「じゅっ」の瞬間を味わう。台所の特権|27皿






家庭料理の醍醐味。
五感で「変化」を、愉しみ味わえること。
フライパンの熱々の厚揚げに、醤油をじゅっ!と回したときに立ち上る、甘く香ばしい香り。
鍋の蓋を開けると、筋が透けて見えるようになっている純白の蕪。
重ね煮の鍋、お玉を底からすくい上げた時、湧き出てくるような、野菜が生み出したスープ
揚げ鍋のすぐ隣、どんな料亭よりも短距離で味わえる、本当の揚げたて、さくさくの天ぷら。次の揚げ音がBGMの特等席。
せいろの蓋を取ると、湯気を顔いっぱいに浴びて、麗しい中身が湯気の隙間に見える一瞬。
この瞬間は、私だけしか味わえない。
料理をする者の特等席。
家庭料理人、ニヤリと口角が上がる

焼
長芋バター
バターと醤油って本当いい相棒だ。
バターのふんわり広がるまどろみに、
ごく細く輪郭をきめてくれるような醤油。
長芋はしっかり分厚くして
バター醤油に挟まれた、
間のほくほく山芋味を愉しむ。

皮を剥かないのは小さな拘り。
密かな香ばしさを愉しむ。
(と格好つけながら、らくを選んでいるだけかもしれない)
菜花の苦味がデザート

白みそポークステーキ
慌ただしい平日には、味噌が活躍してくれる。
漬けておくだけ、焼くだけでおいしい。

前の晩に白みそに漬ける。
白みそは塩味がやさしいので、焼くときに岩塩を振る。表面が焼けたら蓋をする。
焦がし味噌の香ばしさといったら。フライパンの前にいない人が可哀想になるくらいだ。



端切れきんぴら
牛肉が余ったのできんぴらを作ることにする。
牛肉の端切れはいい調味料。甘い脂味。
その時居合わせた、キクイモ、蓮根、差し色で起用された人参の根菜三姉妹。
牛蒡がいないので歯応えがマイルド。しゃきほくとろ。
牛の甘い脂で根菜を炒め
酒でじゅわっと甘さを含ませ、味醂でてりっと甘さを絡め、最後に醤油でふわっと甘さを注ぐ。
"甘さ"という言葉ひとつしかないのが不便なくらいだ。
針生姜でたまにキリッとする。


回鍋肉(みたいなもの)

韓国味噌のぎゅっと濃縮されたはっきりした旨味や甘みがこの料理に合うと思った。

豚ももはもろみに漬け1、2日。
(拘りではない。冷蔵庫で生き残ってもらうため)
包丁の背でタンっと潰した大蒜の香りを油に忍ばせたら、焦げないように取り出す。

大蒜の香りでキャベツを炒める。
キャベツの鮮やかさが魅力だと思っているので、手短に、蒸すように。
適当に切ったのにどうしてこうも綺麗な色のグラデーションを見せてくれるのだろう、釘付けになる。
隣のコンロの味噌汁から、お玉一杯拝借した出汁をざっと回して、鮮やかになったら引き上げる。



肉は噛みごたえある厚めカット。
噛んでいるうちにぎゅうぎゅうと旨みを感じるしくみ。
その横に韓国味噌とコチュジャンを置く。焦がして香ばしくする企み。
焦げつく手前で酒と、再度出汁を回し入れ、じゅっと湯気の上がったところにキャベツを戻して、みんなが馴染んだら出来上がり。



厚揚げ醤油ステーキ
醤油店さんが言った「熱々のお揚げに、じゅっ」という言葉に心が持っていかれ、厚揚げを買いに走った。

生醤油の秘めた香りが、ぶわっと広がる。
この日まで、生醤油を「じゅっ」としてしまうなんて勿体無い、と思っていた。
生でこそ貴重で、火入れ=劣化のイメージがあったのだろう。
それにフライパンも汚れるし、皿に盛ってからかける方が合理的、と思っていた。
・
・
ところが、火入れ醤油の価値がひっくり返った。
先日、一年かけて仕込んだ自分の醤油に火入れした時のこと。
ひと匙舐めると、麺つゆ⁈甘い。ずっと舌に纏わりつくような余韻。香りも向かってくる。
これを五感で体験したから、醤油の料理感が変わってきそう。


