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「信長の原理」で学ぶ織田家の経営哲学

亡くなられた安倍元首相が生前に年末年始に読んだ本として紹介されていたことがきっかけで読んだ垣根涼介さんの小説『信長の原理』は今でも非常に印象に残っている小説です。

若いころはよく小説を読んでいましたが、最近は実用書ばかり手に取るようになり、いつの間にかフィクションから遠ざかっていました。
そんな中で久しぶりに読んだ一冊が、組織運営を考えるうえで非常に示唆に富んでおり、しかもその根底に流れていたテーマの一つが「パレートの法則」でした。

織田信長は天才的な英雄として描かれることが多いですが、この作品の信長は少し違います。個人のカリスマというより、「組織をどう動かすか」「誰に何を任せるか」という、きわめて経営者的な視点で天下統一を進めていたというのです。


パレートの法則(80対20の法則)

パレートの法則とは、「2割の要因が8割の結果を生み出す」という経験則というです。ビジネスの現場でも、

  • 売上の大半は一部の主力顧客から

  • 利益の多くは少数の商品から

  • 成果の多くは一部の優秀人材から

といった形で、ご自身の経験でも思い当たる方も多いのではないでしょうか?


『信長の原理』に描かれる「選別」

この小説の信長は、非常に合理主義者です(なんとなくユニクロの柳井さんを連想させます)。全員を平等に扱おうとはしません。

  • 使える人材には大胆に権限委譲する ➡ 羽柴秀吉、明智光秀

  • 使えないと判断すれば容赦なく切る ➡ 佐久間信盛

  • 家柄や慣習より「成果」を優先する ➡ 信長の人事方針そのもの

つまり、「重要な少数」に徹底的に資源を集中します。逆に言えば、残りの大多数にはほとんど期待していない。きわめて合理的なマネジメントです。

結果として、少数精鋭の家臣団が圧倒的なスピードで成果を出し、他勢力を引き離していく。まさに、パレートの法則そのものの世界観だと感じました。


一方、現在の大企業の仕事ぶりはどうか

ここで私も在籍している現代の大企業を見てみましょう。多くの組織では、

  • 能力に関係なく全員に仕事を配ろうとする

  • 仕事をしてもしなくても大して差がつかない人事評価制度

  • 誰も傷つかない配置を優先する、管理職不適応者を降格させない

といった「平等志向/温情人事」が強く働きます。

その結果、

  • 仕事の生産性低下、アウトプットの質が下がる

  • 会議や調整に時間が吸われる

  • 成果を出す人が疲弊する、サイレントマジョリティが割を食う

という現象が起きがちです。

私も「このプロジェクトの成果って、結局あの数人が作っているよな…」と思ったことがありますが、思い当たる人も多いのではないでしょうか?

だいたいどの組織でも20%の人材がほとんどの成果を出している。それでも制度上は「全員同じ扱い」にしてしまう。ここに、大企業特有の生産性の低さがある気がします。


信長的マネジメントからの示唆

『信長の原理』の信長がやっていたことは、ある意味シンプルです。

  • 重要な仕事を見極める

  • その仕事をできる人に集中投資する

  • それ以外は思い切って切り捨てる

ドライですが、非常に合理的です。もちろん、現代企業でそのまま真似するのは難しいでしょう。ただ少なくとも、

「すべてを平等に扱うことが良いとは限らない」

という視点は持っておいた方がいいと思います。

でも面白いのは、出来る人だけを集めても結局その中でまたパレートの法則が発生して、他のグループでは上位20%に入る人が、できる人集団だと働かない20%になる可能性もあるという点です。なので、働かない20%も必要悪なのかもしれないですね。


『信長の原理』は、戦国小説でありながら、「成果は偏在する」という組織論の話を分かりやすく描いた物語でした。歴史小説というより、経営書として読んでも十分に面白い一冊です。大企業で働いている人ほど、きっと刺さる内容だと思います。

おわり

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