「人生の窮地を救う」私の暮らし方と、自分に投げかける言葉とは?
日々生きていると、
「もう、どうしたらいいんだろう」
「一体、何をすればいいのか」
そう思ってしまうようなことが、何度かあります。
できれば、そんなことには遭遇したくない。
でも、どんなに避けようと思っていても、人生には、自分の力ではどうにもならないことが起きることがあります。
私にも、昔、そんな時期がありました。
① あの朝、ネクタイの結び方が分からなくなった
会社勤めをしていた頃のことです。
ある先輩から、今でいうモラハラのようなことを受けていました。
当時は、それがどれほど辛いことなのか、自分でもうまく言葉にできなかったように思います。
ただ、毎日が苦しい。
会社へ行くことさえ辛い。
そんな状態が続いていました。
そして、ある朝。
いつものように会社へ行く準備をしていました。
着替えて、出かける準備をして、ネクタイを締めようとした。
ところが――
ネクタイの結び方が、分からないのです。
毎朝、当たり前のようにやっていたことなのに。
どうやって結んでいたのか、まったく思い出せない。
何度やろうとしてもできない。
そのときのショックは、今でも覚えています。
「ああ、自分はここまで追い詰められているんだ」
そんなことを感じたのかもしれません。
結局、私はそのまま会社を休みました。
そして、一週間ほど会社へ行くことができませんでした。
今振り返ってみても、あの頃は本当に苦しかったのだと思います。
② 友人から届いた、突然の知らせ
そして最近、昔からの友人から連絡がありました。
パーキンソン病と診断された、という知らせでした。
本人もかなりショックを受けていて、絶望しているような様子でした。
そんな連絡をもらったとき、
「何と言葉をかければいいんだろう」
と、私は考えてしまいました。
「頑張って」と言うのも違う。
「大丈夫」と簡単に言えることでもない。
その人がどれほど辛い思いをしているのか、本当のところは本人にしか分からないからです。
だから、かける言葉がなかなか見つかりませんでした。
そんなことを考えているうちに、ふと、自分自身が苦しいときに心の中で繰り返している言葉を思い出しました。
それが、
「前へ進むしかない。」
という言葉です。
③ 「前へ進むしかない。」という言葉
これは、誰かに向かって言うための言葉というより、自分自身に向かって投げかける言葉です。
「前へ進もう」ではありません。
「頑張ろう」でもありません。
もっと現実的で、少し突き放したような言葉。
「前へ進むしかない。」
です。
なぜなら、起きてしまったことを、起きる前に戻すことはできないからです。
どれだけ後悔しても。
どれだけ悲しんでも。
何度思い返しても。
過去そのものを変えることはできません。
もちろん、辛いことを無理に忘れる必要はないと思います。
悲しいときには悲しんでもいい。
立ち止まってしまうこともある。
私自身、そうでした。
でも、いつまでもそこに留まり続けてしまうと、
自分の時間まで過去に置いてきてしまう
ような気がするのです。
だから、ほんの少しでもいい。
今日を進んでみる。
そして、明日になったら、また明日を進んでみる。
遠い未来のことまで考えなくてもいい。
まず今日一日を生きてみる。
それだけでもいいのではないかと思っています。
④ 自分でコントロールできることに集中する
そんなことを考えていたとき、以前から耳にしていた、大リーグで活躍する日本人選手たちの話を思い出しました。
一流の選手たちの話を聞いていると、
「自分にコントロールできることと、できないことを分けて考える」
という考え方が、しばしば出てきます。
相手選手がどう動くか。
審判がどんな判定をするか。
周囲から何を言われるか。
そして、試合の結果がどうなるか。
こうしたことは、自分だけではコントロールできません。
だから、そこに必要以上のエネルギーを使わない。
ある意味では、スルーする。
その一方で、
今日の練習をどうするか。
自分の体をどう整えるか。
次のプレーにどう集中するか。