青梗菜醤油炒め



醤油作りで、たっぷり残された搾りかすのほうーー「もろみ」が旨みぎゅうぎゅうで美味しくて、なぜ人は搾って液体の方を選んだのか、分からなくさえなった。
ごま油を熱し、つるつるの青梗菜を置いたら、生姜のすりおろし、もろみをちりばめ、
仕上げにじゅっと醤油を回す。
暫く日本酒が進みそう。
中華丼みたいなもの

大蒜+生姜+だし+いしる=中華風。(わがやの方程式)
筍を分厚く切る。大きくて潰れた筍なので形は揃わない。そこがいい。同じ筍なのに「これ、美味しい。」と器の中で違いを楽しめる。
ごま油に大蒜生姜のみじん切り。香りを落としたら筍を焼く。


玉葱で甘みを、白菜で彩りを加える。
さっと油を回したら、昆布だしをお玉三杯で煮る。
甘みの出汁である酒を大さじ1と、
隠し味のいしるを小さじ1ほど。
塩ひとつまみ。
筍を戻して、片栗粉でとろみをつける。
ごはんにかけて中華丼みたいに食べるとまたおいしい。この旨みは野菜と肉で分け合うには勿体無い。米にも。
もろみ豚ステーキ
旨み甘みがぎゅっと詰まったもろみと、豚の脂と熱が出会えば最強だよね!
もろみを揉み込んでひと晩おいた。
焼く前に少し拭う。きれいに拭わず所々付いてる。これがミソ。醤油だけどミソ。敢えて焦がしてしまう。
全部付いてると塩っぱすぎるので、加減がだいじ。

熱々のフライパンに置くと甘い香りが立つ。
熱の魔法ってすごい。〈味+香り〉で食べられるから。甘みは香りによって増幅しているように感じる。
おいしく調理すれば、甘み調味料はあまり要らない。
家庭料理のほうが外食より太らないというのは、こういうところなのではないかと思う。香りを食べて満たされている。
こういう料理には付け合わせの野菜も、素のまま。
白菜をちぎっただけ。

蒸
ぽわぽわえびしんじょ

金沢おでんを作ったとき、ここまで手が回らないと諦めた一品。でも10分の余裕があれば料亭気分を味わえたなんて。
海老はむき身を、1割ほどは小さなぶつ切りでとっておく。ぷちっとした食感も愉しむため。
▶︎えび100g, はんぺん1枚, 片栗粉 大さじ1
塩・生姜ひとつまみ
ミキサーの力を借り、私は滑らかになったのを丸めるだけ。
手に油を付け、丸める。既にぽいんぽいんで気持ちいい。
白菜を敷いてその上に乗せる。
暫くして開けると、ふんわ〜り、という言葉がぴったりなものが可愛らしく寄り合っている。

その間に隣でだしを温める。茶碗蒸しに使った残りを利用。
▶︎水200cc, 味醂 大2、甘口醤油 大2、塩小1/2 に塩を少し足して。
おでんに入れるのは勿体無かった!と思うくらい、主役級の豪華さ。
ふあんふあん、もちもち、ぷにぷに
沢山オノマトペが生まれそう。

新玉ねぎのふんわりシュウマイ

シュウマイってやつは本当、"家庭料理"だなぁ。ひき肉と皮さえ買ってくれば、冷蔵庫にある端切れ野菜で完成するし、その野菜の切り方が不恰好でも隠し丸く包み込んでくれる。
それにシュウマイほど、蓋を開ける瞬間が絶頂に達する家庭料理は無いのではないか。
こないだ鶏ひき肉だけで作った"気楽な焼売"をちょっと工夫。鶏にしろ、もう少しふんわりさせられないものか。
蒸してふんわり、といえば前に作ったえびしんじょうが頭をよぎる。あの手をここで。


鶏はもも肉にすればジューシーだろうが、神技はんぺんに期待を込めてむね肉で挑む。
はんぺんをミキサーにかけたら、あまり練らないよう手でやさしくタネをまとめる。
瑞々しい新玉ねぎと、その水分を受け止める片栗粉も忍ばせる。
工夫はここまで。後は気楽に包むだけ。





鶏肉だけのぎゅっと詰まった"らくな焼売" とは違って、ふんわりしたシュウマイが蒸し上がった。
工夫の成果が現れることもまた、家庭料理からもらえる日常のささやかな喜びだ。

