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社長バカとバカ社長

世の中には、「社長バカ」と「バカ社長」がいる。

同じ二つの言葉を入れ替えただけなのに、意味はまるで違う。

社長バカは、会社のことばかり考えている人だ。どうすれば商品が売れるか。どうすれば顧客に喜ばれるか。社員が力を発揮するには何が必要か。寝ても覚めても会社のことを考えている働き者。

一方、バカ社長は、社長という役職に就いているバカである。

売上が落ちれば社員のせい。自分の思いつきは「経営判断」。反対意見は「やる気がない」。会社の利益は自分の手柄で、会社の損失は社員全員の責任。隙あらばセクハラ。そうでないときは無自覚にパワハラ。出入り業者を見下し、もっとふかふかの社長椅子を新調するため、業務中に通販サイトばかり見ている。
ついでにエロサイトも見ている。。。

最悪だ!

しかし、この違いはとても分かりやすい。

  • 社長バカは、会社を目的にする

  • バカ社長は、会社を自分のための道具にする

私は昔、CSKという会社に勤めていた。のちに住商情報システムと合併し、現在のSCSKになった会社である。

当時の大川功社長は、

「個人と会社の目標を一致させる経営」

という理念を掲げていた。

私たち社員は、これを毎朝、唱和するのだ。

いま考えると、なかなか軍隊調である。

しかし、私は軍隊調がそれほど嫌いではない。というか、かなり好きだ。全員で同じ言葉を声に出すと、「さあ、今日も仕事をするぞ」という気分になる。スポーツの円陣や、ライブ前の掛け声に近いものがある。

その唱和は現在、もう行われていないらしい。

もったいない。。。

何十年もたった今でも、私は覚えているのに…のに…のに…。

立派な経営理念を冊子に印刷して配り、全社員が一度も読まずに机の引き出しへしまうより、毎朝叫ばせたほうが、少なくとも記憶には残るのではないか。

そして、この理念は実によくできている。

会社には、売上と利益が必要だ。社員には、給料と生活が必要だ。

会社は社員の能力を借りて利益を得る。社員は会社へ能力と時間を提供し、その対価を受け取る。就労とは、突き詰めれば金銭を介した契約である。どこで働くかは社員が選べるし、会社にも誰を雇うかを決める権利がある。

だから、会社と社員の目的が完全に同じである必要はない。

社長は、会社を大きくしたい。

社員は、技術を身につけたい。
給料を増やしたい。
定時に帰りたい。
家族との時間を大切にしたい。
趣味に生きたい。

それでいいのだ。

社員が技術を身につけるほど、会社の商品やサービスがよくなる。業務を効率化すれば、社員の残業が減り、会社のコストも下がる。顧客に喜ばれる仕事をすれば、会社の信用が増え、社員自身の実績にもなる。

目的は違っても、利益の重なる場所はある。

その重なる場所を見つけ、広げていくことが経営なのだろう。

ただ・・・働き者の社長バカは、その情熱ゆえに、バカ社長へ変身するリスクを常に持っている。

気をつけて!

社長バカは、自分が朝から晩まで働くことを苦にしない。会社が好きだからだ。会社は自分が作ったもの、あるいは自分が育てているものだから、人生そのものになっている。

そして、こう考え始める。

「俺がこれだけ働いているのだから、社員も働くべきだ」

ここが境界線だ。

本人が「社員のためを思って言っている」つもりだったとしたら、なおさら厄介である。

「俺と同じように働け」と口に出さなくても、社長が毎晩遅くまで会社に残り、先に帰る社員を寂しそうな目で見送れば、それだけで圧力になる。

現代の社長には、

「自分の情熱が、他人への圧力に変わっていないか」

を見極める力が必要なのだ。

社長にとって会社は人生そのものでも、社員にとっては人生の一部である。社員には、会社とは関係のない生活がある。

自分が会社に人生を捧げるのは自由だ。

しかし、他人の人生まで勝手に会社へ捧げてはならない。

自分の情熱を、他人の義務に変えた瞬間、社長バカはバカ社長になる。

よい社長バカは、「俺と同じ熱量を持て」とは言わない。

社員が自分の望む人生を追うことと、会社が利益を伸ばすことが、うまく噛み合う仕組みを作る。会社が儲かったら、昇給、賞与、休暇、設備、教育などの形で社員へ返す。

会社が成長しても、社長の椅子だけがふかふかになり、車だけが大きくなったら、社員はすぐに気づく。

バカ社長は、社員に言う。

「経営者目線を持ってほしい」

それなら社員は、こう答えてよい。

「では、私たちに経営者報酬も持たせてください」

会社が苦しいときだけ「みんなの会社」になり、儲かったときには「俺の会社」に戻る。そんな都合のよい一体感を求めるトップに、人はついていかない。

ところで、私は根っからの子分キャラである。

自分が先頭に立って皆を引っ張るより、「この人なら力を貸してもいい」と思える親分の下で働くほうが性に合っている。

だからこそ、トップには「いい人」であってほしい。

ここでいう「いい人」は、全員の要求を受け入れる人ではない。

経営者は決断しなければならない。断ることもある。人を異動させることも、事業をやめることもあるだろう。

それでも、自分の決定によって誰が痛むのかを忘れず、その責任を他人に押しつけない人であってほしい。

  • 手柄は分ける

  • 責任は引き受ける

  • 約束は守る

ついでに、社員が家族へ少し自慢できる会社なら、なおよい。

  • 社会貢献活動もする

↑お母さんから「あなた、いい会社に就職したのね」と、きっと褒められるゾ。

そんな親分なら、子分は命令された以上の力を出す。

トップがいい人であることは、単なる情緒的な長所ではない。社員が安心して力を発揮するための、立派な経営能力なのだ。

「個人と会社の目標を一致させる経営」

大川社長は、きっと、

「これは会社にとって利益がある。しかし、社員にとってはどんな利益があるのか?」

を常に考えていたのではないか。

何十年も前の経営理念だが、現代でも十分に通用すると思う。少なくとも私の中には、そういう言葉として記憶されている。

経営理念とは、本来、社員を縛るものではない。

社長を縛るものなのだ。

私は軍隊調が、わりと好きだ。

ただし、号令をかける人間が、いちばん規律を守る軍隊に限る。

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