そうした、自分がコントロールできることには、しっかりと意識を向ける。
自分にできることを、一つずつ積み重ねていく。
そんな考え方です。
これを聞いていると、
「前へ進むしかない。」
という私自身の言葉とも、どこかつながっているように感じます。
⑤ 遠い未来ではなく、まず今日を生きる
人生でも、同じなのではないでしょうか。
起きてしまった出来事そのものを、私たちはコントロールできません。
他人の気持ちを変えることもできません。
過去をやり直すこともできません。
そして、未来に何が起きるのかも、誰にも分かりません。
だったら、そこに自分のエネルギーを使い続けるのではなく、
ここからの自分の暮らしを、ごく自然に、淡々とこなしてみる。
私は、それでいいのではないかと思っています。
朝起きる。
ご飯を食べる。
散歩をする。
誰かと話す。
仕事をする。
好きなことをする。
今日できることを、今日やってみる。
そんな小さなことでいい。
それを一日ずつ積み重ねていく。
その積み重ねが、いつか振り返ったときに、自分が歩いてきた道になっているのだと思います。
⑥ 過去は変えられない。でも、これからは自分でつくっていける
よく、
「過去は変えられないけれど、未来は変えられる」
と言います。
私は、この言葉をとても大切にしています。
過去は、もう自分の手の中にはありません。
でも、これからの時間は、まだ自分の前に残っています。
だからこそ、
過去を何度も振り返って苦しむことに、すべての時間を使うのではなく、
これからの一日を、どう過ごすか。
そこに少しずつ意識を向けていきたい。
もちろん、それが簡単にできないときもあります。
頭では分かっていても、気持ちがついてこないこともあります。
そんなときに、私が自分に言い聞かせるのが、
「前へ進むしかない。」
なのです。
これは、無理やり自分を奮い立たせるためだけの言葉ではありません。
「もう起きてしまったことは仕方がない。」
「だから、今日を生きよう。」
「次の一歩だけでも進んでみよう。」
そんな、自分自身への小さな声かけです。
⑦ 「前へ進むしかない」は、諦めの言葉ではない
人それぞれ、苦しいときの乗り越え方は違うと思います。
誰かに話すことかもしれない。
静かな場所で一人になることかもしれない。
好きな音楽を聴くことかもしれない。
何かに夢中になることかもしれない。
私の場合は、
「前へ進むしかない。」
と、自分に言い聞かせること。
そして、
自分がコントロールできることに、意識を向けること。
その二つが、これからの自分を支えてくれるような気がしています。
明日がどうなるかは、誰にも分かりません。
だから、遠い未来まで無理に見なくてもいい。
まず今日。
そして、明日。
その一日一日を大切に生きていく。
自分にできることを、少しずつ積み重ねていく。
それでいいのだと思います。
もし今、どうしようもなく苦しい場所にいる人がいたら――
無理に前向きにならなくてもいい。
すぐに元気にならなくてもいい。
ただ、目の前にある暮らしの一歩を踏み出してみる。
そして、自分自身にこう言ってみる。
「前へ進むしかない。」
それは、諦めの言葉ではなく、
これからを生きていくための言葉なのかもしれません。
後書き
人には、つらい出来事を経験したあと、その記憶や感情との距離を、時間の中で少しずつ変えていく力があるのではないかと思います。
もちろん、忘れられないこともあります。
何年経っても、ふと思い出してしまうこともある。
でも、同じ出来事を思い出しても、時間が経つことで、そのときとは少し違う気持ちで受け止められるようになることもあります。
私自身、あの頃のことを今こうして振り返ることができています。
だから私は思うのです。
人生で何か大きなことが起きてしまったとしても、そこで人生のすべてが終わるわけではない。
すぐに答えを出さなくてもいい。
ただ、自分にできることを少しずつ。
今日を生きて、明日へ進む。
そしてまた、その次の日へ。
「前へ進むしかない。」
私にとってこの言葉は、そんなふうに日々を生きていくための、ひとつの暮らし方なのかもしれません。