美味しいお醤油で食べようか、いや、ポン酢でも食べたいな、ごま油をちょろりするのも外せない..
好みをひと通り試せるのも、家庭料理のオイシイところ。
▶︎鶏胸ひき肉 180g, はんぺん 90g, 新玉ねぎ 50g,
生姜みじん切り小さじ 1、片栗粉小さじ 2,
塩小さじ 1/2
キャベツのオイル蒸し
キャベツは敷布団と掛け布団。
敷布団のほうは焦げやすいので厚いのを。どちらもキングサイズにちぎるだけ。



鮭。スーパーの端っこで売られている「アラ」が好きな理由のひとつが、もう切れてること。まな板も手も汚さない。
弱火で蓋して20分。
放っておいて蓋を開けたとき、
キャベツの透け感にはいつもうっとりする。


鮭とキャベツが生み出したスープなんて美味しくない訳がないし、箸で掴んだ時、その旨み脂に柔らかな苦味のセロリが合わさるひと口といったら。
パズルがぴたっとはまったような気持ち良さだ。
▷キャベツ-鮭セロリ-キャベツ。
塩麹をスプーン一杯、オリーブオイルを周りから回し入れ、蓋して中弱火で蒸す。
マスタードと柔らかい酢のソースもポイント

茹
ホタルイカねぎまみれ
生醤油の為の料理。
ボイルされたホタルイカを買うことが多かったけれど、 生を買って茹でると、よい出汁も取れて、一石二鳥となった。
鍋一杯の水に、赤酒30cc、塩小さじ1/2でやさしく茹で上げ、水気を拭く。


たっぷりのみじん切り葱に、親指とひとさし指で砕いた唐辛子、ごま油をさっとかけ、醤油をZを書くようにさっとかける。
よく混ぜないのがポイント。
ムラがあるのがいい。
さすが生醤油。いかの風味を消さずに優しく整えてくれる。
葱がぴりっと辛いせいか、いかの甘みを感じる。
茹でた後の、絶妙なぬるさが美味しい。この温度で味わえるのは立ち飲み台所の特権だ。

鍋一杯とれたいかの出汁には、甘口醤油を少し入れてうどんのつゆの出来上がり。

うすあげ醤油 (焼)
ホタルイカのネギだれが余ったのでうすあげを焼く。
こんな、しりとりみたいな料理が生まれるのも家庭料理の良さ。食材を使い切る快感、というものが存在する。
こんがりしたお揚げに醤油、があればまだまだ緑を食べられそうなので、水菜もわっさり入れる。
お揚げのほうは片面だけこんがり焼いて、お皿に乗せたてすぐに醤油をかける。
じゅっとした小さな音を聞きたいだけ。

厚揚げのときはフライパンの中で焦がし醤油にしたけれど、薄揚げに対しては、醤油が出すぎないようにあとがけ。
厚揚げでも厚焼き玉子でも、厚いものは食欲を唆るけど、
薄揚げはこのネギたちをくるりと包んで食べられるところがいい。
それをうまく叶えてくれる箸の文化もありがたい。

筍姫皮
筍を貰った。
さっと湯通しした、ひらひら姫皮にごま油と醤油、海苔をぱら。
凝ったもの考えていられない、貰ってすぐ食べたいんだもの。
そうでなくても旬のものは
一番美味しい方法で!と思うと、こんな感じで食べることが多い。



揚
塩麹とり天

『天麩羅とワインの店』とか近くにあったらいいな〜と想像したけれど、
いや、揚げながらワインを飲んで、ゼロ距離の揚げたてをつまむのがたまらないんだった。
そんな気ままな店主はうちで開店。
刺身のように薄く剥いで、薄衣。光るピンクはトロのようにも見えてくる。料理前から美味しそうだなんて。
塩麹にひと晩漬けた柔らかむね肉は、これだけで完璧。


でももっと好きなのが、切る手間さえかからない、椎茸天だったりする。

薄衣のサヨリの天ぷら

家庭料理の天ぷらって実はすごく気楽。スーパーでキラキラのサヨリを見つけたなら、今日の晩ごはんは即決。野菜のように切る手間さえない。
塩で撫でて少し置き、水で流してきちんと拭く。
衣は薄めが好み。


はい、できた。
いつもは塩で食べる天ぷら。ピンクの岩塩がお気に入り。がつんと強い塩味。何でもおいしくなる。
けれど今日は生醤油をかけてみる。
さすが、これが生醤油の良さ。サヨリの身のほわんとした甘さに気づく。
おいしさ、だけでは見えなかったもの。

