【寝かしつけ・睡眠導入】寓話|カラスと月に踊る猫 (朗読可)
カラスと月に踊る猫
月が出るころ、
カラスは電線にとまっていました。
内緒で声を落としやすい場所だからです。
声は、鳴けば形になるけれど、
鳴くと不吉と言われることも知っていました。
でも、誰かを怖がらせたいわけじゃありません。
屋根の上で、猫が跳ねていました。
小さく、月に向かって。
体の中から、言葉にならない声が
溢れてしまいそうで、
跳ねずにはいられなかったのです。
鳴けば可愛いと言われることに慣れていました。
でも、誰にでも愛でられたいわけじゃありません。
自分の体の動きで、
自分の声を表したかったのです。
跳ねて、戻って、また跳ねます。
「何をしてるの」
カラスが言いましたが、
猫はすぐには答えません。
少し間を置いてから、言いました。
「声が、体からはみ出そうだから」
「鳴けばいい」
「鳴きたくないんだ」
猫はそれだけ言って、
また跳ねます。
月は何も言いません。
いつもそうです。
誰の前でも同じでした。
カラスは
それにどこかほっとして、
猫が跳ねるのを眺めながら、
一度だけ大きく鳴きました。
猫は跳ねるのをやめ、
ただ、聞いていました。
月は相変わらず遠く、
夜は静かでした。
でも、
それで足りる夜も、
あるのです。
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