒屋へ出勤し、開店準備を行っていた。
その時、揺れを感じた。

地震?

ゆら〜り、ゆら〜りと、ゆっくり、大きく揺れている。
何とも気持ちが悪い揺れがとても長く続いた。

店のTVを点けた。
東北地方で大きな地震が発生したらしかった。アナウンサーは、
「落ち着いて行動して下さい。」
「できるだけ高い所へ避難して下さい。」
と、必死で呼び掛けていた。

それが、東日本大震災だった。

阪神・淡路大震災のことを思い返し、あまり大きな被害が生じないことを願った。
しかし、事実は、津波の襲来や原発のメルトダウンなど、未曾有の大災害となってしまった。

それから一月程が経った日のことだった。
仕事帰り、家路を歩いていると、公園に、照明に照らされ、フワッと白く光る桜が目に入った。
僕は吸い寄せられるように、人気のない公園へと入って行った。

するとー
咲き誇る桜の下にあるベンチに、一人、女の子が座っているのが目に入った。
年の頃は、まだ、中高生ぐらいのようだった。

「こんな遅い時間に、こんな所に、若い娘が一人でいたら、何されるかわからんよな…。」
なんて思い、僕は、思わず、声を掛けた。

「もう遅いで。
こんな所に一人でおったら、危ないよ。」

しかし、次の瞬間、僕はハッとすることになる。

顔を上げ、僕を見た女の子は、虚ろな瞳から涙を流していた。
ポロポロポロポロと、涙を流していた。

僕は、慌てて駆け寄り、彼女の正面に立ち、
「どないしたんや? 何かあったんか?」
と早口に問い掛けていた。

彼女は、視線を下に向け、大きく首を横に振った。


【あの時の自分を重ねて】
僕は、
「隣、座って、いい?」
と、一言、断ってから、彼女の隣に、半人分程の間を開けて、腰掛けた。

「どうしたの? 誰かに何かされたん?」

彼女は、再び、首を横に振った。

「何があったんかはわからんけど、もう遅いし、危ないし、帰った方がええよ。
ご両親も心配してると思うし。」

すると、彼女は顔を上げ、僕を真っ直ぐに見て、
「お父さんも、お母さんも、死んじゃった。」
と言い、また、ボロボロボロッと大粒の涙を零した。

僕は、ハッと、一月前の地震を思い出し、
「え、それって、東日本大震災で…?」
と言うと、彼女はうるうるした瞳で僕を見つめたまま、小さく頷いた。

「ごめん、辛いことを言わせてしまったね。」
と、僕は小さく頭を下げた。

「でも、どうして、東北の子が、こんな所に…?」
と、僕が尋ねると、彼女は、ようやく、重い口を開き、一人語りのように話し始めた。

今、高校3年生であること。
両親と3人で宮城で暮らしていたこと。
東日本大震災で自宅が津波に襲われ流されてしまったこと。
両親は地震のため、亡くなってしまったこと。利き手の右腕に大怪我を負い、地震直後から、入院していたこと。
アニメーターになりたくて、春から東京の専門学校に通う予定であったけれど、右腕の神経に損傷があり、ペンを上手く握ることができなくなり、断念したこと。
遠い親戚が大阪に住んでいたので、退院後、身を寄せようと大阪へ出てきたものの、どうしても連絡がつかないこと。
住む場所も、頼る先も、何もなく、途方に暮れていたこと。

僕は、彼女がか弱い声で、振り絞るように、話すのを聞きながら、また、ポロポロと落涙していた。
そして、あの時、突然、一人、この世の中に放り出され、隔絶されたかのように感じたことを思い出していた。

この子は、あの時の、僕だー

この子を放っておけない。
そう、思った。

「わかった。辛かったね。」
と、彼女の心に寄り添い、重ねて、
「これは、僕からの提案なのだけど…」
と続けた。

君が嫌でなければ、僕に君を守らせてくれないか?

彼女は、驚いたように、目を見開き、僕を見た。

「僕の家で、暫く、暮らさないか?
もちろん、君には指一本触れない。
約束する。」

ジッと僕を見ている彼女に、僕自身も、また、阪神・淡路大震災で、彼女と同じ辛い思いをしたことを話した。

「だから、君を放っておけないって思ったんだ。僕に、君を守らせてくれないか?」

「ありがとう…、邪魔じゃなかったら、よろしくお願いします。」
と、彼女は言った。

この夜から、彼女は、僕の家で暮らすことになった。
〔第一話完〕


最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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