煮
麻婆茄子みたいなの




鶏と新玉ねぎの麻婆茄子みたいなの。
麻婆茄子を作ろうとしたのでなくて
にんにくと生姜の香りの油
鶏ももの潤沢な脂で茄子を煮て、
濃い味噌でぎちっと味をつけ、
瑞々しさを含ませたくて新玉ねぎ
とろみをつけたらそうなった料理
子どもと食べるので辛くはしない。
欲しい大人は糸唐辛子でアクセント。
▷韓国味噌 大さじ1, 昆布出汁 お玉3杯, 水溶き片栗粉
茄子煮る時に塩ひとつまみ
白みその白菜シチュー

白菜で満たした鍋は、水を半分も入れてないのに、蓋を開けると汁で満たされていた。だから、白菜が作ったシチュー。白菜本人は、とろけてスープに紛れ込んでいる。
前の晩に昆布を水に漬けておいた。
種もしかけもないような透明なのに、甘みと旨みの底上げ力が凄い。
椎茸、どっさりの白菜、じゃがいも、鶏もも、
玉葱、塩麹を重ねる。
とろみは加えず、じゃがいもを雑すぎるほど大きく切って、崩れてもらう。

味付けはしてなくて、彼らが味を作ってくれてる。
むしろ、私なんかには作れない。勝手に出来上がる、魔法のような美味しさ。
私のナイスプレーは西京みそを選んだこと。この西京みそも、豆の甘さに任せている味がする。野菜と溶け合うような優しい豆味。
私の料理は他力本願。







吸わせる白菜

吸わせる料理。
白菜にきのこと肉の出汁を吸わせる作戦。といっても合挽肉の余り物から生まれた、てきとう料理。
手で裂いた平茸やしめじを敷いて、春雨を重ね白菜を厚く重ね、合挽肉と塩麹で重ね煮。
水を足して味噌で味つけするつもりだったのだが。
透明なスープがもう美味しそうで、そこまで。
生姜のすりおろしを入れて滋養によさそうなスープの完成。






春雨のおかげで表面がツルツル光る。
きのこを裂いたのは好みの都合。ぶりんと丸ごとのきのこの食感は浮く気がするので。
てきとう料理ってどうしてこうも当たりばかりなんだろう🎯
きっと人間が意図しないほうが、料理の神様が舞い降りてくれる。

鶏ハム一石二鳥

えび麹の鶏ハム。
えびの気配はないがなんか美味しい。
そのままでもいいけれど、ゆずぽん酢をひとたらし。香りが舞い降りる。ふわんとやさしく軽い酸味と旨みを乗せる。
手抜きも極まって、皮も取らなくなった。前の晩にむね肉丸ごと麹と合わせて耐熱袋へ。
今晩はそれを冷蔵庫から取り出し、鍋たっぷりの水に沈め、スイッチを押しただけ。私は料理をしてるんだろうか。
これを作っておくと翌日まで手抜きできる。
青菜と合わせたり、胡麻で和えたり。
麹や熱がまっとうに働いてくれて、私は好きな事をしているだけ。



▷水から入れて中火にかけ、65-75℃で20分、その後は蓋をしたまま余熱で中まで火を通す。
双子のしっとり鶏ハム

山椒マヨと酒粕鶏ハム。
えび麹鶏ハムの横で塩酒粕味も茹でていた。
袋を違わせただけ。一度に二味楽しめるなんて、らくの企み上手すぎる。
酒粕味にしたいのではなく、しっとり、ほどよく塩気があり、ふんわり酒粕が香ればよいので、切る前には洗い流す。
同時に作ると比べやすい。酒粕ハムのほうが、繊維同士がぴったりくっつくように、しっとりしている。
この仕事も私がしたのでなく、酒粕がしてくれる事。私は料理人でなく、人事課長。


すっと爽やかな苦味が、分厚いハムに合う。

日本のポルペッティ

家庭料理はこうでなくっちゃという気軽さ、ポルペッティ。包丁まな板必要なし。
挽肉とチーズを丸めるだけ。これを覚えたらハンバーグなんて家で作らないよ。



わざわざチーズじゃなくても、味噌とか酒粕とかコクは出せるんだけどね、と思いながら丸めたけれど
熱々のフライパンに置いた瞬間、チーズに謝った。
肉肉しい香りとチーズの濃厚な香り。
これはチーズの業。
トングで摘むとポインポインと柔らかくて、煮る時が心配になるほど。

鍋にトマト缶をざっと出す。
赤ワイン大さじ1とローリエ、フライパンから肉汁ごとポルペッティ、軽く煮て仕上げに醤油の甘さ大さじ1。
旨み爆弾のポルペッティに信頼があるから、トマトソースだなんて大げさなことしなくても、酸味の赤に多少の好みを加えるくらいで大丈夫。
肉だね
▶︎合挽肉330g, 塩麹小さじ2,米の衣(パン粉の代わり)20g, 牛乳大さじ1, パルミジャーノ25g,卵35g


ぶりのあら煮

すごーく映えないけどお通しで出てきたら嬉しいやつ。ぶりのあら煮。
--ぶりのあら-- 身はきれいに捌かれ華やかなパックに乗りお刺身コーナーでスポットライトを浴び、 その片隅というか別ゾーンでひっそり、ただの白いパックに窮屈そうに詰められている。 扱いが違いすぎる。 認知度も低い。
でもね、だからこそ 知ってしまったら勝ち組。見つけたらラッキー。 手を伸ばそうとする人が周りにだれもいないことに、にやりと優越感さえ感じさせてくれる。
骨まわりで脂も乗っていて、味もしっかり、溶け出す旨みで出汁もおいしいので共に煮る相手もおいしくしてくれる。
それなのに安い。スーパーで捌かれたての朝のうちに買って、臭みさえ対処できれば、なんてお得な部位。
牛蒡をお供にしたら、とても良かった、お互いに。
ぶりの出汁煮の牛蒡と、牛蒡の芳醇な土の香りによって抑えられている魚感。
硬いのに柔らかい、じゃくっとした食感もたまらない。それを見越して厚めに切った。

鍋に湯、ねぎの青いとこ、皮部分の生姜。牛蒡も先に入れておく。
ねぎは先に取り去る。
霜降りした(と書くと通っぽいが、熱湯をぶっかけた)ぶり、多めの酒とそれで煮る。
ねぎは先に取り去る。ぬめぬめが出ないうちに。アクを取ってきれいにしたら、きび糖を少し。
普段の料理では砂糖はあまり使わないが、魚の煮物は臭みがあると嫌になっちゃうので、万全を期して甘みを入れる。
甘みで臭みを断つ。
※こんなに言うとそんなに臭いのか?と思われて逆効果。臭みという認識は、朝のあらを買えばないけれど、魚の切り身独特の、"料理"と背反する"生ものらしさ"を感じることがある。だからしっかり"料理"にする。

きび糖が少しでいいのは、このあと味醂と醤油という心強い甘み銃士達がいるから。
味醂でこくと甘みを作り、醤油で香りと甘みを広げ、塩で調整して、完成。
追い生姜。生の生姜は臭み取りとはまた別の役割。1人二役。
しみしみの牛蒡が大正解。

米、麺
祭りのあと焼きそば
町の小さな祭りで息子が焼きそばをすっかり気に入ってしまい、夜も焼きそばがいいと言う。
スーパーに寄り、とりあえず「焼きそば」と書かれた普通の麺パックを買って帰る。
ソースは作ってみることにする。
ご当地焼きそばのパッケージにも惹かれたけど、ソースを手作りすることは私のエンタメでもある。
祭りで味見した息子の焼きそばは、確かに美味しかった。とろんとしたソース。「みそだれ」と書かれてた気がする。
小鉢に、求める味の想像を頼りに、調味料を合わせていく。----

味の骨格は味噌。甘みも香ばしさもある米味噌にしよう。
もう少し強い塩味と旨味が欲しい。醤油麹をすり鉢で滑らかにする。
旨味の次に来るのが甘み。馴染むような甘み、みりんを選ぶ。
フルーティーな酸味が欲しい。米酢よりも白ワインビネガーを選ぶ。
そして、決め手。
なにか薄っぺらいような、足りないようなところをいつも埋めてくれるのが、「いしる」。
いわし魚醤。だからといって魚臭くはならず、他のものと合わさると"深み"となって溶け込む、心強い隠し味。
▶︎味噌、みりん、醤油麹、白ワインビネガー、いしる 全て大さじ2
「うん、きっとおいしい。」
味見のひと口で自信がつく。味見って、家庭料理人を乗せてくれるよね。さぁ、野菜。

キャベツ、玉ねぎ、人参。至って普通。
普段大きめに切ることが多いキャベツは、今日は小さめに切る。麺をじゃましないようにしたい。
人参はぺらぺらに切る。玉ねぎも、麺と同化するように。
所々で好みの選択ができるのは、家庭料理の特権だ。
えのきを出汁がわりに入れた。
肉野菜を炒める。鮮やかなキャベツの色が損なわれないよう見極めてバットに上げる。

そのフライパンに麺を入れ、じゅっと水をかけてほぐす。特製ソースを和えて焼きつける。
野菜を戻してソースを加える。
今度はこれで野菜炒めを作ろう。
いつのまにか随分ソースに自信を持っている。

調子に乗ってしまうのも無理はない。台所にはソースの香ばしい匂いが漂っている。
食欲を唆る匂い。
祭りの焼きそばの吸引力はそれだなと今気付かされる。
こういうのは敢えて、おしゃれにならないようにしたかったけれど、屋台じみた皿が家にはなくて、おしゃれな皿に盛ることになった。
(そうしたらワインが欲しくなって、グラスを横に取り出す。
その後私は芳醇なワインと焼きそばという未知の関係を知ってしまった。合う!)

本日の尊客をテーブルに呼ぶ。
少しソワソワしながら出す。
5歳の息子はこちらが思う以上に味に敏感で、"なんか違う"と箸が進まないことが多い。
食べたかったやつじゃない! とならないか。
・
・
無言で食べ続けるので、こちらから聞く。
「どう?」
「すごいおいしい!」
という言葉が返ってきた。
やった!
わがやの《特製ソース》の完成だ。
料理人の心はお祭り気分。
金曜日のパスタ
「金曜」と付くと豪華なイメージを抱かれるかもしれないが逆である。米を炊くのも諦めた、脱力のパスタ。

買い物に出る代わりに
浮いた時間で快適料理
ワインを注いでキッチンに立つ
焦らない料理は心地良い

きのこ、きのこ、きのこをザルに乗せる
目の愉しみもあるほうが料理が楽しい
大蒜を温めマッシャーで潰して
えりんぎは丁寧に面に焼き色
あとのきのこはざっくり炒める
秋色ワインの向こうで同じ色になってく味覚たち



茹で上がったパスタを合わせたら
椎茸出汁で溶いた味噌を絡める
パスタを味噌色に焼き付け完成
きのこにも味噌にもチーズが合う
色も合うのでわざわざ削る
わざわざ何かする位の余裕ある料理が楽しい。

▶︎えりんぎ、舞茸、平茸
米味噌大さじ1に、椎茸出汁(水出し)大さじ2、塩
即席親子丼

親子丼を知ってるなんて知らなかった息子から、「親子丼たべたーい。」と言われ、
たまたま塩麹に浸けていた鶏ももがあったので、リクエストに応えることにした。
深フライパンにしめじ、余っていたじゃがいもの細切り、薄切り玉葱、斜めに削いだ鶏肉を重ね、焦げつかないように出汁をいくらか注ぐ。
乾燥椎茸を水に浸けた椎茸出汁。全体をふんわり甘くしたい料理に一役買ってくれる。これがあると甘み付けがいらなくなる。500ml水を入れたボトルに、大きいのを一つ入れておくだけ。

鍋が温まってから、弱火で蓋して10分程。

蓋を開けるとふぁーっと湯気と良い香りがして、お玉で具を動かすと現れた汁がキラキラ、もう食べたい。
でも"親子丼"に応じたからにはと、醤油とみりんと卵を入れ、火を強くして蓋をする。
椎茸出汁を多めに注いで良かった。野菜の甘みと鶏脂が合わさって生まれたつゆだくご飯が最高。

息子は「親子丼さいこーう!」と。
その晩「あ、親子丼作ってー。」と言ったのだからよほど気に入ってくれたらしい。
作る予定のないものを即席で作るのも楽しい。
七草粥

お粥を食べたくなることなんて無いし
今日くらいは、と作った七草粥。
(いや、ある物で、二草粥)
わざわざ作って良かった。
きらきらきらきらしているお米。


なんて美しいんだ、お粥。
かき混ぜては艶の位置の変わるのを
見つめてしまった。
ひと口、味見してみると
なぜだか感謝が溢れる。
こんなに美味しいものがそばにあったなんて。
恵まれていることを知るような体験だった。
▶︎米1合、水950ml、塩麹 小さじ1
すずな すずしろ
あとがき
私は"料理をする側の者"でほんとうに良かった。
夫には申し訳ないけれど、この世のおいしいを半分以上私がいただいている。
素材を手に取り、旬を知り、火加減と向き合う中で、さらに新しい「美味しい」と出会い続けている。
そしてその度に、ニヤリとしてしまう。
「写真:筆者」
